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知識豊富"銀座ママ"が夢中になる男の教養

プレジデントオンライン / 2019年7月25日 17時15分

クラブ由美 由美ママ●1983年オーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来“銀座の超一流クラブ”として政財界などのVIPから支持を得る。近著に『銀座のママが教えてくれる「会話上手」になれる本』があり、著書は多数。

出世した男やエリートたちを見続けてきた高級クラブのママが、知識は豊富でも「教養」に疑問のある残念な人をそっと教える。

■知識は豊富でも、話すと残念な人

「慶世羅せら」。銀座の「クラブ由美」のVIPラウンジには、こう揮毫された一枚の書が壁に飾られている。ケセ・ラ・セラ(なるようになるさ)――元首相で、現在は陶芸家にして画家・書家の細川護熙氏が書いたものだ。

「私の生きる心意気を表した素敵な言葉ですが、これを書いてくださった細川の殿のような方が、本当に教養のある人だと思いますね」と話すのは、銀座で36年の歴史を持ち、政財界の重要人物が集う「クラブ由美」の伊藤由美ママだ。

「クラシックがお店で流れたときに『シューマンの曲だよね』と自然に曲名を口にされるお客様がいらっしゃいます。ご両親がクラシック音楽を好まれ、幼少の頃から聴かれていたそうです。細川の殿も『子どものときから名作を見られる環境に育つと本物を見極める目が養われ、いい作品がつくれるんです』とさりげなくおっしゃって気取りが感じられないのです。学歴と関係なく教養のある人は、育ってきた環境や生き方が影響しているのではないでしょうか」

細川家のような大名家に生まれるわけにはなかなかいかないが、教養を「幅広い知識」くらいに考え、難しい本をたくさん読み、懸命に勉強して、多量の情報をインプットしてみても、一夜にして教養は磨かれるわけではないということだろう。知識は豊富だけれど話してみると残念な人も多い。本当の教養とは、学問・知識などによって培われる品位や立ち居振る舞いといった人の内面までも表すものだ。

「銀座のクラブ」といえば、欠かせないのがお酒。人間の本質が表れるのもこのお酒の席だ。長年お酒を提供する場で人と接してきた由美ママが痛切に思うのは、「お酒の飲み方や酒席での立ち居振る舞いに、人間としての素の部分がそのまま表れることです。普段は品性に欠けていても、酔ったら品がよくなるといった人には、まずお会いしたことがありません。お酒を飲むときの品位とも言っていい『酒品』は、その人の本来の姿でもあるでしょう」と指摘する。

■「会話ドロボー」は飲んでる席では御法度

にわか仕込みで得た知識や教養をひけらかすのは、傍から見ていても聞き苦しいものだが、人が気持ちよく話そうとしているところに割って入り、話を横取りして自分の知識をひけらかす「会話ドロボー」も明らかなルール違反だ。

由美ママは、「いくら情報を知っていたとしても、飲んでいる場では御法度です」と、釘を刺す。

「会話は周りの人とのキャッチボールが大切です。話したいことやすぐに聞いてほしいことがあると話し始めた相手の横から口を挟み、ひょいと話題を盗み取り、盗んだ話題をすべて自分の話にすりかえて、自分が会話の中心に立とうとする人がいます。そんなことをされたら、強引に話し手の立場から引きずり降ろされてしまうわけで、話し手の立つ瀬がありません」

会話ドロボーをやめられない人は、基本的に自尊心や自己顕示欲が強く、「いつでも自分が話題の中心にいなければ気が済まない」「ほかの人が会話の中心にいて楽しげに話しているのが気にいらない」といった性格の持ち主のように思えるという。

「複数の人がお互いに話したり聞いたり、話題や時間を共有するのが大人の会話です」(由美ママ)

モントレー とうかママ●学習院大学経済学部卒業。学生時代に起業して失敗し、水商売の道へ。銀座の老舗クラブ勤務などを経て、24歳でクラブ「モントレー」のママとなる。著書に『銀座最年少ママの売れ続ける力』がある。

知識はあっても楽しい粋な会話ができなければ、その場の空気を読めない無粋な人でしかない。成功者や一流の男が集まり、ハイクラスな宴を繰り広げる場所で遊ぶ資格はないということだろう。

「いろいろ知識を持ってらっしゃるのはわかりますが、上から目線の発言をする人は、女の子から好かれません」と話すのは、学習院大学在学中に起業経験があり、銀座のママとして現在最年少といわれるクラブ「モントレー」の桐島とうかママだ。

「『こんな仕事やってちゃだめだよ』とか『こうしたほうがいいよ』と言う人は苦手です。たとえば、ちょっと派手な露出度の高い服の女の子に『そんな格好してるから就職できなかったんだ。今の時代の身なりはこうしないと受からないよ』などとお説教をされるお客様がいます。ところがその子は、実際に就職できなかったわけではありません。自分のほうが幅広い知識を持っていると思っているからこそ人を諭すのでしょうが、相手にとって踏み込まれたくない領域にまで立ち入るお客様は、女の子たちから敬遠されます」

■話し方も教養を感じさせる要素

そういうお客にかぎって、知識は豊富なのに話してみると「知識として知っているだけで、ストーリーになっていないのでおもしろみがない」と言う。難解な言葉を並べただけで、結局何を言っているのか理解できないのであれば、知識をひけらかしているだけの「教養バカ」と言えるだろう。

それではどういうお客が好感度が高いのだろうか。

「知識を深く理解しているお客様は、女の子に合わせて自分の幅広い知識の中から興味のある話題を上手に取り出してくださいます。こちらが『もっと教えてください』とお願いしたくなるくらい、いつの間にか話に引き込まれてしまいます。そういう人は、ご自分のほうが詳しい事柄でも、私たちがちょっと知ってることに対して『おっ、すごいね、素晴らしい!』と褒めてくださるので嬉しくなってしまいます」(とうかママ)

さらにとうかママは、話し方も教養を感じさせる重要な要素だと話す。

「『若い君たちにはわからないだろうが、自分は大変な仕事をしていて、頑張っているのだから、俺の話を聞くのはあたりまえ』といった威圧感があって、女の子を軽く見ているような話し方をする人には引いてしまいます。声のトーンも大切で、同じテンションで話し続ける人もいますが、解説者みたいでお酒の席では頭に入ってきません。せっかくいろいろなことを知っているのに相手に届かないのはもったいないと思います」

知識の重み、それに品性、品格を備えている人は、自身のことはあまり話さないという。

「自分が話したいとき、自慢したいときでも、相手のことを思って、話したいことが10あれば、それを我慢して1に抑えて話す方は気遣いのできる素敵な人です」

気遣いと優しさのない人は酒席でも評価は低い。銀座のクラブは自分を映す鏡。そこにどんな自分が映っているのか確かめるために、飲みに通うのかもしれない。

(ジャーナリスト 吉田 茂人 撮影=小川 聡)

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