なぜ秋篠宮紀子さまは国民に嫌われるのか
プレジデントオンライン / 2019年6月11日 9時15分
■「いい加減なことを書くな」と怒ることもできない
秋篠宮紀子さんは腹を立てているに違いない。
令和の時代になって、以前よりさらに紀子さんへのメディア、特に週刊誌のバッシングは激しくなっている。
しかし、紀子さんにはなぜ私がこれほどまでに、いわれのない噂や臆測でたたかれなくてはいけないのか、理解できないだろう。
特に、娘の眞子さんや佳子さんと一緒に、公式行事やイベントに参加した時などは、「眞子さんとは一言も口をきかなかった」「佳子さんは紀子さんに『うるさい』といった」などと、紀子さんの一挙手一投足を報じられ、宮内庁関係者や秋篠宮家の事情通なる人間が、実はこれこれだと意味深な解説をする。
私だったら「いい加減なことを書くんじゃないよ」と編集部に怒鳴り込むのだが、尊いお方にはそれができない。どんなにつらくても、好奇の目にさらされようとも、国民には「ごきげんよう」とにこやかにほほ笑み返しをするしかない。
■なぜ「3LDKのプリンセス」は批判されるようになったのか
公務は多忙を極め、このところ気弱になっている夫も気遣わなくてはいけない。2人の娘たちは恋にダンスに余念がなく、母親の悩みなど聞く耳をもたない。
まさに「紀子はつらいよ」と愚痴の一つもこぼしたい気分だろうが、そうすればまた、秋篠宮家関係者に何をいわれるかしれない。
「3LDKのプリンセス」と歓迎され、気品の高い挙措ややさしい言葉遣いに、国民は魅了されたのに、なぜ、紀子さん批判が噴出するようになったのだろう。
しばらく前までメディアは、皇太子妃だった雅子さんより、紀子さんを褒めそやしていたではないか。
子供、それも男の子を産むことを“強いられた”雅子さんは、ストレスから心身のバランスを崩して適応障害になり、公務もままならない日々が続いていた。
気晴らしに実家の両親に会って食事をすれば、公務をさぼっているのにおかしいといわれ、娘・愛子さんの送り迎えや、合宿についていけば、私ばかりを優先して公を軽んじているといわれた。
■「男子の誕生」でこれ以上ない幸福感に包まれていた
それに比べ、紀子さんは美智子皇后の立ち居振る舞いを見習い、公務をこなし、夫に尽くして娘2人を育ててきた。そして、2006年9月6日には男の子を産んだのである。
皇室では秋篠宮文仁親王以来、約40年9カ月ぶりの男子の誕生であった。
皇太子夫妻には男の子がいない。このままでは男系天皇がいなくなってしまう。小泉純一郎首相(当時)が皇室典範を改正して女性天皇を認める方向へ舵を切ろうとしていた矢先だった。
まさに明と暗。紀子さんと秋篠宮家が、これ以上ない幸福感に包まれていたのは間違いなかったと思う。これが次第に暗転していくのである。
■秋篠宮家は庁内で比類なき「ご難場」として知られる
まずは週刊誌が、秋篠宮家の職員たちが、紀子さんの厳しいやり方に不満を持っていると報道し始めた。「東宮に比べて、うちは職員の人数も少ないしおカネも少ない」とこぼしているという話も伝わってきた。
たとえば『週刊新潮』(2019年1月3・10日号)は「秋篠宮家は従来、庁内では比類なき『ご難場(なんば)』として知られてきた。仕事量は言うに及ばず、宮邸を切り盛りされる紀子妃の要求なさる作業のレベルが、圧倒的に高いのである」と報じている。
病身の皇太子妃とは違う厳しさを秘めた紀子妃は、週刊誌の好餌になった。
2017年、秋篠宮家の長女・眞子さんと小室圭さんの婚約が発表される。2人は晴れやかに会見を開くが、その後、圭さんの母親の金銭スキャンダルが明るみに出たあたりから、秋篠宮家にアゲンストの風が吹き始めるのである。
その逆風は、日増しに強さを増していった。最初の火の手は学習院から上がる。眞子さんを学習院に入れておけば、あんな身元が不確かな男が寄り付くことはなかった、学習院を軽視した秋篠宮家の教育方針に問題あり、というのだ。
しかし、秋篠宮夫妻はそんな声には耳を貸さず、長男も学習院ではなくお茶の水女子大学附属幼稚園に入園させ、小学・中学も同校に進学させるのである。
■秋篠宮家は優柔不断ではないかという声が湧いてきた
そして、眞子さんの結婚問題が暗礁に乗り上げ、次女・佳子さんの自由奔放な言動が話題になる中、天皇が「生前退位」を決断する。
御代替わりを迎えれば、秋篠宮は皇位継承順のトップである「皇嗣(こうし)」になり、息子の悠仁さんが2位になる。
万が一、雅子妃が皇后になっても公務を十全に行えなければ批判が巻き起こり、皇太子が退位して、紀子さんが皇后になる日が来るかもしれない。失礼な話だが、週刊誌は「こうした事態を想定なさるにつけ、紀子妃のお気持ちがいや応なく高ぶるのは必定」などと書きたてた。
また眞子さんの結婚問題は、圭さんが弁護士資格を取得するためにニューヨークへ“逃亡”したこともあって、結論が出せないままいたずらに日数を重ねている。秋篠宮家は優柔不断ではないかという声がメディアから澎湃(ほうはい)と湧いてくる。
■「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」
一部の週刊誌は、紀子さんはこの結婚を破談にしたいと思っていると伝えていたが、それに反旗を翻したのは次女の佳子さんであった。
「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」と、圭さんとの結婚を強く望んでいる眞子さんを援護射撃したのである。
また、兄・皇太子(当時)は弟・秋篠宮に、「もっと大きな志を持ってほしい」「(新天皇になる)自分の思いを理解してほしい」という思いを近しい知人に明かしていたとも報じられた。
さらに秋篠宮が、「私は天皇になる気はない」とも取れるような発言をしたことで、軽率だ、兄の御代替わりに水を差すのか、といった声も上がったのである。
「雅子さまが皇后となられる日が決まって、妃殿下は内心面白くないのだろう」と、宮廷職員の間ではささやかれているとも報じられる。
その上あろうことか、平成が終わろうという4月26日、悠仁さんが通っているお茶の水女子大学附属中学校(東京・文京区)で、彼の机に刃物が置かれているのが見つかったのである。
■トランプ大統領との宮中晩餐会から生じた劇的な変化
幸い、令和になる前に犯人が逮捕されたが、またぞろ学習院側から批判が噴出した。
また、長男である悠仁さんが親しい友人を持たず職員と遊んでいると報じられ、帝王教育がおろそかになっているという批判も根強い。まさに秋篠宮家は四面楚歌のようである。
令和になり、皇太子は第126代天皇に、雅子さんは皇后に即位され、ここから劇的な変化が生じたのである。
体調が不安視されていた雅子さんが別人のように溌剌とした姿で公務をこなし、トランプ大統領を迎えた宮中晩餐会では、元外交官として活躍していた往時を思い起こさせるユーモアや語学力で、みごとに大役をこなしたのである。
米紙ニューヨーク・タイムズをはじめとする海外の新聞は、「トランプ氏と会話する雅子皇后は、彼女が外交能力を活かしてソフトパワーを促進するのを助けた。彼女は厳しい家父長制の皇室で、新しい女性のあり方を確立することになるかもしれない」と絶賛したのである。
日本の女性誌も、「ピンヒールの雅子さまが日本の国母へ」「皇后・雅子さまが新時代の皇室を世界に知らしめた」と、これまでの報じ方から一変した。
明暗が逆転したのだ。
■「私はもう駄目かもしれない……」とこぼした
「皇嗣家になって職員の数も増えたのに、相変わらず彼らへの“ご指導”は苛烈を極めているという」(『週刊新潮』5/23号の「『雅子皇后』と『紀子妃』の冷戦」から)
また、テレビのワイドショーで、小室圭の代理人の弁護士が、「本人は弁護士になるとはいっていない」「彼はいまライフプランを作っている」などと発言した上、「(圭さんは)眞子さんとの結婚は諦めていない」というニュアンスのコメントがあったことを知らされて、紀子さんは「まさしく怒髪天を衝くようなご様子でした」(秋篠宮家の事情に通じる関係者)という。
眞子さんの結婚問題、佳子さんの母親への反発、悠仁さんの帝王教育のあり方などが重なって、紀子さんの心は欝々として晴れないというのである。
『週刊文春』(6/6号)は、「秋篠宮家研究」という連載を始めた。第1回で文春は、昨年の夏に、紀子妃が、ある秋篠宮家関係者に苦悶の表情を浮かべて、「私はもう駄目かもしれない……」といったというのだ。
■女官という役職を廃止して、「皇嗣職宮務官」に統一
その時期は、圭さんが突然、ニューヨークのフォーダム大に留学することが報じられた時期と重なる。だがそれだけではないそうだ。紀子さんは「適応障害」と診断された雅子さんに代わって、美智子皇后を手本に、公務に励んできた。
だが、美智子皇后は、全国赤十字の名誉総裁を雅子さんに引き継いだ。男の子をもうけ、妃として順風満帆だった彼女が味わった初めての「失意」から、紀子さんは「もうこれ以上、公務はできません」と嘆いたという。
秋篠宮家が皇嗣家になってから職員も24人から51人に増員された。そこで紀子妃は、侍従、女官という役職を廃止して、「皇嗣職宮務官」に統一したそうである。その背景には、侍従、女官という四六時中身の回りの世話をする「オク」の役職をなくして全員「オモテ」にすることで、「自分たちのプライベート空間を守り、プライバシーを保つための措置」(秋篠宮家OB)だというのである。
秋篠宮家関係者、事情通などと称して匿名のまま、秋篠宮家のプライバシーを吹聴することを止めさせるための布石のようである。その気持ち、よくわかる。
■「紀子さん憎けりゃ弟や父親までも」という状態
『週刊新潮』(6/6号)に至っては、紀子妃の弟である川嶋舟東京農大准教授が、特定の団体の“広告塔”のような役割を担わされていると報じた。
さらに新潮は、父親の川嶋辰彦学習院大名誉教授(79)の交友関係も、宮内庁が心配していると報じている。その人物とは、山梨県出身で、家業のパチンコ店を継ぎ、上越市で遊技業「三井企画」を営む三井慶昭社長(75)だという。
ここの古参役員に山歩きが好きな人間がいて、同好の士である川嶋名誉教授と20年以上前に知り合い、現在では三井社長と家族ぐるみの付き合いだそうだ。4月にも、2人は花見のため韓国を訪れていたという。
『新潮』によれば、三井社長には2003年、自民党の坂井隆憲代議士に政治資金規正法違反が発覚した際、東京地検特捜部から家宅捜索と事情聴取を受けている(最終的に逮捕はされていない)。
また、「在日本大韓民国民団新潟県支部」の役員と口論になり、その役員を蹴ってケガを負わせたとして被害届が出されたという(本人は事実無根だといっている)。
記事では宮内庁関係者に、「お立場上、特定の団体や個人とあまり親密な交遊をなされるのは、決して好ましいとは言えません」と語らせている。
「紀子さん憎けりゃ弟や父親までも」ということなのだろうか。
■既存の対立構図は「雅子皇后誕生」でガラガラと崩れた
メディア、特に週刊誌は物事を善と悪に単純化して報道するのが常道である。雅子さんが公務をこなせない時は、その分も引き受けて、公務に、子育てに、秋篠宮家を切り盛りしてきた紀子さんにスポットライトを当ててきた。
「美智子さん&紀子さんvs.雅子さん」という構図をつくり上げ、あることないことを報じてきたのである。
その構図は、雅子皇后誕生でガラガラと崩れてしまった。国民の中には愛子天皇を期待する声も大きくなってきている。
すると週刊誌は恥も外聞もあっという間にかなぐり捨てる。雅子皇后の時代が来た、やはり元外交官でバリバリやっていた女性は違うと、手のひら返しをしたのである。
紀子さんの胸中いかばかりであろう。美智子皇后を手本として公務も雅子さんの分までやってきた。娘2人と長男を育て、たまには夫婦げんかもしたが、大きな波風も立てずに一生懸命やってきた。それなのになぜ? そう思うのは当然であろう。
■必要なのは人間としての弱さを見せることではないか
『女性自身』(6/18号)によれば、紀子さんはこれから眞子さんと2人きりの公務を増やしていきながら、冷え切った親子関係を修復し、公務に取り組む中で「小室さんの自分勝手な姿勢にきっと違和感を抱き“覚醒”してくれるはず――。紀子さまはそういった希望を胸に、眞子さまに連日の嘆願を続けていらっしゃるのでしょう」(皇室担当記者)。
だが、娘の圭さんを思う気持ちが強いことは、母親である紀子さんが一番分かっているはずである。公と私を秤にかければ、皇室は公が重たい世界かもしれないが、娘にとってどちらが幸せかをいま一度考えてあげてほしい。
紀子さんはきっと芯の強い女性なのだろう。だが、今、紀子さんに必要なのは人間としての弱さを見せることではないか。娘たちのこと、長男の教育のこと、夫・秋篠宮のことなどで悩んでいる姿を国民に知ってもらうことで、再び共感を得られ、この「ご難場」を切り抜けられると、私は思うのだが。
(文中一部敬称略)
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ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト)
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