「締めにバー」の常識を覆す楽しみ方とは

プレジデントオンライン / 2019年6月14日 6時15分

(撮影=田子芙蓉、以下すべて同じ)

仕事の疲れを癒す「大人の女のバー案内」。お酒好きのライターがさまざまなバーを彷徨いながら、女性におすすめしたいバーといただいたお酒をご紹介。第4回は、岐阜市の老舗バーでの2杯と、バーの楽しみ方をお伝えします。

■そこでしか飲めない、お酒を求めて

前回に続き、今回も出張先でのバーの楽しみ方をお届けしたい。

バーというと、どこか別の店で料理とお酒を堪能したあと、一日の締めに訪問する人が多い。が、「まず、バーで飲み物を楽しんでほしい」というのは、数々のコンテストで優勝・入賞し、全国でその名をとどろかせている実力派バーテンダーの中垣繁幸(なががきしげゆき)さんだ。

中垣さんは岐阜市にある創業27年を迎えた老舗バー「BAROSSA cocktailier(バロッサ コクテリエ)」のオーナーバーテンダーでもある。

お酒の楽しみ方は、料理の楽しみ方と同じ。お腹いっぱいだと料理の味を楽しめないように、酔いが回った状態では、バーで提供されるお酒の味を存分に楽しめないからだ。

岐阜での取材を終えた夜、かねてから訪問したいと願っていた「BAROSSA cocktailier」へ初訪問を果たすことに。そこは、一般、同業者を含める全国のバーマニアたちがこぞって訪れる、超有名バーでもある。

ホテルの部屋に荷物を放り込み、徒歩5分ほどの目的地へいそいそと出かける。

「いらっしゃいませ」。ドアを開けると中垣さんがカウンター越しに迎えてくれる。カウンターに座り、訪問の念願がかなった旨を伝え、ひとしきり会話する。

「ここで飲みたいと、全国からたくさんの方が来店してくださるので嬉しいですね」と中垣さん。

今や日本中どこにいても、世界中のお酒が手に入り味わえる。だからこそ、ここ「岐阜」でしか飲めないもの、表現できないものを追求し創造しているのだという。

■FARM to GLASS.つくり手の思いを受け止める

メニューにはさまざまなシグネチャーカクテルがあり迷うところだが、この時季しか飲めないカクテルをとオーダーする。

「カモミールのカクテルはいかがでしょう」と中垣さんが提案してくれる。

聞けば、岐阜県大垣市はカモミールの栽培が日本一なのだそう。が、そのほとんどが製薬業社との契約栽培であるため、生のカモミールを手に入れるのは困難だそうだが、中垣さんは生産農家と契約し、株ごとプランターに移して店の外へと運んでいる。カモミールの短い開花期間をできるだけお客に楽しんでもらいたいという思いからだ。

岐阜は、日本のリンゴ栽培の南限、ミカン栽培の北限であり、一年を通してさまざまな旬のフルーツが手に入るのだそう。隠れたフルーツ王国であることも、中垣さんがこの地にこだわる理由だ。

「岐阜だからこそ、FARM to GLASS(ファーム トゥ グラス)が実現できるんです」

採れたて&フレッシュな素材でつくるカクテルは、東京ではなかなかお目にかかれない。

バーでの楽しみ方は、こうしたつくり手の思いを受け止めることにもある。オーダーしたカクテルがどのような素材で、どんな思いをこめられてつくられているのかに思いを巡らせてみると、目の前の1杯のカクテルも、より味わい深くなる。

 

「どうぞ」と出されたのは、グラス一杯に摘んだばかりのカモミールの花が咲き、思わず「かわいい!」と声が出てしまう、生まれてはじめて目にするカクテルだ。

ひとくち飲むとハーブであるカモミールのさわやかな香りと、コアントローのオレンジの味と甘さが口中に広がり、幸せな気分になる。

フレッシュ・カモミールを使用したカクテルは、4月下旬からほんの数週間あまりの時季に、ここだけで味わえる特別な1杯なのだ。

「コアントロー カモミール モヒート」1200円(税別)

■インスタ映えより、五感でしっかりと記憶しよう

こうした可憐で美しいカクテルを目にすると、思わず「インスタ映え」と、スマホを取り出しパシャパシャと撮影する人が多いが、バーでは基本的に撮影は慎むのが作法だ。

また、複数で来店した場合、気分が上がり、思わず大声になってしまうが、これも注意したい。さらに、観光で訪れた先でやりがちなのが、短パンや露出の多い服装での訪問。オーセンティックバーであるほど、こうした服装には注意が必要だ。

「周囲の方が不快な思いをしないように、それぞれのパーソナルな時間とメインの飲み物を楽しんでもらいたいですね」

また、オーダーの仕方がよくわからないからバーにはあまり……という女性も安心を。オーダーの仕方に型はない。その時に、どんなものが飲みたいと思っているか、素直な気持ちを伝えればいいと中垣さん。

「バーに対して先入観の少ない女性のお客様のほうが大胆にオーダーされます(笑)」

お酒の知識云々ではなく、純粋にカクテルを楽しみたいという気持ちが大切。もちろん、ノンアルコールカクテルであっても、さまざまなオーダーに応えて提供してくれるので、お酒が飲めない女性でも、存分にバーを楽しめる。

■大人の知的好奇心を満たす、バーの夜

1杯目をゆっくりと飲み干したところで、2杯目は、「フルーツを使用したものを」とオーダー。

どんな飲み物が出てくるのかとワクワクして待つ時間も楽しい。その間、中垣さんはテキパキと仕上げていく。しばらくしてスッと提供されたのは、小ぶりのプレートに載ったシャンパングラスとハート型の銀の器に入った、これまたハート型の真っ赤なイチゴだ。

「スーヴィード レオナルド」1600円(税別)
 

一見すると、カクテルというより、グラスシャンパンとデザートとして添えられたイチゴのセットように見える。

「食べるカクテルをイメージしているんですよ」と中垣さんが教えてくれる。

クラシックなカクテル「レオナルド」をアレンジした、中垣さん考案の日本初「スーヴィード」カクテルだ。イチゴは、中垣さんこだわりのフレッシュな樹上完熟イチゴを真空で調理。口にすると芳醇なグランマニエがイチゴの隅々まで染みこんでいるのがわかる。シャンパンと相まって口中で「レオナルド」に昇華する。

思わずうなってしまう1杯だ。

カクテルは、バーを訪れる人たちの知的好奇心を満たしてくれるもの。

まさに「バーは大人の遊び(趣味)のひとつ」と、中垣さん。

遊びだからこそ、もっと楽しむために、たまには「締めのバー」ではなく、「最初にバー」を試してみてはいかがだろう。

きっとそこでの1杯は、これまでにないほど深く記憶に残るはずだ。

岐阜県・岐阜市にある1997年創業のオーセンティックバー。オーナーバーテンダーの中垣繁幸さんは、世界的なカクテルコンテストに2年連続優勝・入賞など、数々の賞を獲得している全国的に知られる存在。フルーツ王国・岐阜ならではのフレッシュなフルーツを使ったオリジナルカクテルや、革新的なカクテルが楽しめる。カウンター9席、テーブル席1つ。

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BAROSSA cocktailier(バロッサ コクテリエ)
岐阜県岐阜市金宝町1-12 PORT-A 2F TEL=058-263-1099
営業時間=19:00~25:00 *Last in 24:00/LO24:30
休業日=月曜(月曜が祝前日の場合、火曜休み)
※一組3名まで(テーブル予約は最大5名まで利用可。※前日までの予約が必要)
※飲食代金のほか、チャージ料1000円と消費税が別途かかります。
※分煙(カウンター:全席禁煙、テーブル席:電子タバコのみ可)

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(プレジデントウーマン編集部 戌亥 真美 撮影=田子芙蓉)

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