歯を失うより恐ろしい歯周病の合併症

プレジデントオンライン / 2019年6月12日 11時15分

口腔内に住む細菌は、多くの場合家族を中心とした他の人からの唾液を通じて感染する。その種類やバランスは人それぞれ。

口内環境の悪化は、全身の疾患まで引き起こすことがわかってきた。口内の悪玉菌を抑制することで注目が高まる「ロイテリ菌」の最新情報もお届け。

■口の中の善玉菌と悪玉菌のバランスが口内環境を決める

歯周病とは、歯周病菌に感染することで起こる歯肉(歯ぐき)や歯槽骨(歯を支えている骨)など歯の周りの病気で、成人の約8割がかかっているといわれる。気づかずに放置すると病状が進行し、やがて歯を支える骨が溶け、歯を失うこともある。しかし、初期のうちは痛みもなく歯肉が腫れる程度なので、軽視しがちではないだろうか。

ところが近年、歯周病は口の中だけの病気だけにとどまらず、全身の疾患に関わっていることがわかってきた。アルツハイマー型認知症や脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥性(ごえんせい)肺炎、糖尿病、早産・低体重出産、関節リウマチなどの全身疾病に、歯周病菌が関与しているというのだ。

私たちの口腔内にはおよそ300~700種類の細菌が存在し、人それぞれのバランスで住み着いている。細菌は「常在菌(善玉菌)・日和見菌・悪玉菌」に分類され、バランスは常に一定ではなく、日々勢力争いを繰り広げている。

理想的なバランスは「善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1」。ところが、歯磨きが不十分だったり、唾液が少なくなったりすると、悪玉菌や日和見菌が暴走して、むし歯や歯周病のリスクが高まってしまう。

■歯周病菌が歯肉から血管に侵入して全身で悪さをする

むし歯菌とともに口腔内の“二大悪玉菌”と呼ばれる歯周病菌。歯周病菌は空気を苦手とするため、食べかすをエサに、歯垢(プラーク)の中で増殖するのが特徴。歯周病菌の出す毒素が歯肉に炎症を起こし、やがて骨を溶かしてしまうのが歯周病だ。

歯周病菌は空気を嫌うため、歯と歯肉の間の歯周溝に住み着く。完全に除去するのは難しく、増えないようコントロールすることが大切。

ところが、歯周病菌は口腔内だけではなく、血管や気道にも侵入して、全身に影響を及ぼすことがわかってきた。

「歯周病菌が肺に入ると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが、妊娠中の女性では陣痛や子宮の収縮が促されることで早産や低体重児出産のリスクが高まります。さらに、多くの人において、歯周病菌が血管に入り込むことで全身の血管で動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります」(日本歯周病学会理事、歯学博士の若林健史先生)

糖尿病は以前から歯周病の合併症の一つとして知られてきた。

なかでも近年研究が進んでいるのが、歯周病とアルツハイマーとの関係。最新の論文では、アルツハイマー病患者54人の脳の96%から、歯周病菌の原因菌が見つかった。アメリカではアルツハイマーの治療に歯周病菌抑制剤を投与する臨床も始まっている。

■歯周病菌を抑制する善玉菌「ロイテリ菌」に注目

病原菌を抗生物質で殺菌するのではなく、善玉菌を摂取することで体内の善玉菌と悪玉菌のバランスをコントロールする「バクテリアセラピー」の考え方が口腔ケアにも広まっている。注目されるのがヒト由来の乳酸菌「ロイテリ菌」だ。

日本人でロイテリ菌を持っているのは7人に1人といわれる。

善玉菌にもいろいろな種類があり、それぞれ得意分野があるが、ロイテリ菌が優れているのは、臨床データが圧倒的に多く、世界中で治療に使用されている点。口腔内では歯周病菌やむし歯菌を抑制し、腸では免疫細胞を活性化して感染症や風邪、アトピー性皮膚炎や、その他のアレルギー症状を低減することが報告されている。

 

■歯磨きの後“寝る前にロイテリ菌サプリを1粒”のすすめ

若林先生によると、口腔ケアの新・三種の神器は『歯磨き・定期検診・ロイテリ菌の摂取』だそう。それぞれの注意点を聞いた。

①歯磨き

歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスを使った衛生管理。歯ブラシだけでは不十分なので、必ず歯間ブラシかフロスを併用すること。物理的に悪玉菌を減らすことができる。

②定期検診

半年に1度(できれば3カ月に1度)受診してPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaningの略。専用機器やフッ化物入り研磨剤を使ったプロによる歯の清掃のこと)を受ける。

③ロイテリ菌の摂取

ロイテリ菌には歯周病菌・むし歯菌の抑制効果が確認されている。サプリメントやヨーグルトなどが販売されているので自分に合ったものを選ぼう。サプリメントなら夜の歯磨きの後、口の中でゆっくり溶かすのがポイント。起床時の口の中のねばつきが解消される。

ロイテリ菌入りのサプリメントやヨーグルトが販売されている。(写真は、オハヨーバイオテクノロジーおよびオハヨー乳業から発売されているもの)

若林先生によると、ホルモンバランスの揺らぎで唾液の質が変化する更年期は、口腔内の細菌バランスが乱れやすく歯周病リスクが高まりやすいというから注意したい。また、歯石がつきやすい人も歯周病リスクが高い。こまめに歯石除去をしよう。

平均寿命と健康寿命の開きが世界一大きいといわれるのが日本。その差を埋める鍵は「口腔ケア」にありそうだ。

(中島 夕子)

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