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"好きなことを仕事に"が大抵失敗する背景

プレジデントオンライン / 2019年6月6日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/courtneyk)

転職について、「好きなことを仕事に」などと喧伝されている。しかし、人事・戦略コンサルタントの松本利明氏は「好きなことは稼ぐ手段の一つでしかない。向いていなければキャリアを無駄にすることになる」と指摘する――。

※本稿は、松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「あなたのやりたいことは」に何と答える?

いきなりですが、問題です。

あなたが人生をかけて本当に「やりたいこと(=好きなこと)」は何でしょう?

頭の中で結構ですので、考えてみてください。自分に嘘はつけません。綺麗ごとでなくていいですし、他人には見られませんので、本音でどうぞ!

実際、「これをやりたいのです!」と即答できる人も実はごく少数です。年齢は関係ありません。40歳を超えても、80歳を過ぎても、本当にやりたいことを掴めない人は掴んでいません。

それはなぜか?

「やりたいこと」の正体は、実はテレビやネットなどで見聞きした「情報」が9割だからです。仕入れた情報を通して「頭で考えて」導くのが、「やりたいこと」の正体です。実際、あなたも、「やりたいこと」と聞かれて、頭で「う~ん」と考えたでしょう。

逆に言うと「やりたいこと」は情報として入らないと思いつかないのです。

・かっこいい
・儲かりそう
・周りからみとめられそう
・楽しそう

など、実際に情報を得た時の感情をもとに、「やりたいこと」かどうかを考えるのです。これは、ごく自然なことです。

まだ5歳児だった頃、将来は、「サッカー選手になりたい」「化学者になりたい」「プリキュアになりたい」と思ったことと似ています。

■やりたいことが最初から分かっている人はいない

人は情報と感情をセットにして、「やりたい」と思うのです。子供ならピュアです。残念ながら、人は年を重ねれば重ねるほど、大人になればなるほど、経験を積めば積むほど、頭をよぎるものが多くなります。そう、経験から学ぶからです。

40歳を過ぎてからスポーツの世界大会で金メダルを目指そうとは思わないのが普通です。人は成功と失敗から学び、賢くなればなるほど現実的な解を出すようになります。ゆえに、やりたいことを「頭」で考え続けると、逆に見えなくなるのです。

ホリエモン(堀江貴文さん)は「やりたいことや向いていることを最初からわかっている人はいない。何でもいいから手当たり次第に手を出して、できるだけハマってみよう」と言っています。

確かに、その通りです。やってみなければ、本当にやりたいことはわからないものです。

すぐに「多動力」を発揮できる人ならいいです。ただ、実際はまず頭で考える人の方が多いものです。

大企業、成長企業で活躍している経営者や幹部、その候補の方々でも、希望通りの職場に配属される、やりたいことを持ち、その通りに進んだという人はごく少数です。子供の頃の夢をその通りに大人になってかなえた恵まれた人が少ないのと一緒です。

■まず向いている手段を考えてみる

では、普通の人は「やりたいこと」を諦めなくてはいけないのか。

そうではありません。「やりたいこと」はもう一つの側面があります。やりたいことは目的ではなく「手段」なのです。

ユーチューバーは目的ではなく手段です。視聴者に楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいというのが目的。その手段がユーチューブです。ユーチューブをやってみたら楽しかった、はまった、向いていた。だから、ユーチューバーとして毎日視聴者が喜んでくれる動画をつくり配信し続けられるのです。

金持ちになりたいというのが一番の目的でも、向いていなければ長続きはしません。メルマガだ、ブログだと手段を替えても、向いていなければ結論は同じです。

やりたいことより、「向いていること」を見つけることが一番です。

■「空を自由に飛びたいからパイロット」ではダメ

向いていることを掴むために多動力を駆使して、トライ・アンド・エラーを繰り返す必要は実はないのです。そう、自分の資質を知れば向いていることがわかるからです。

逆に言えば、向いていること=資質があることなので、ラクに速く、楽しみながら、長く続けることができるのです。世の中で成功している方々や有名企業のトップやその候補の方々も、配属され、担った仕事が向いていたので楽しくなり、資質を活かし結果で出世した人ばかりでした。

「好きなこと」は確認が必要です。仕事の内容を理解しないで憧れるのは危険です。

「空を自由に飛びたい」のであれば航空会社のパイロットは向いていません。パイロットは、決められた時間と空港から指示されたルートで、管制塔に確認を取りながら安全飛行で時間通りに目的地に到着することを繰り返す日々が仕事だからです。目的地やルートを勝手に変えることは許されません。大空を自由には飛んでいないのです。

ゆえに、コンピューターオペレーションの技術的なアップデートを行い続け、緊急事態では適正な判断ができ、正しく伝える資質が求められることになります。

飛行機を自ら操り、空を自由に飛ぶなら趣味で飛ぶことです。

■向いていないものは捨てる勇気を持とう

好きなことを、ライフワークの趣味で楽しむか、仕事にできるかは、その業界の市場特性が一番影響を持ちます。

また、注意するべきは「できること」です。20代でやってみたらすぐできたことであれば資質があるとみていいでしょう。問題ありません。

危ないのは中高年です。資質がないことをできるようにするには「労力×期間×ストレス」がかかります。長期間かけ、めちゃくちゃ苦労した上で、「ちょっとだけ」成長し、「できるようになる」のです。資質がある人の数倍から数十倍は苦労するのです。

対人関係の資質が弱く、苦節20年、45歳で5名のチーム運営ができた「石川さん」がいたとしましょう。周りからみると、マネジメントの伸びしろは薄く、本来の持ち味を活かした方がいいように思うでしょう。

ところが石川さん本人は、「マネジメント」が苦労してできるようになってきたので、逆に怖くて手放せなくなる心理が働きます。

苦労した自分の時間と労力を無駄だったとは思いたくないからです。これは、リストラされる人にみられる傾向でした。

勇気を出しましょう。資質にあっていないものは捨て、資質にあっているものを上手に拾うべきです。

キーになるのは、情報として知りえた「やってみたい」ことの中から、資質に沿った、向いているものをやってみることです。

■機械工学の専門だったが資質は違った

具体的な例をだしましょう。私、松本利明の大学時代の専門は工学部の機械工学科でした。

なぜ、私が外資系コンサルタントを目指したのか。大学4年生の時に「外資系コンサルタント」という情報を知ったからです。

松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)

歯車の機械製図を夜中に書いている時、ある1つの番組が目に飛び込んできました。「金曜プレステージ 東京ソフトウォーズ」(テレビ朝日)という、素人参加型の企画のコンペ番組です。

機械製図より面白そうとのめり込みました。その時の審査員にいた、元マッキンゼーの経営コンサルタントの波頭(はとう)亮さんの存在を通して外資系コンサルタントを知ったのです。

そして、やってみました。審査員の方々にお願いして実際のビジネスレベルで教え、鍛えていただく勉強会を企画し、毎月実施してもらいました。今でいうインターン的にアルバイトをさせてもらうようなものです。

鍛えてもらったスキルをもとに、番組のお題の企画にチャレンジし、生放送でプレゼンしてダメだしやアドバイスをもらうことが、たまらなく刺激的ですぐにどんどんできるようになりました。専門性に関係なく資質がベストマッチだったのでしょう。

人事戦略コンサルタントの目から自分をみると、もし、専門性をベースにメーカーに就職していたら、自分の資質ならよくても大企業の子会社の課長止まりは確実でした。

専門性、経験、欲望が目を濁らせるので、自分の素である資質をもとに、向いていることを仕事にしましょう。

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松本 利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント、HRストラテジー代表
日本人材マネジメント協会執行役員。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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(人事・戦略コンサルタント 松本 利明 写真=iStock.com)

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