自分より猫が大事な猫カフェ店主の暮らし

プレジデントオンライン / 2019年6月20日 9時15分

保護猫カフェ「ねこかつ」店主の梅田達也さん(画像提供=毎日放送、以下すべて同じ)

日本では年間約3万5000匹の猫が行政に殺処分されている。保護猫カフェ「ねこかつ」店主の梅田達也さんは、そういった飼い主のいなくなった猫を保護し、新たな家族を見つける場を提供している。なぜそこまで猫に入れ込むのか――。

■年間約3万5000匹の猫が「殺処分」されている

埼玉県川越に、ちょっと変わった猫カフェがある。野良猫、捨て猫を保護し、しつけをして人間に慣らし、“新たな家族を見つける場”を提供する、保護猫カフェ「ねこかつ」だ。店主は、梅田達也さん46歳。

今や3世帯に1世帯がペットを飼育する、世界でも有数の「ペット大国」日本。だが、捨てられるなどして保健所等に収容され、一定期間を過ぎると殺処分される猫は年間約3万5000匹ともいわれている。

梅田さんはそうした施設や災害被災地の猫や、飼い主が他界して世話をする人がいなくなった猫を保護してケアをしながら、自らのカフェを通じて新しい飼い主を探す活動を6年間続けている。これまでに新たな飼い主を見つけた猫の数は、なんと1000匹。5月12日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、事情を抱えた猫たちが新たな家族の一員となる瞬間を追った。

保護猫カフェ「ねこかつ」

■「カワイイから」家族に迎えてほしい

温かな木目調のインテリアに、柔らかな日差しが注ぐ埼玉県川越市の猫カフェ、「ねこかつ」にはさまざまな事情を抱えた約40匹の猫たちがいる。片方の目が見えない猫もいれば、足の不自由な猫も……。その多くは、自治体から引き取った「保護猫」たちだ。

梅田さんの活動は、まずそうした猫たちを引き取りにいくことから始まる。この日は定期的に通っている「茨城県動物指導センター」を訪れ、14匹を引き取った。引き取った猫はまず動物病院に連れて行く。健康状態をチェックし、不妊、去勢などの処置に感染症の予防接種も欠かせない。

【病院スタッフ】「きょうは合計で10万7000円です」

店の売り上げの大半は病院代に消えるという。

「茨城県動物指導センター」を訪れ、14匹を引き取った。 

次に猫を連れて行くのは梅田さんが「シェルター」と呼ぶ猫のために借りている家だ。ここで、ボランティアのスタッフと共にトイレのしつけをし、人に慣れさせる。猫が警戒心を解き、人間を好きになって初めて“猫カフェデビュー”となるのだ。

ボランティアのスタッフと共に人に慣れさせる

梅田さんには、猫を譲るにあたって1つの思いがあった。

【梅田】「(飼い主には)この猫たちがかわいそうだから家族に迎えたいと思われるよりも、カワイイから、こんなにすてきだから家族に迎えたいと思ってほしい」

■赤ちゃん猫には2時間おきにミルクを与える

梅田さんには気になる猫がいた。センターから引き取った隻眼の黒猫「ゆん」だ。

【梅田】「引き取った時から片目が見えなかった。風邪で目がつぶれたんだと思います。当初は片目の猫や片足の猫をカフェに入れていいものかどうか悩みました。店に来た人が気持ちが重くなっちゃうんじゃないなと……。でもこういう子たちを皆に見てほしいと思ったんです」

センターから引き取った黒猫「ゆん」

梅田さんの思いが届いたのか、店は盛況だ。休日ともなると平均して70人~80人の客が訪れ、店に笑顔がこぼれる。

深夜0時すぎ。閉店後の店に梅田さんの姿があった。母親のいない赤ちゃん猫に2時間おきにミルクをやるためだった。一通り仕事が終わるとそのまま床にごろり。猫たちと共に、店で寝泊まりをするのもいつものことだ。

赤ちゃん猫に2時間おきにミルクを飲ませる

■猫だけがそばにいてくれた子供時代

思えば、幼いころから常に猫と暮らして来たという梅田さん。両親の関係がうまくいかず、ひとりっ子だった彼のそばにいてくれたのは猫だけだったそうだ。

【梅田】「赤ちゃんの僕がギャーギャー泣いてると、猫がそばにきておっぱいあげておとなしくさせてたらしいんですね。それぐらいずっと猫がいる環境で育ちました」

勤めていた会社を辞め、保護猫カフェ「ねこかつ」を開いたのは2013年のこと。物件探しからリフォームまで全て1人で行い開店にこぎつけた。店名には、「就活」や「婚活」のように、「猫活(猫の保護活動)」という言葉が一般的になってほしいという願いが込められている。

■猫の「事情」は包み隠さず話す

カフェでの活動に加えて、梅田さんは、百貨店やデパート、ホームセンターなど、これまで考えられなかったような場所や企業を巻き込んだ、国内最大級の保護猫の譲渡会も行っている。

この日の会場は北欧家具量販店のイケア。休日には若いファミリー層が集まるという点に目をつけたという。1匹でも多くの猫に家族ができるように、猫カフェやシェルターの猫、外で保護された猫も含めおよそ40匹が集められた。

【梅田】「ご高齢の方がもう飼いきれないと言うので茨城のセンターに入りました」

梅田さんは、訪れる人たちへ、猫の“事情”を包み隠さず話すようにしている。その上で、譲渡が決まれば、かかった医療費だけをもらう。

■猫と同時に人間が幸せになればいい

新しい飼い主が決まり実際に猫を譲渡する時は、どんなに遠くても自ら飼い主のもとへ届けるようにしている。

この日はあの隻眼の黒猫、ゆんが新しい飼い主のもとへ行く。譲渡には2週間のお試し期間を設けており、猫との「相性」を確認できるようにしている。

【梅田】「よろしくお願いします」

実はゆん、一度引き取り手の家とうまくいかずに戻って来た経験がある。この日も、ケージから出した途端、家具の裏側に逃げ込んでしまった。

【新たな飼い主】「怖いのかな……」

新しい飼い主は、ゆんが片目なことを気にしないのだろうか。

【飼い主】「むしろ片目が不自由なのに一生懸命生きているってところに勇気をもらって感動したんです。もともと黒くてかわいい子だなと思ってたんですけどね」

2週間後、すっかり新しい家になじんだ、ゆんの写真が届いた。新たに「いろり」と命名されたそうだ。いろりは周りをあたたかくする。家族の願いが込められた名前だった。

【梅田】「当然、猫の幸せを願っての活動なのですが、同時に人間が幸せになっていただければこれ以上のことはないと思ってやっています」

さて、この日は生後2カ月の子猫たちがカフェデビュー。すっかり一人前だ。救った猫たちが、今日も誰かの心を救っていく。

生後2カ月の子猫たちがカフェデビューした

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「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。MBS動画イズムで無料見逃し配信中。過去の放送はこちら。

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梅田達也(うめだ・たつや)
保護猫カフェ店主
1972年東京生まれ。子どもの頃から大の猫好きで、小学校の作文では「大きくなったら保健所にいる猫を救いたい」と書いていた。明治大学法学部を卒業後、外資系の流通企業に就職。2011年に退職し、2013年保護猫カフェ「ねこかつ」をオープン。現在、埼玉県川越市とさいたま市の2店舗で料金は1時間1000円。平日の客は20人ほどだが休日には70人~80人の客が訪れる。猫の世話や相談に追われて気づけば深夜になりそのまま店で眠ってしまうことも多いという46歳。

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(「情熱大陸」(毎日放送) 画像提供=毎日放送)

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