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"転職で給料減った"は能力の問題ではない

プレジデントオンライン / 2019年6月14日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SIphotography)

給料の上がる転職をするには、どうすればいいか。人事・戦略コンサルタントの松本利明氏は「行きたい会社の成長段階を見極め、自分がそこにマッチするかを判断することが重要だ。そうしないと入社しても報酬ラインが上がらず、不本意な転職を繰り返す羽目になる」と指摘する――。

※本稿は、松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■あなたの「仕事の値札」はいくら?

「あなたの市場価値は?」と言われると迷うことでしょう。市場価値とはあなたの「仕事の値札」のことを言います。

現在の労働市場の中で、仕事の値札は所属する業界、組織規模、職種、職位などで決まります。自身が持つポテンシャル、スキル、経験、資格で決まるものではありません。あなたの属性と会社の「人材の需要と供給」がすべて一致して初めて、本当の市場価値が分かるのです。

仮にあなたが人事課長をするとしましょう。テレビ局の人事課長なら年収1500万円。でも、ガソリンスタンド会社の同じ役職なら372万円となります。あなたが同じ仕事をしても、業界が違うだけで年収は約4倍の差がでてしまいます。

逆の見方をすると、同じ仕事をするなら高い年収を貰える業界にいた方が、割がいいとも言えます。そう、あなたが高く売れれば、同じ仕事でも市場価値は高くなるのです。

市場価値をあげるのは簡単です。行きたい会社の成長段階を事前に見極め、いまある仕事の値札とマッチングするかを判断すればいいのです。

そこを見誤ると、選んだ仕事によっては報酬が目減りし、延々と転職を繰り返す羽目になります。己の価値を高めるには、「どこで働けるか」が一番の要素なのです。

一体どういうことなのか? 順を追って解説しましょう。

■外資系コンサルや投資銀が高報酬になるワケ

市場価値は「人材の需要と供給」に加え、「ビジネスモデルの収益性」との関係でも決まります。ビジネスモデルの収益性とは、一言でいうと「儲かりやすさ」と「安定性」に尽きます。儲かる業界ほど人件費の予算を多く蓄えていることは想像つきますよね。

逆に、どんなに大変な仕事でも儲からなければ人件費を払いたくても予算がないこともわかるでしょう。同じ仕事をするなら、儲かるビジネスモデルの業界や会社の方が美味しく感じるのが普通です。

「安定性」とは、社員の雇用期間とビジネスモデルの安定性を指します。外資系コンサルティングや投資銀行は高年収でないと雇えないし、その人材でないと利益が出せない。ただし雇用期間は比較的短期なので高い報酬になるのです。新卒を成長させるケースもありますが、育成コストがかからない人材を中途採用し、即稼いでもらう方が雇う側も手っ取り早く利益を得られるので、おのずと年収が高くなるのはそのためです。

基本的に定年まで働く業界であれば、育成期間や定年後の退職金まで会社が負担するとなるとその分コストがかかることもあり、報酬水準はあまり高くはあげられません。
 ですから、どんなに儲かっても、そのビジネスの寿命が短いと、その業界の人たち全員に高い報酬を払い続けることは難しくなります。

ルーズソックス、白いたい焼き、ハイパーヨーヨーは覚えているでしょう。一時流行りましたが、今はもう見る機会はほとんどありません。このように流行り廃たりが激しいビジネスは、一時どんなに大きく儲かってもボーナスを一時的に上げるくらいしかできません。

■入社時の報酬ラインは、昇進してもつきまとう

また、「あなたが転職した時にいくらで売れるか?」も重要です。

通常、転職時に大幅に報酬をあげることは難しいのです。仕事の値札は「人材の需要と供給」と「ビジネスモデルの収益性」の関係で決まることは言いましたが、さらにそこに現在の年収水準を加味した上で調整するからです。

なぜなら、報酬設定はその会社が定める上限・下限の範囲の中で決まるからです。

「どんな係長でも年収450万円で全員一緒」という組織はほぼありません。会社の報酬制度の設計にもよりますが、通常は報酬額に上限と下限を決め、幅を設けています。なので、今の報酬額が低く、値札が高い仕事に転職が決まったとしても、下限までの範囲に収まるなら、現状維持か気持ちだけ少し報酬があがるくらいが現実です。

喜んだのは最初だけ。同じ仕事をする同僚はあなたより、はるかに報酬をもらっていることがわかると釈然としないでしょう。

しかも、その会社の報酬設計にもよりますが、係長から課長に出世しても、課長の報酬の下限内で収まるなら報酬額は少ししか上がらないということも起きうるのです。いくら出世しても、入社時の安い報酬額はつきまとい続けるのです。

向いている仕事は一番大事ですが、次に重要なのが儲かる仕事につくことです。向いていることなら、好きでない、やりたくないことでも、実際やってみると、やりがいも湧いてくるので段々好きになってきます。結果がでても好きだとは思えない時があったら冷静に仕事相手やお客様との関わりを客観視し、他に向いていることがないか探してみましょう。

■仕事の値札に合った「会社のライフサイクル」とは

「大企業からベンチャーに入ったら、人生がまったく安定しないアドベンチャーになった」と頭を抱える人は、大量に存在します。逆に大企業からベンチャーに移って成功している人もいます。

その差は何か。会社の事業のライフサイクル「導入」「成長」「安定」「衰退・再展開」のどのフェーズがいまの自分にあっているかを知り、その枠組みから出ずに異動や転職をするので成功しているのです。

成功するためには把握することが欠かせない4つのライフサイクルとは何か。各フェーズの特徴を解説します。

①導入期:限られたお金と人手を貴重な資源としてビジネスを成功させるため、様々なチャレンジをするフェーズです。まだ世間で受け入れられているビジネスではありません。新しいアイディアを紡ぎあげるだけでなく、信頼を得るために品質のバラツキがないようにする気配りも大事です。創立からまもない企業や、新たな事業を始めた企業に多くみられます。

このフェーズにいる組織は、ワンマンか同志が集まり組成されます。ビジョンや構想力がある社長とその応援団が集まるFacebookのようなスタイルが今風でしょう。今、ここにいる仲間で未来を夢見てチャレンジする仲間意識が高い人が集まります。そしてある時、市場の掴み方がわかり、一発当てると次のフェーズに向かいます。

②成長期:成長期の初期段階の社内は躍動感に沸き、活気づきます。前向きな取り組みに果敢にチャレンジします。導入期や成長期の失敗・成功の経験は小さな組織では共有が速く、成長の確度も高まります。「売上が全てを癒やす」状況となり、売上も規模も急成長していきます。経営企画、マーケティング、人事など、組織の機能がわかれていき、やがて安定期を迎えます。

■「安定期」向きの人が「成長期」の会社に入ると……

③安定期:わが社の儲かるビジネスモデルが確立し、計画的に仕組みと管理で組織を動かしていくようになります。伸びが落ちてくるので差別化・ブランディング、効率化を行うなどして、利益とビジネスモデルの寿命を保ちます。

④衰退・再展開期:市場の変化により、ビジネスモデルが終焉(しゅうえん)を迎える段階です。一部のリーダー企業はキャッシュを生み続けることができますが、それ以外の企業は、撤退するか、イノベーションにより新たな価値の創造を行うか、どちらかになります。

それぞれのフェーズで求められる資質は異なります。

「仕組み化しルールを決め、守らせる」という安定期に入っている会社に資質がフィットした人は、現在成長期で「売上が全てを癒す状態」、「勢いはあるけれども先々は安定的に読めず、ほころびが出ても何とか状況対応しながら支えていく状態」の会社は不安でストレスしか感じません。

つまり、安定期向きの人が成長期の会社に入ると、フラットな文化なのに階層をつくり、指揮命令系統で人員を動かそうとするなど、安定期の組織で成功したやり方を持ちこもうとして逆に浮いてしまい、居場所を失うのです。

■フェーズをまたぐ経験をすれば高収入転職も

例えば、日系企業で外資系に買収された会社の、外資系企業が出す無理難題を論理的に納得させ折り合いをつけ、日系企業の体制を守る(ディフェンシブすると言います)役割を担い、成果を出したりした人は引く手あまたです。

松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)

なぜなら、買収されたことで会社の地殻変動が起こり、組織が刷新され成長期に近い状態となるからです。この時期に手腕を発揮し、安定期を築き上げた人は希少価値が高い。「外資系企業に買われた後、日系企業側を正しくディフェンス出来る人材」と労働市場の中で「タグ」がつきます。

外資系企業の日本法人の経営陣でも外資系企業のトップダウンでくる無理難題(日系企業の視点から見るとですが)を、納得できる形で海外のより上位職の方に折り合いをつけられる人はごく限られています。

また別の例えで言うと、最初はある技術分野で、専門用語の世界で片言の英語でも折り合いをつけた経験があれば、その経験だけでも大きく評価されます。ディフェンスする機能がうまく果たせない企業は多いし、外資系企業に買収されるケースもゼロにはならないでしょう。対応出来る領域を広げていけば、より大きい企業でより高いポジションで迎えいれられるでしょう。

外資系企業の日本法人の社長だけではなく日系企業がどう海外子会社に方針を伝え、まとめていくかという、海外事業本部の責任者のポジションも見えてきます。

年収も2000万単位(それ以上の可能性もあり)。退職金も役員となると高くなります。

早期リタイヤも可能になるし、その知見を活かして出版する。大学等で客員教授の依頼があるかも知れません。数十名程度の会社からスタートしても、仕事の値札とマッチした会社を選んでいけばここまで登り詰めることも可能なのです。

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松本 利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント、HRストラテジー代表
日本人材マネジメント協会執行役員。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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(人事・戦略コンサルタント、HRストラテジー代表 松本 利明 写真=iStock.com)

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