東大法卒女子の世界一周伴侶探し旅の結末
プレジデントオンライン / 2019年6月27日 9時15分
▼旅行経験を語る
■伴侶探しのために世界一周
2007年に大学を卒業してすぐ、世界一周の旅に出ました。きっかけは内定先の懇親会で、女性社員から「いまのうちに結婚相手を見つけておきなさい。うちの会社は忙しすぎて、入社してからじゃ遅いから」と言われたことです。日本で婚活らしきことをやってみたのですが、いい出会いがありません。それなら世界に出てみようと思ったのです。
韓国から中国に入り、その後は予定を立てずに直感で行き先を決めるという旅でした。北京からシベリア鉄道でロシアに入り、欧州諸国を巡ってからトルコ経由でアラビア半島に入りました。その後、エジプトから南下してアフリカ東部を縦断。南アフリカから南米へ渡り、日本人移民100周年を祝っていたブラジルへ。チリ滞在中には、チリ空軍の飛行機で南極にも降り立ちました。さらに中米、北米と回って、最後は米国の西海岸から帰国しました。8カ月で52カ国・地域を回ったことになります。
すぐ気がついたのは、日本女性というだけでもてるということです。特にアジアやアフリカの国々には、日本を先進国へ押し上げたのは女性の力だという共通理解があるようで、現地の男性には、日本女性と結婚すれば自分も成功するのではないかと考える人もかなりの数いるのです。
もちろん、声をかけられたからといって、ほいほい付いていくわけではありません。私は「いい目をしているかどうか」、そして「会話が面白いかどうか」で判断しました。いい目をしている人は邪心がなく、話して楽しい人は頭がいいのです。
ヨルダンで出会った遊牧民ベドウィンの男性ガイドとはとても気が合いました。しかもTOKIOの長瀬智也さんに似たイケメンです。そこで「一緒に日本に来ない?」と誘ったら、「ぼくはベドウィンだから、砂漠のないところではベッドインできないよ」と、洒落の利いたセリフで断られてしまいました。
ラトビアで仲良くなった英国人の男性が、日本まで訪ねてきてくれたこともあります。ただ、私はもう働き始めており、リーマンショックの直後というタイミングの悪さもあって超多忙。そのため、ほとんど会えないまま、「君はtoo busyだ」という言葉を残して彼は帰国してしまいました。
そんな旅の経験を話題にすることがビジネスでも役に立つとわかったのは、転職先の企業再生ファンドから福岡県のラジオ局「クロスFM」へ派遣されてからのことです。
クロスFMに社長室長として赴任したのは12年。その後、社長に就任して経営再建に当たるのですが、そもそも茨城県生まれの私は福岡にはまったく縁がありません。現地に溶け込み人脈をつくるうえで、非常に役立ったのが「世界一周ダンナ探し旅」の話です。
スポンサー企業の経営者からも「その話聞きたいね」と言われるので、それをきっかけに私という人間に興味を持ってもらい、交友を深めることができました。
世界の果ての珍しい土産話として興味を引いたということはあるでしょうが、それよりも、旅先で私が何を考え、不測の事態にどう対処したかを話すことで、私自身の思考法と判断基準を知ってもらうことができたと思います。
そして社内では、部下に対して「私は現場主義で、旅行では現地の人に話を聞き、もらった情報を基に動くんです」と話すことで、「仕事のうえでもみなさんの話をよく聞いてやっていくつもりです」というメッセージを伝えることができました。
■旅の話が、銀行を口説く武器に
聞き手に回っても同じことがいえます。誰かから旅行経験を聞く機会があれば、その人がどんな性格であり、どう接したらいいのかが見えてきます。「旅先でこんな嫌なことに遭った」と繰り返す人は、保守的な性格で、計画的な仕事の進め方をするのではないかと予想できます。旅先での不測の事態を楽しんでいるような話をする人は、新規事業を任せると大活躍するかもしれません。
クロスFMの話に戻ります。この会社は再建途上にあり、かつて銀行に債権放棄をしてもらった経緯から、新規融資など頼める状況にはありませんでした。しかし、将来的には資金を出してもらいたいと私は考えていました。そこで地元の有力銀行2行にはダメ元でよく通いました。武器になったのが、旅の話題です。
「面白いやつだ」と思ってもらえたようで、一般向けのイベントをクロスFMに発注するとか、社内の女性を対象とした講演会に私を講師として招いてくれるといった形で、徐々に関係ができていきました。そして最終的には、有力銀行から資金調達をすることができたのです。
旅の話は工夫次第でおもしろくもつまらなくもなります。私の場合、話のストックはたくさんあるので、相手に合わせて興味を持っていただけそうな「ネタ」を選びます。よく訊かれるのは「どこが一番おもしろかったか」という質問。事業家の方にはやはり、ビジネスにつながる話が受けます。
たとえば、現地に溶け込んでいる日本企業の話です。エチオピアに行ったときは、自動車メーカーのISUZUがバスやトラックを意味する一般名詞として通用していて、「あの町へ行くには、どのISUZUに乗ればいいんだ?」と使われていることに驚きました。
現地の文化について話すときも切り口を工夫して、「日本とは違うこういう習慣は、実はビジネスにも活かせるのではないか」といった角度から話すと興味を持ってもらえます。たとえば「南極は共同統治・相互不可侵の原理で各国が基地を置いていますが、そういった所有権のあり方はビジネスの参考にもなるのでは」といった話をします。
■日本にいると「世界は経済だけで回っている」と思いがち
日本にいると「世界は経済だけで回っている」と思いがちですが、海外では現地の宗教的な背景がマーケティング上の大きな要素になってきます。19年3月にインドへ行き、最大で1億人が集まるという世界最大の宗教イベント「クンブメーラ」を見てきたのですが、その会場では「ここでは信仰心によって世界が動いている」と実感しました。
クンブメーラの主役は、サドゥと呼ばれるヒンドゥ教の出家者で、彼らはインド周辺に400万~500万人もいるといわれます。現世では死者扱いで戸籍もなく、ほとんど全裸で全身に灰をまぶした姿で過ごしています。その姿を眼にするだけでも、自分の世界観が変わります。
私の旅は一般的な旅行とは異なり、ずいぶんディープなものだと思います。しかし、非日常の経験をするという意味では、どこを旅しても同じです。旅先の出来事に対してどのような価値観のもとに、どう判断し、どう行動したかを語れば、自分という人間をアピールできます。旅先がどこであろうと、それだけを心に留めておけばいいのです。
品格を上げるポイント:旅先はどこでもいい、経験を語ること
----------
元クロスFM社長
1983年、茨城県生まれ。水戸一高、東京大学法学部卒。在学中に書いた『東大生が教える! 超暗記術』がベストセラーに。現在はMAYAホールディングス顧問。
----------
(元クロスFM社長 徳田 和嘉子 構成=久保田正志 撮影=市来朋久 写真=iStock.com)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「ツテなしコネなし海外起業」37歳女性の大胆人生 「まず動く」ワクワクする"世界の歩き方"は?
東洋経済オンライン / 2024年5月6日 8時1分
-
入社2か月で辞めた新入社員の退職理由にア然…だったら入るなよ!――大人気記事・すぐ辞めた新入社員トップ10
日刊SPA! / 2024年4月30日 8時45分
-
お金が貯まらない家の冷蔵庫から頻繁に発見される…貯まる人は決して手を出さない「道の駅」に並んでいるもの
プレジデントオンライン / 2024年4月27日 10時15分
-
最強のひとり旅"適齢期"、旅を楽しむ7つの秘訣 何歳になっても新しい刺激が自分を活性化
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 16時0分
-
「韓国人留学生と韓国行きの飛行機で隣の席に。これからの旅の予定を話したら...」(滋賀県・年齢性別不明)
Jタウンネット / 2024年4月22日 17時0分
ランキング
-
1初めての上京での住まい、失敗したことは? 3位「間取りが不便」、2位「想像より狭かった」、1位は?
J-CAST会社ウォッチ / 2024年5月12日 21時15分
-
2無味のミネラルウォーターが若年層に好まれる理由 23年過去最高の販売実績を記録した「サントリー天然水」 ブランドの牽引役は天然水本体
食品新聞 / 2024年5月12日 17時1分
-
3危険な「第4種踏切」なぜ無くならない? 事故が起きてから重い腰を上げる行政
乗りものニュース / 2024年5月12日 9時42分
-
4中央線「グリーン車導入」の増収効果は?JR東日本が明らかに 投資額は約860億円
乗りものニュース / 2024年5月13日 7時12分
-
5「サイゼが潰れたら喜ばしい」創業者が語る真意 「世の中が良くなることは、すべて最高だ」
東洋経済オンライン / 2024年5月12日 12時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください