40代から上昇気流に乗る人の意外な共通点
プレジデントオンライン / 2019年6月11日 6時15分
■妙なエネルギーに満ちた年齢の女たちへ
40代のあなたが目の前に見る光景は、一面のお花畑か、エバーグリーンの草原か、それとも荒野や砂漠だろうか。
『オタク中年女子のすすめ』とは、なかなかのタイトルである。実のところ筆者でさえ、今後「オタク中年女子の著者」と呼ばれる未来を受け入れるのに、ちょっとした勇気を要した。
同じプレジデント社から出た1冊目のエッセイ集が『女子の生き様は顔に出る』というタイトルで、当時の連載の作風をそのまま反映してわりと固めの社会派のはずだったことを考えると、そこから「オタク」、しかも容赦のない「中年女子」になろうとすすめる方向へと舵を切ることになるとは、なんて野心的な試みなのかしら。
だがもちろん、ウケを狙ってこんなタイトルにしたわけではない。どちらかというと主となるメッセージはサブタイトルの「#40女よ大志を抱け」にあり、この本は40女という言葉から想像されるような、「妙なエネルギーに満ちた年齢の女たち=『妙齢』の女たち」へ、
「あなたの努力家で真面目で几帳面で整った人生に、ちょっとしたほころびを生じさせてみませんか」
と、冒険をそそのかすために捧げるものである。
■40代は人生で最も苦しい時期⁉
40代って、それまでどんなに努力を重ね、順調に走ってきた女でも、一度片膝をつく時期なのかもしれない。そしてそこで私たちが闘うのはシワでも脂肪でもどこかの仮想敵でもなく、「結論の出つつある自分」なのではないか。
そう思ったのは、テレビ局アナウンサーやキャスターとしてキャリアを持つ二人の女性へのインタビューがたまたま連続した2018年の夏。インタビュー記事を掲載する媒体も主旨もそれぞれ全く違ったものの、70代とアラフィフ、世代の違う二人の女性放送人がキャリアを振り返り、「最も苦しんだどん底の時期は40代前半だった」と異口同音に語るのを聞いて、多くの視聴者がテレビ画面上で知る、二人の凜とした「成功者」の足元から濃く長い影が伸びているのを見た気がした。
詳しくは書籍収録の書き下ろしエッセイ「女40代の挫折〜放送人たちの光と影〜」でお読みいただきたいが、二人の女性放送人が40代で具体的に向き合ったものは、仕事面では「求められる役割の変化」、そして私生活では「家族の問題」だった。
テレビの世界の人間でなくたって、40代での環境の変化にあれこれ思い当たるところはあるだろう。状況が変わる。自分の中身も変わってくる。その時、他人よりもまず全ての感受性と活動の主体である「自分と」どう折り合いをつけ、次のどんな地平を目指すのか。
■経験とプライドを捨てられるか
40代は、男も女も、嫌でも「自分の結果」が見えてくる季節だ。学生時代の「何でもできる、何にでもなれる(ような気がする)」可能性無限大な万能感覚は、現実の洗礼を受けてとうに戒めた。30代、自分のスキルや人脈を磨いては棚卸しする作業をひたすら繰り返し、公私ともに自分の居場所を作り、さて目を上げてみると、その結果となる自分の輪郭がだいぶ出来上がっていることに気づく。ああ、そうだ、人生の結論が出始めているのだ。
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例えば今年46歳の私がここからいきなり生まれつきのパリジェンヌになることはない。NBAのスタープレイヤーになることもないだろうし、国際線のパイロットになって飲酒運転で捕まることも、まあない。
でも、ちょっとの舵取りで、小さな自己変革を生むことはできる。二人の女性放送人は、40にして職業人としての自分のありようを土台から変える努力をするほど、それまでの経験とプライドを一度黙らせて、自己変革に取り組む知性の持ち主たちだった。それもまた自分を信じられる気持ちが可能にするわざだ。知ることで、感じ方を変えることができる。感じ方を変えると、人間関係を変えることができる。居場所を変えたり増やしたり、楽しみや特技を増やすこともできる。小さな自己変革の連続で、ゆるやかに方向を変え、ゆらゆらと進んでいくことも、加速することも、思い切って飛ぶこともできる。「十分飛べる」。そりゃピークじゃないにせよ、それが40代の恵まれた体力だ。
人生100年時代、40の先にも女の人生はまだまだずっと伸びている。まだこんなところでくじけていられない。あるいは、こんなところで世の中全部見た気になって、人生に飽きていられない。だからこそ、人生後半はこれまで几帳面に計画してPDCAとやらを回してきた「想定」の外に出てみよう、その一つのアプローチとして「特定の何かに(他者から見たらアホみたいに)ハマる」「オタクになる」という方法もありますよ……と、私はこの本で皆さんをそそのかしたいのである。
(フリーライター/コラムニスト 河崎 環 写真=iStock.com)
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