転職後3カ月でうつ病になった29歳の事情
プレジデントオンライン / 2019年7月22日 6時15分
■入社3カ月でうつ病発症
二俣紗織さん(仮名・29歳)がソフトウエアを販売するベンチャー企業に転職したのは2018年11月のこと。だが、それからわずか3カ月で彼女はうつ病で会社を休職してしまう。
「前職は派遣社員として小売店の事務職に就いていたのですが、正社員になりたいのと、条件面に惹かれて転職を決めました。6万円以上月給があがるのに加え、家賃補助が5万円にボーナスが年に4回という条件が魅力的でした。ただ、よかったのは条件だけでしたね……」
入社3カ月で、何があったのか。
「今でも忘れません。入社初日、直属の上司が役員に呼び出され、説教されて会議室から2時間出てこなかったんです。このせいで退社時間が大幅に遅れて。モチベーションは下がりました。ひょっとしたらブラック企業なのかと感じていました」
嫌な予感は次々と的中する。
「『オレは部下は殴って育てる方針だ』『こちらの言っていることが新人に伝わらなかった場合、それは新人の責任』など、耳に入った言葉だけでも信じられない暴言が多く、社員はビクビクしながら仕事を進めていました」
雰囲気は最悪の職場で、二俣さんが任されたのは、全部署の採用業務。新卒向けの会社説明会や面接を入社3日で担当することになったのだ。
■入社2カ月で消えた笑顔
「業務のこともよくわかっていないのに、上司に言われるがままに『働きやすい職場です』『人に惹かれてこの会社への入社を決めました』など、自分が思ってもいないことを学生の前で話す。キラキラしている若者と、自分を比べて、ギャップに自己嫌悪を抱くようにもなりました」
入社からわずか2カ月で二俣さんからは笑顔が消えていた。
「どんどん業務は増えていき、面接のある日は忙しすぎて昼休憩すら取れないほど。仮に昼食の時間を取れても、オフィスが静かすぎて、食べる雰囲気ではない。朝7時前に家を出て、残業で埼玉の自宅に着くのは深夜0時半を回った時間です。毎日業務が課されるので辞めるタイミングもない状況でした」
給与に惹かれて入社したはずだが、すでに二俣さんの頭の中には、いかにしてこの会社を離れるかしかなかった。そんな日々が続いたある月曜日、事件は起きた。「朝、通勤電車に乗る自分を想像したら一歩も家から出られなくなったんです」。
気づいたときには上司に欠勤の旨をメールしていた。さらにその翌日、彼女は無断欠勤をしてしまう。
■「心療内科で診断書とれるよ」
「無断欠勤を2日連続でしていたところ、会社からメールが届き、以降は休職という形になりました。その過程で友人に相談したところ、『心療内科に行けばすぐにうつ病の診断書がとれるよ』というアドバイスをもらい、すぐに精神科へ足を運びました」
血液検査などをし、二俣さんはうつ病の診断書を発行してもらう。
「そうしたら、傷病手当金という形で健康保険組合から月20万円ほどがもらえています。会社からは3カ月休職したら自動的に退職という就業規則なので、このまま退職になりますという連絡が入りました。つまり、3カ月は傷病手当金がもらえる計算ですね。休職したことのある友人に相談したところ、『傷病手当ももらえて、ゆっくり休めたよ』と言われたこともあり、抱え込まず、堂々と休職していいんだって思ったんです」
「嫌な仕事で疲弊しているくらいなら、組合からのお金で自分の生活を維持しつつ他の道を探したい」
彼女の表情には笑顔が戻っていた。
(編集者・ライター 鈴木 俊之 撮影=鈴木俊之 写真=iStock.com)
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