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創価学会に"一度入ると抜けられない"理由

プレジデントオンライン / 2019年6月13日 9時15分

時事通信社の新年互礼会で、安倍晋三首相(左)と写真に納まる創価学会の原田稔会長=2013年1月7日午後、東京都千代田区の帝国ホテル(写真=時事通信フォト)

公式発表によると、827万世帯が入信している創価学会。人数にすると約2043万人であり、日本人のおよそ16%が学会員ということになる。この数字は入信時に登録する「統監カード」を基にしているが、実際は水増しの可能性が高い。なぜそんなことが起こるのか――。

※本稿は、島田裕巳『親が創価学会』(イースト新書)の第2章「『親が創価学会』だとどうなるのか」の一部を再編集したものです。

■創価学会に入った人間は「統監カード」で管理される

創価学会に入会するとどうなるのか。まず、「統監(とうかん)カード」というものに個人情報が記されることになる。統監カードは、創価学会の組織における住民票のようなもので、それは支部のなかにある「統監部」で管理される。カードに記されるのは、以下のような内容である。

① 氏名
② 生年月日
③ 入信年月日
④ 帰省先住所
⑤ 自宅電話番号
⑥ 携帯電話番号
⑦ 職業
⑧ 本尊の安置状況
⑨ 『聖教新聞』を購読しているかどうか
⑩ 会合への参加状況
⑪ 財務をしているかどうか
⑫ 歴代の統監責任者

■創価学会の組織構造はどうなっているのか

その統監カードに記された人間は、世帯数でいうと827万世帯にものぼるといわれており、創価学会は巨大な組織であることがうかがえる。そのため、組織の構造はかなり複雑になっている。その概略を説明しておこう。

創価学会には「四者」ということばがある。これは、「壮年部」、「婦人部」、「男子部」、「女子部」の4つの部のことをさしている。

壮年部は、基本的に40歳以上の男性が所属する。婦人部も、年齢的には壮年部と同じだが、年齢が若くても、既婚者(たとえ離婚しても)であれば、婦人部に所属する。男子部は39歳までの男性が所属する。男子部には既婚者も含まれるが、女子部は39歳までの未婚者である。ただし、大学生であれば、男子は「学生部」、女子なら「女子学生部」に所属する。

18歳未満が所属するのが「未来部」である。未来部はさらに、「少年少女部」、「中等部」、「高等部」に分かれている。少年少女部には未就学児童と小学生が含まれる。入会したばかりの赤ん坊も、少年少女部の部員ということになる。それぞれの部には部長がいて、各部は全国組織になっている。

性別・年齢別の組織区分

■活動の際の組織は地域別に細分化されている

ただし、実際の活動は地域単位でおこなわれている。

中心にあるのが東京都新宿区の信濃町に本拠を構える「学会本部」である。その下に14の「方面」がある。方面は、一般に言われる地方と重なる部分が多い。ただし、沖縄が九州方面に含まれず独立しているほか、関東周辺はかなり違う。関東は次のようになっている。

「東京」東京23区、山梨県
「第二総東京」多摩地域
「関東」千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県
「東海道」神奈川県、静岡県
「信越」新潟県、長野県

方面の下は、かなり複雑である。

創価学会本部がホームページで公表している組織図では、「方面長」の下に「方面運営会議」があり、その下に「県長」、さらにその下に「県運営会議」と続いていく。その下は、「分県」、「圏」、「本部」、「支部」、「地区」、「ブロック」と続いていき、ブロックが最小の単位である。この組織図を見ると、創価学会の組織はピラミッド型の構造をしているように思える。

地域による組織区分

■「ピラミッド構造」ではない複雑な組織

ところが、地域によって組織のあり方はかなり違う。

たとえば、山形県内の組織は、全体が「山形総県」と呼ばれる。その下には、「山形太陽圏」、「山形池田圏(米沢市)」、「南陽王者圏(南陽市、高畠町、川西町)」がある。山形太陽県は、山形池田圏と南陽王者圏に含まれない山形県内の地域ということになる。

山形県の創価学会組織図

ところが、同じ東北地方でも、宮城県となると、全体は宮城総県ではなく「総宮城」と呼ばれる。

総宮城の下には、「第一宮城総県」、「第二宮城総県」、「第三宮城総県」と3つの総県がある。

第一宮城総県は仙台市のことである。その下には5つの総区があり、それは仙台市の区と重なる。「青総区」や「宮城野総区」などである。

第二宮城総県は、仙台市よりも北の地域をさし、その下に、「石巻躍進県」、「宮城新世紀県」、「宮城太陽県」がある。石巻躍進県は石巻市、宮城新世紀県は気仙沼市、宮城太陽県は多賀城市などが中心である。

石巻躍進県の下には、「石巻牧口圏」、「石巻戸田圏」、「石巻池田圏」などがあり、さらにその下には本部や地区がある。第三宮城総県は、仙台市より南の地域で、その下には名取市を中心とした「宮城勇舞県」がある。

宮城県の創価学会組織図

■組織構造が複雑な理由は選挙の都合

創価学会では、政界に進出する際に、組織を縦線(信仰によるつながり)から横線(地域を基盤にしたつながり)に改めた。したがって、選挙の区割りと対応しているところはある。衆議院選挙では、宮城県は6つの選挙区に分かれている。創価学会の組織は、次のようにそれと重なる。

衆議院 創価学会
第一区 第一宮城総県青葉総区・太白総区
第二区 同宮城野総区・若林総区・泉総区
第三区 第三宮城総県
第四区 第二宮城総県宮城太陽県
第五区 同石巻躍進県
第六区 同宮城新世紀県

選挙は、衆議院や参議院の国政レベルだけではなく、地方選挙もある。最初、創価学会は地方選挙からはじめたという背景がある以上、市や町村もそれぞれが一つの単位になるわけで、創価学会の組織はそれにも対応していると考えられる。

創価学会の組織がきれいなピラミッド構造になっていないのも、選挙活動の都合が一つの原因になっているものと思われる。また、新しい会員が増えていったことで、組織のあり方が変わるということもある。

さらに、選挙の区割りが変更になることも、創価学会の組織をより複雑なものにしている。ちなみに、宮城県で次に総選挙があれば、仙台市太白区の一部の地域が宮城第三区に含まれることになっている。創価学会の組織がそれに対応するとすれば、変更が必要になってくる。

創価学会の組織はこれだけ複雑なため、外部の人間が、創価学会の組織の全体像を理解することは不可能に近い。実際、それを教えてくれる資料は存在しない。

学会本部が地方組織の全体像を公表していないので、たとえ会員であってもそれを把握してはいないはずだ。学会本部には、全体像を理解している人間がいるはずだが、それはかなり限られるのではないだろうか。

■退会しても学会員としてカウントされたまま

これほど組織が複雑化したのも会員数が多いからこそであるが、実は先述の「統監カード」上の会員数と実際のそれは一致しない。

島田裕巳『親が創価学会』(イースト新書)

普段、統監カードは、地区の地区部長が厳重に管理している。2カ月に一度、地区の関係者が集まる統監部の会合が開かれ、そこで新入会員や転出転入、退会などが確認される。それは地区全体の数を示した「地区統監シート」に記入される。そのシートは次に支部でおこなわれる支部統監に回され、さらに本部統監に回される。シートはマークシートになっていて、区、圏、分県、県統監というように上位の組織に送られていくが、その際にはウェブシステムに入力される。したがって、学会本部も共有している。

つまり、学会本部は会員の数を把握している。それが外に公表されることはない。ただ、統監をおこなう会員は退会者が出るのを好まないため、退会を申し出ても、会員として数えられている可能性もある。

そのため、統監カードの会員数は水増しされた状態であり、信憑性に疑念があるというわけだ。それは、退会したくても一生カードに個人情報が残るという恐ろしい事実があるということでもある。

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島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
1953年、東京生まれ。1976年、東京大学文学部宗教学科卒業。1984年、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を経て、現在は東京女子大学および東京通信大学で非常勤講師を勤める。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)など。

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(宗教学者 島田 裕巳 写真=時事通信フォト)

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