日本のウイスキーが示した日本人のセンス
プレジデントオンライン / 2019年7月13日 11時15分
■なぜ日本のウイスキーは、海外で大人気になったのか
日本のユニークさ、強みは、一体何なのだろう? そんな疑問を持つ機会が増えてきているように思う。
経済のグローバル化が進むほど、ローカルな独自性が求められるようになってくる。
地球が1つの「村」になりつつある現在。起こっていることは、決して、世界中が同じになっていくということではない。
むしろ、1つひとつの国、地域が、それぞれの個性を発揮してこそ、グローバル経済の中で輝く。グローバル化の時代とは、つまりは、ローカルな個性の時代でもあるのだ。
日本のウイスキーが、このところ世界を席巻している。外国の空港の免税店でも、スコッチやバーボンと並んで、日本のウイスキーが主要なブランドとして並ぶようになった。国際的な品評会でも、高い評価を受けるようになった。一部の商品は品不足になって、価格も高騰していると聞く。
日本のウイスキーの品質はなぜ良くなったのか? その秘密を探っていくと、これからの日本の成長の1つのヒントが得られるように思う。
長年、サントリーのチーフブレンダーとして活躍された輿水(こしみず)精一さんに伺った話で、ずっと記憶に残っていることがある。
ウイスキーの原酒は、同じ年に隣同士の樽に入れても、時間の経過とともに、それぞれ思わぬ個性を持ち始める。どのように成長するかは、予想ができないのだという。
1つの原酒単独では、とても飲めないような強烈な個性を持つこともある。ところが、その強烈な個性も、ほかの原酒とうまくブレンドすると思わぬ力を発揮して、全体としての味わいが格段に増すことがあるのだと、輿水さんはおっしゃった。
ユニークな個性が、単独では成立しないけれども、うまくほかの個性とブレンドしてハーモニーを生み出すと素晴らしいほど効果が上がる。これは、ウイスキーだけでなく、チームのパフォーマンスや人間の社会全体にも言えることではないだろうか。
日本料理は、1つひとつの素材の個性をとらえてうまく活かす技に長けている。「うまみ」成分はもはや国際的にも有名になったが、それだけではない。例えば、タラの芽などの野菜の天ぷらや、鮎の塩焼きに見られるように、敬遠されがちな「苦味」でさえ料理のアクセントとして利用する視野の広さがある。
日本のウイスキーがここまで品質を上げて、国際的に評価されるようになった背景には、味わいの個性を細かく感じ分けて、それを活かそうとする日本人の感性があるように思う。
■味わいを組み合わせる「シェフ」
つまり、日本のウイスキーは、1つの「日本料理」的な応用なのだ。輿水さんは、ウイスキーのブレンダーであると同時に、味わいを組み合わせる「シェフ」でもあったのだろう。
かつて、輿水さんと一緒にウイスキーの取材でスコットランドのアイラ島を訪問したことがある。有名なボウモアの蒸留所の横で、持参した日本のウイスキーを比較のために試飲したときの、まろやかな味わいの感動は忘れられない。
日本人は個性に乏しいとしばしば言われるが、一方で、「十人十色」ということわざもある。
味わいの細やかな個性に気を配る日本人の感性を、人間の個性を活かすことにつなげられたら素敵だと思う。
(脳科学者 茂木 健一郎 写真=PIXTA)
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