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配った名刺を捨てられてしまう人の共通点

プレジデントオンライン / 2019年6月6日 15時15分

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/takasuu)

名刺を交換した後、関係が発展する人とその場限りで終わってしまう人は何が違うのか。プロジェクトプロデューサーの横石崇氏は「自己紹介の最大のミッションは信頼関係をつくること。相手の期待値を正しくコントロールすることが重要だ」という――。

※本稿は、横石崇『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「信用」と「信頼」の違い

まずは、自己紹介の目的についての捉え直しからスタートしましょう。

「自分は何者か」を伝えるとき、会社名や部署名、名前を伝えて相手の記憶に残せばいいと思っていないでしょうか。

実はこの、「いかに覚えてもらうか」という目的そのものに落とし穴があります。覚えてもらうことも良い印象を残すことも「目的」ではなく、あくまでも「手段」に過ぎません。

自己紹介における最大のミッションは「良好な信頼関係を築き上げること」です。

初めて会う人と挨拶を交わし、短い時間の中でお互いに信頼を築くことで、次のステップへ向かうことができます。

ではそもそも「信頼」とは何でしょうか。「信用」と混同されやすいので、その違いについても前提を確認しておきましょう。ここでは普段の仕事から、「信用」や「信頼」について思考を巡らせている、予防医学研究者で医学博士の石川善樹さんによる定義を紹介します。

・信用=相手に対する「理性的」な判断
・信頼=相手との「感情的」な結びつき

脳科学も研究する石川さんは、相手と自分の間に流れる目に見えないつながりを、理性と感情で区別することで、本質を見出しています。つまり、「信用」は物理的な評価や判断ができるのに対して、「信頼」は右脳的で感覚的な曖昧さを含んだ関わり合いであることが分かります。

名刺交換と自己紹介を混同しない

横石崇『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』(KADOKAWA)

また、「名刺交換」と「自己紹介」をしっかり区別すると、コミュニケーションの精度がさらに上がります。

名刺交換は信用のやりとりに重きが置かれます。お互いの所属先や連絡先をはじめとした情報を明かすことで、会社の規模やブランド力など、世の中の尺度に合わせて総合的に判断します。

一方、自己紹介は、眼の前にいる本人が信頼に値するのか感覚的に判断します。「この人にまかせても大丈夫だろうか」「私にどんな興味があるのだろうか」など、第一印象や話し方、声質など五感をフル活用して、自分の尺度で評価をしていきます。

・名刺交換=信用の確認
・自己紹介=信頼の創造

自己紹介は信頼を生み出してくれます。自己紹介とは創造的な行為であり、他者との共同作業であり、未来へ向けた対話なのです。

すべては「期待値のコントロール」からはじまる

経営学者のピーター・F・ドラッカーは、「コミュニケーションの4原則」のひとつに、「期待」を挙げています。

コミュニケーションは知覚である
コミュニケーションは期待である
コミュニケーションは要求である
コミュニケーションは情報ではない

期待がコミュニケーションの源泉なら、その“はじまり”である自己紹介においても、「期待を生み出せるか」どうかが明暗を分けると言えます。

ただし、期待値はひたすら上昇させればよいというわけではありません。相手の期待を上げすぎて、結果で応えられなければ本末転倒です。図表1にあるとおり、「実際の品質」と「事前の期待値」の差分によって、相手の満足度は変わってきます。

自己紹介で事前の期待値を必要以上に上げず、正当な評価を引き出します。期待値を上手にコントロールできれば“ボタンの掛け違い”がなくなり、自分と相手との正しい信頼を築くことができるのです。

人間関係の構築は農業と似ている

人間関係の構築は、農業にたとえることができます。

作物を収穫するにはまず、土を耕し、種をまかなければ始まりません。仕事においてもまずはやはり、協業する相手、取引する相手との関係を築くための「土台づくり」が出発点になります。いわば自己紹介とは、「土を耕す」「種をまく」行為に似ています。土壌が良いほど、作物はよく育ち、良い果実が収穫できるわけですから、「最高の自己紹介」ができれば、「最高の成果」につながる可能性も高くなります。

その「期待のマネジメント」をするためのロードマップとして役立つのが「AIMASモデル」です。「ア(会)イマス」と読みます。これは、基本的な自己紹介のフェイズを5つに区切ったものです。

まず、初対面の人に「自分は誰なのか」と伝えるのは、「Attention(注意関心)」と「Interest(共感)」の部分にあたります。そして、その先にある「Seeding(種まき)」で、相手と話し合いに入って初めて種をまくことができます。

特に始めの「1 Attention」「2 Interest」でつまずいたり、苦手意識を感じている人は少なくないでしょう。そこで、うまくいくための実例を交えながらお話ししていこうと思います。

【事例1】相手に心地よいノイズを与えよ

私は、「Tokyo Work Design Week」という、新しい働き方を支援するプロジェクトを立ち上げて、カンファレンスやワークショップなどのイベントを主宰しています。しかし、このタイトルだけを伝えても、聞いている相手はイメージしづらいでしょう。

そこで私は、「“働き方のフジロックフェスティバル”です」と付け加えています。フジロックフェスティバルは、新しい音楽に出会うことができる祭典です。それと同じような新しい働き方に出会うことができる祭典を主宰しています。すると相手は、「様々な働き方とたくさんの人が集まる、オープンな雰囲気の楽しいイベントなのですね!」という理解や会話の広がりが生まれて、私に対する期待も芽生えます。

つまり、相手に「心地よいノイズ(興味をそそる違和感)」を与えるのです。自分の価値を何か別のものに見立てたり、たとえたりすることで、相手の心に引っかかりをつくります。ぜひ対話型の自己紹介を目指しましょう。

【事例2】期待を生み出すギフトで心をつかめ

自己紹介のとき、相手の琴線に触れるポイント(ギフト)を持っていると、「期待のマネジメント」の主導権を握ることができます。

「楽天」で楽天大学の学長を務める仲山進也さんは、期待するなと言うほうが難しいほどの「ギフト」を持っています。その秘密は、仲山さんの名刺です。

図表3のように、人気スナック菓子のおまけシール風の名刺を持っています。「ナカヤマシンヤ」というロゴと、デフォルメされたご自身のオリジナルイラストが描かれています。

子どものころシールを集めていた思い出が蘇り、「どうやって作ったのですか?」と尋ねました。すると、「楽天にある店舗で注文できますよ」とのこと。しっかりと楽天のセールストークにつなげるところは、鮮やかです。

じつは、私も、自分の名刺にひと工夫しています。

名刺の裏面には、社名である「& Co.」のロゴの前に空欄があり、相手の名前を書いて(「◯◯さんとその仲間たち」という意味)として手渡すのです。「何かを始めようとする人にとっての1人目の仲間でありたい」という想いから会社をスタートしたこともあり、その想いを伝える機会にしています。

もちろん、名刺やアイテムは「演出」に過ぎません。大切なことは、自分の提供できる価値や相手との関係づくりであることを忘れないようにしましょう。

自己紹介は、「AIMASモデル」からも分かるように、その先にある「大きな目的」に至るための“きっかけ”です。しかし同時に、良い土壌から良い実りが期待できるように、良い自己紹介を実現するからこそ、その後の良いコラボレーションや仕事に結びつくと言えるのです。

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横石 崇(よこいし・たかし)
プロジェクトプロデューサー
1978年、大阪市生まれ。&Co.代表取締役。「Tokyo Work Design Week」発起人・オーガナイザー。多摩美術大学卒業。広告代理店、人材コンサルティング会社を経て、2016年に&Co.,Ltd.(アンドコー)を設立。ブランド開発や組織開発をはじめ、テレビ局、新聞社、出版社などとのメディアサービスを手がけるプロジェクトプロデューサー。また、「六本木未来大学」アフタークラス講師を務めるなど、年間100以上の講演やワークショップを行う。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」支配人。

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(プロジェクトプロデューサー 横石 崇 写真=iStock.com)

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