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若者が"映像より動画"に惹かれる根本理由

プレジデントオンライン / 2019年6月7日 15時15分

これから「動画」のビジネスが大爆発するといわれている。それはなぜなのか。ONE MEDIAの明石ガクト社長は「映像と動画には『情報の凝縮度』という点で本質的な違いがある。これから動画が主流になるのは必然だ」という――。

■スマホの登場がすべて変えてしまった

僕たちの会社は、Spotwright(スポットライト)として2014年にスタートしました。そして僕らが本当にとどけたい動画の価値・本質を伝えるため、2016年にいまのONE MEDIAという社名に変更をしました。

創業当初から、映像と動画の本質的な違いを考え抜いてきました。映像と動画の本質的な違いとはなにか。その答えを僕は「時間軸」だと考えています。

みなさんにご理解いただきやすいようムービーで解説します。

まず、1本目が「映像」の時間軸です。

ゆっくりと真っ暗な画面に文字が浮かび上がり段々とフェードアウトしていく。

その後、カメラや信号、ロボットなどの写真を何枚か連ね、後にタイトルがどーんと飛び出してくる。これが映像です。この表現をするのにおおよそ35秒かかります。

一方、2本目が「動画」の時間軸です。

1フレーム目から映し出されるカメラや信号とスピード感を持って現れるタイポグラフィの文字。時間にしてたった9秒ですが先ほどの35秒かけていた映像と伝わる情報量は同じですよね。

ここに情報の凝縮が存在しています。私はこの時間に対する情報の凝縮のことをインフォメーション・パー・タイム(information per time)、約してIPTと名付けて啓蒙してきました。このIPTという考え方はスマホの登場前には考えられないことでした。

※ムービーが再生できない場合は、オリジナルサイトでご覧ください。

■1秒以内に将来の恋人を選ぶ時代

なぜ今、IPTに注目する必要があるのでしょうか。

スマホ・インターネットのコンテンツが登場する以前、僕たちは今よりも1日に触れるコンテンツ量はずっと少ないものでした。映像のコンテンツを楽しもうと思ったらテレビをつけ、文字のコンテンツを楽しもうと思ったら雑誌や本を開く。そういった選択肢の少ない中から自分の時間を潰すためのものを選んでいました。

しかし今はどうでしょうか。手の中でひっきりなしにLINEやビジネスツールの通知があなたを追い立てます。1日2回、ニュースアプリは律義に通知をくれるし、フリマアプリに出品したゴルフバッグの購入者からは発送催促の連絡がくる。

令和の時代に生きる僕たちは10年前では考えられないような情報の渦の中に生きています。そこに先ほどいったような35秒かけてやっと理解ができるような映像が入ってきてもあなたは目も止めることもなく人さし指を下から上にスクロールしてそのコンテンツを無かったことにしてしまうのではないですか。

スマホがコンテンツに触れる中心となった今の時代、1秒以内に見ている人の心をつかむような表現がとても重要になってきています。その尺度を測る基準がIPTです。

近年では、男女のマッチングアプリがはやっていますよね。画面に出てくる異性がアリかナシかを判断するその時間すら平均0.8秒と言われています。

1秒以内に将来の恋人を選ぶ時代、映像から動画への進化は必然なのです。

■急増するデジタルスクリーン

今、急速に数を増やしているのはテレビのスクリーンではなく、タクシーの車内・駅構内や電車の中といった移動空間でのサイネージなどの新しいデジタルスクリーンです。

自宅で今から2時間ほど視聴するテレビのスクリーンと忙しい中で使わなければいけないモバイルのスクリーン、せわしなく移動している中で目にするデジタルサイネージ。前者に比べ、後者に流れるのは映像ではなく動画であることがおわかりいただけると思います。

若者がTV離れをしている今、動画をつくる重要性が増していると考えています。僕はそういった社会の中で動画において一番頼りになる会社をつくることがミッションなのではないかと考えています。

ですから僕の会社、ONE MEDIAでは大きく分けて、3つの仕事をしています。

まずは動画の企画と制作です。前項でお伝えしてきたようなノウハウは実は動画を制作する上で非常に初歩的な基本の「キ」です。ONE MEDIAでは愚直に動画に向き合ってきた5年間に動画のノウハウやナレッジを蓄積してきました。これを使い、クライアントの抱える課題を動画でどのように解決できるのかということを考え実際に制作を行います。

直近では、トヨタ自動車の案件があります。

平成から令和に切り替わるタイミングで、平成30年間のトヨタの歴史をTwitterなどのSNSを通して若い人に伝えたい、メッセージ性のある動画を制作してほしい、とご相談をいただきました。

そこで僕らは若者から支持を受けるゆうこすさん、kemioさんなどの平成生まれのキャストを起用し、彼らが過ごした平成という時代と車をからめた動画で表現しました。その結果、ふつうトヨタのコンテンツに触れている年齢層は40~50代が中心でしたが、10〜20代の方が多くアクセスするようになりました。

■一貫した世界観でコミュニティをつくる

2つ目は配信です。

テレビならばCMをつくり、曜日や時間帯、番組を決めて枠を購入し、放映するまでが配信です。20代・女性に商品を訴求したいというような場合、20代・女性に人気の番組の枠を買えば終わりです。

一方、デジタルの世界ではターゲティングという概念が存在します。20代・女性をターゲットにするなら、Facebook・Instagram・Googleが保有しているユーザーデータを活用して、的確に配信することができるのです。その際、資産運用のように細かいチューニングをすることで投資した広告費用を最大化することができます。

ONE MEDIAは自分たちで動画を制作しているので、その運用方法も熟知していますので配信の部分も含めてお手伝いさせていただくことが多いです。

3つ目はリアルな場でのイベントです。

今、若者の間では、外に遊びに行くことがトレンドになっています。これはたくさんの「いいね!」をもらえる「インスタ映え」という言葉に代表されるように、充実した日常を送っていることが1つのステータスになっているからです。そんな外に出たがりな若者たちですが、そもそも期待値がよくわからない(行っても時間の無駄になるかも、どんな人たちが来るかわからない、ダサい場所だったらどうしよう)ところには足を運んでくれません。

ONE MEDIAは1本限りのCMとは違い、動画をシリーズで制作することが多いのですがそのシリーズを通して動画の世界観が好きなコミュニティが生まれます。そんな彼らに対して僕らがイベントの案内をすると、これまでつながっていなかった層のお客さんを誘致することができます。どんなイベントか、どんなお客さんが来るか、期待値が分かっているからリアルな場でも人を集めやすいのです。

なので僕らの元には、動画を若い人に配信したクライアントからイベント開催のご依頼も多いです。誰もがメディアとなり発信するような時代、個人の発信を誘引しやすいイベントは動画とセットで考えなければならないなと思っています。

■なぜ減少する若手をターゲットにするのか

そんな僕たちは、ミレニアル世代と言われる若年層をターゲットに据えています。

「これから若い世代が減っていくのに会社の経営は大丈夫ですか?」とご心配の声をいただくことも多いのですが、私は若い世代のために動画の会社をやるべきだと120%確信を持っています。なぜなら、いつの時代も若者が世の中の変化の先端にいるからです。

たとえば、いまではスマホを使っている方が圧倒的に多いのではないでしょうか。スマホが現れた時は、「誰がこんなに押しにくいものを使うんだ」という風潮もありました。ところが、若い世代から徐々に普及していき、今ではそんなことは通用しません。いつの時代も若い人が次の時代の大きな波の先端にいることは間違いないのです。

また、僕らが定期的にお仕事をしているレクサスのブランドマネジメント部マーケティング室長の沖野和雄さんに次のような質問をしたことがあります。

「僕らの動画を熱心に見てくれるのは若い人ばかりです。僕を含め若い人はレクサスのような高級車を買うことはすぐには難しいのですが、なぜお仕事をくれるのでしょうか」

すると沖野さんはこう言いました。

「それは違うんだよ、明石君。良いものを買った時に若い人がそれ良いですね、と褒めてくれないとダメ。次の世代の人たちがレクサスというブランドを良いものと考えてくれるようにコミュニケーションすることがとても大切だと思っているんです」

昭和・平成の時代を通してテレビは映像コミュニケーションの中心地であり続けました。令和が始まってもその地位は揺るぐことはないでしょう。

しかし、若年層においてその現状は異なっています。僕らのミッションは、そんなテレビを見ない若者世代に企業の魅力や歴史、その価値がしっかりと伝わるコンテンツを動画で届けることだと思っています。

■共感性と共鳴性はそこにあるか

ではミレニアル世代に受けるコンテンツはどのようなポイントを押さえればつくることができるのか。

まず彼らの特徴として、人種・文化・地域を超えて世代間で共通の感性を持つということがあげられます。これはインターネットが普及した以降に誕生した世代として納得感のある説ですね。

そんな彼らに受けるコンテンツには2つのポイントがあると思います。それは共感性と共鳴性です。

まず、共感性。

動画を見て、自分の心が揺さぶられるようなシンパシーを得られるかどうか。どこかひとごとになってしまうようなきれいなコンテンツは、もう自分には関係の無いものとして若者はスルーしてしまいます。「あ、これは自分にも当てはまるな」「共感するな」と思ったものに反応する傾向が強いのです。

そして共鳴性。

Twitterに代表されるSNSの普及により“バズ”という概念が生まれました。

明石 ガクト『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』 (NewsPicks Book/幻冬舎)

今この瞬間、同じ時間を生きている人たちが1つのもので盛り上がっていることが可視化される時代になっています。例えば、令和が発表になったタイミングでは大変多くの人たちが元号に関するつぶやきをしました。このようにみんなで盛り上がれるトピックを持つことがとても大事になってきます。

これを動画コンテンツでいうと「おもしろいな、自分もやってみよう」とまねをした動画を上げてみるという現象があります。数年前に「アイスバケツチャレンジ」というものが大流行したことも記憶に新しいでしょう。

これまでの映像とは違う“動画”という概念が若年層にメッセージを伝える際、いかに重要であるかがお分かりいただけたかと思います。

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明石 ガクト(あかし・がくと)
ONE MEDIA 代表取締役
1982年、静岡県生まれ。2006年上智大学卒業。2014年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。独自の動画論をベースにInstagramやYouTubeなどオンラインでの配信のみならず、「山手線まど上チャンネル」や「駅ナカOOH」などデジタルサイネージでの動画配信を行い圧倒的なエンゲージメントを達成している。個人の活動としても、2018年アドテック東京にて「Brand Summit Best Presenter Award」を受賞。NewsPicks Bookから自身初となる著書『動画2.0』を出版。ONE MEDIA 明石ガクトTwitter:@gakuto_akashi

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(ONE MEDIA 代表取締役 明石 ガクト)

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