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ついに党ごと消滅しそうな"民主党"の最期

プレジデントオンライン / 2019年6月5日 9時15分

写真撮影に応じる国民民主党の非公認ゆるキャラ「こくみんうさぎ」(右)と玉木雄一郎代表=2019年5月30日、国会内(写真=時事通信フォト)

■本音では「衆参同日選」を避けたい野党のだらしなさ

国会は6月26日の会期末に向け、衆院が解散して衆参同日選になるのかどうかに注目が集中している。そんな中、野党は解散に備え、選挙協力の協議を進めているが、内閣不信任決議案の提出を巡り足並みが乱れている。

会期末に不信任決議案を提出して政府・与党と戦う姿勢を見せるのが野党の本来の姿。しかし、今回は、不信任決議案を提出することで衆院解散、総選挙を誘発することになりかねない。本音では同日選を避けたい野党は、どうしても歯切れが悪くなってしまうのだ。

■不信任は会期末に野党から出るのが普通

内閣不信任決議案は、国会の会期末に、野党が衆院に提出することが多い。「国会審議を通じて今の内閣は信任に値しない」などと言って提出する。可決すれば憲法69条に従い、首相は内閣総辞職か、衆院解散を選ぶ。

1980年の「ハプニング解散」、93年の「政治改革解散」の時のように、与党・自民党内に大量の造反者が出て可決したこともある。しかしこれはレアケースだ。与党が多数を占める衆院で不信任決議が可決することは、まずない。特に2012年に第2次安倍内閣が発足してからは、政権基盤が安定しているので、野党が不信任決議案を提出しても粛々と否決されることが続いている。

■「不信任」政局をつくった菅氏はしたたか

この「予定調和」を崩したのが菅義偉官房長官だった。菅氏は5月17日の記者会見で「通常国会の終わりに野党から内閣不信任決議案が提出されるのが慣例になっている。時の政権が国民に信を問うため衆院解散・総選挙を行うのは(決議案提出が)大義になるか」との質問に答える形で「それは当然なるんじゃないですか」と答えた。つまり、野党が不信任決議案を出してきたら衆院解散に踏み切る可能性があることを打ち上げたのだ。

この経緯については5月20日付の「GDPプラスも『増税凍結解散』は止まらない」で紹介したように、衆院解散の大義づくりに困る安倍政権側が「不信任」に大義を見いだそうとしたというのが真相だ。自民党幹部は「不信任決議案は、野党が衆院解散を迫って出すもの。与野党で合意して解散するのだから、理屈は十分立つ」と説明する。

■いま衆参同日選になれば、野党は壊滅的な敗北に

菅発言で、野党には激震が走った。

「野党が不信任決議案を出したら解散」ということは、言い換えれば野党側に衆院の解散権が委ねられたようなもの。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「解散をしたがっている与党が野党第1党に疑似解散権を委ねているような不可思議な状況」と解説している。

解散権が安倍晋三首相から委ねられるのだから、本来ならば野党は歓迎すべきことなのだろう。しかし、現状は違う。

現在の野党は、参院選の1人区の候補者調整に一定のめどが立ったところ。衆院選の選挙区調整は、緒に就いたばかりだ。今、衆院を解散して衆参同日選になったら壊滅的な敗北になりかねないのは、彼らが一番よく知っている。

■「衆院解散なら国民民主党も解散」のブラックジョーク

ここから野党内の温度差が出てくる。特に民主党をルーツに持つ立憲民主党と国民民主党の足並みの乱れは深刻だ。

両党が置かれている立場は正反対だ。立憲民主党は17年の衆院選の時ほどの勢いはないものの、それでも野党の中では圧倒的に高い支持を得ている。JNNが6月1、2日に行った世論調査では「参院選比例代表ではどこの党に投票したいか」との質問に7.0%が立憲民主党と答えた。

一方、国民民主党の方は支持は1.1%。小沢一郎氏が率いる自由党と合流して活路を見いだそうとしたが、上昇気流に乗る気配はない。

今、衆参同日選となれば、立憲民主党は多少の議席増が見込めるが、国民民主党は壊滅的な敗北を喫することになりかねない。永田町内では「衆院を解散すれば、結果として国民民主党も解散することになる」というブラックジョークも飛び交う。

■いずれの主張も「衆院解散を避けるための方便」か

国民民主党側は、そのことを分かっているだけに内閣不信任決議案には腰が重い。提出に反対とは言わないまでも「政権交代後の政権構想をつくるのが先」「まずは衆院小選挙区の候補者調整を進めるべきだ」というような意見が続く。それなりに筋が通った話ではあるが、「衆院解散を避けるための方便」という側面が透けて見えるだけに説得力を欠く。

同党の原口一博国対委員長は5月28日の代議士会で「7条解散を考える会」の立ち上げを野党各党に打診する考え表明した。解散権を乱用すると指摘される安倍政権をチェックするという姿勢は野党としては正当な主張ではあるが、これも「解散は避けたい」という本音がのぞく。

■野党が「党首討論」より「予算委員会」を求めるワケ

6月19日には党首討論も予定される。安倍晋三首相と枝野幸男立憲民主党代表の討論の中で、解散の流れができるという観測もあるが、国民民主党などからは党首討論の解散自体に反対する声がある。「時間が制限された党首討論よりも、長時間丁々発止の議論ができる予算委員会を優先させた方が実利がある」という論理だ。

ただし、党首討論の代わりに予算委が開かれる展開になった場合でも、安倍首相はその場で衆院解散を口にする可能性はある。「予算委員会」なら衆院解散は回避できると考えるのであれば、あまりにも短絡的であると指摘しておきたい。

内閣不信任決議案を巡る野党内のせめぎ合いは、先に紹介したように比較的高い支持率を維持する立憲民主党が前向きで、支持が低迷する国民民主党などは慎重だ。

ただ、それだけでなく、個々の議員の選挙区事情で、当選が見込める議員は前向きで、支持基盤が脆弱な議員は慎重という傾向がある。意見集約は難しい。

■いまの野党は「ネズミを捕らないネコ」と同じ

それにしても、野党が内閣不信任決議案の提出に尻込みしているというのは、国民にとっては分かりにくい。

常に選挙を求めてファイティングポーズを取り続けるのが野党の矜持というもの。それを放棄するようなことになれば野党の存在意義を失うことになりかねない。永田町で古くから語られる「政権を取ろうとしない野党は、ネズミを捕らないネコと同じ」という戯れ言を思い出さざるをえない。

菅氏が「疑似解散権」を野党に投げて、野党内の足並みの乱れを誘ったのは、かなりの高等戦術だったともいえよう。最終的に衆院解散されることになったとしても、ならなかったとしても、会期末に向けた政局は自民党が主導権を持ち続けることになる。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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