一つの事を極めるために絶対やるべきこと

プレジデントオンライン / 2019年6月17日 11時15分

コカ・コーラ ボトラーズジャパン 執行役員 調達本部長 エグゼクティブビジネスマネージメント本部長 荷堂真紀さん

1990年代にシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、4回の転職を経て、5社目で執行役員となった荷堂さん。5人の子どもを育てながら、新しい分野にも次々と挑戦し、パワフルかつフレキシブルな働き方を貫いてきた。いくつもの職種を経験してきたからこその強みとは?

■転職5社目で役員に。MVPの意味を間違え焦ったことも

コカ・コーラ ボトラーズジャパンの執行役員であり、ペットボトルなどを扱う調達部門の統括部長である荷堂真紀さん。これまで4回の転職を経て、多彩なキャリアを築いてきた。

「会社を移ると、そのたびに築いたネットワークを断ち切り、新しい環境に入っていかなければならない。そのたいへんさはありますが、一方でそれが楽しいんです。そのたびに、まったくの白紙から自分を試すことができますから」

そう話す荷堂さんは「失敗を失敗とは思わず」「いやなことはすぐ忘れる」タイプ。精神的なタフさがその根底にある。

「それこそ失敗なんて星の数ほどしてきました。例えば、『MVP』という用語はマイクロソフトではスポーツと同じ、『最優秀プレーヤー』という意味です。でも、コカ・コーラでは『モースト・ヴァリュード・パートナー』。てっきり社員のことだと思っていたら、顧客だったなんてこともありましたね」

■グローバルな組織で、英語力を鍛えられた

外資系企業に勤めてきたが、英語が堪能だったわけではない。大学の工学部で当時、最先端の職業であったシステムエンジニア(SE)の勉強をし、新卒で日本電気に入社。その後、版権を扱うUnitedMedia社に転職し、上司と意思疎通を図るため英語を習得。そして、31歳のとき日本マイクロソフトに入社した。

「英語の勉強を本格的に始めたのは27歳ぐらいから。マイクロソフトの場合、日本のオフィスにいても直属の上司が日本にいるとは限らないので、自然に鍛えられました。英語で電話をして、5回聞いても詳細がわからず、相手の人から半分キレたように『メールで送るから読めよ』と言われたり(笑)。言われたことを間違って解釈し、プロジェクトを違う方向に進めてしまったこともありましたよ」

人によってはプレッシャーに押しつぶされそうな状況でも、荷堂さんは常にフラットな目で自分の働く環境を見てきた。多国籍のチームでこまめにコミュニケーションを図り、情報をシェアしていくこと。それにはSEとして働き、チームワークが基本だったときの経験も役立ったという。

「大人数でシステム開発をしてきたので、もともと進捗(しんちょく)状況を細かくシンクロナイズするという意識はありましたね。マイクロソフトに入って5年目、『グローバルなローカリゼーションのマネジメントをやりませんか』というオファーをもらい、シアトルの本社に行くことになりました」

翌年、システム開発者向けのアプリケーションを作る部門に社内転職。調達をはじめ、未経験の人事や法務、財務などの業務を掛け持ちすることに。しかし、そこでは外資らしいシビアな人間関係に悩むことにもなった。

「新しく来た女性の上司がハラスメントをする人で、社員の悪いところをお互いに告げ口させ、人を減らしていくようなやり方をしていたんです。私は裏表があるのがいやなので、それがとても苦痛でした。1度、トイレの個室に入っていたら、その上司が重宝している部下が一般職の人を連れてきて、他の人の悪口を言えと迫っている。私はとっさに足を上げ、彼女たちから見えないようにしたんですが、洗浄センサーが作動してしまって『誰かいる!』と(笑)。でも、意地でも出ないぞと個室にこもりました」

まるで海外ドラマのワンシーン。そんなストレスフルなビジネス環境に転職も考えたが、法人向けのセールスをしているチームに移り、そこで理想的な女性エグゼクティブと仕事をしてリハビリができたという。そして、2011年の東日本大震災をきっかけに帰国を考え、マイクロソフトを退社した。

■ひとつを極めるには、他のことも経験すべき

「これまで、どの転機でもそうなのですが、なぜか私が『こうしようかな』と考えたタイミングで良いお話をもらえる。われながらラッキーだなと思います」

(上)社会人1年目に産んだ長男と(下)キャンピングカーで家族旅行

セールスフォース・ドットコム日本支社に採用されて帰国。その後、コカ・コーラ イーストジャパンで社長補佐を務めた後、コカ・コーラ ビジネスサービスの代表取締役社長を経て現職に就いた。

「もともとひとつの会社、ひとつの職種にこだわってはいないんです。これまで4回の転職でいろんな業務に携わってきました。その経験から言えるのは、管理職を目指すなら、いくつかの職種をやってみることはとても大事だということ。私はスペシャリストとゼネラリストを分けて考えたことがなく、スペシャリストかつゼネラリストでないと、今の時代、本当の強みにならないと思います」

私生活ではなんと2男3女の母親。新卒で日本電気に入った年に長男を出産し、パートナーと共に5人の子を育ててきた。

「子どもたちが小さい頃は、出産や育児のため会社を辞めたことも。転職を重ねてきたのは家庭の事情もありますね。『転石苔(こけ)むさず』と言いますが、私の場合、逆に転がりながらいろんな苔をくっつけて大きくなった。振り返ると、そんな感じがします。ですから、いつも自分の子どもたちにも『何かを極めたいなら、他のこともやってみたほうがいい』とアドバイスしているんですよ」

役員の素顔に迫るQ&A

Q 好きな言葉
顔はいつも太陽のほうに向けていて(ヘレン・ケラー)

Q 趣味
スーパー銭湯めぐり

Q ストレス発散
おいしいものを食べる

Q 愛読書
山本周五郎、司馬遼太郎などの歴史小説

Q Favorite Item

MP3プレーヤー
「長男からのプレゼント。元気の出る歌が入っていて、行き詰まったときに聴きます」

 

----------

荷堂真紀(かどう・まき)
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 執行役員 調達本部長 エグゼクティブビジネスマネジメント本部長
広島県生まれ。香川大学卒業後、日本電気株式会社入社。その後マイクロソフトなど外資系企業にて調達、経営戦略、営業、マーケティングなどを務める。2014年コカ・コーラ イーストジャパン入社。同年コカ・コーラ ビジネスサービス取締役、代表取締役社長をえて、コカ・コーラ ビジネスソーシングへ名称変更 代表取締役社長を務める。2017年コカ・コーラ ボトラーズジャパン執行役員 調達統括部長に就任。2019年2月執行役員 調達本部長に就任、6月より現職

----------

(小田 慶子 文=小田慶子 撮影=澁谷高晴)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング