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交通事故で"弁護士なし"は1000万損する

プレジデントオンライン / 2019年6月29日 11時15分

▼治療、休業、慰謝料……すべてにおいて大きな差が

■交通事故

交通事故に遭った際に弁護士を呼ぶ人はわずか10%だといわれているが、弁護士をつけるかつけないかで損害賠償を受けられる金額が大幅に変わる。なぜなら、弁護士をつければ見落としがちな損害賠償金をくまなく申請できるうえ、保険会社との交渉もスムーズだからだ。

青木弁護士は、「分岐点は通院開始の時点で弁護士に依頼するかどうか」だと話す。後遺症認定のためには半年間通院することが目安となっており、早めに弁護士をつけてその事実を知っておかなければならない。

では、具体的にどれくらいの金額の差が生じるのか、図のようなシミュレーションを行った。

交通事故被害に遭った際の損害賠償金を、弁護士がいる場合といない場合とで1つずつ検証していこう。

■弁護士なしでは治療が安くなる?

まずは「入通院慰謝料」。これは、その名の通り入通院の精神的苦痛に対する賠償金で、傷害の「程度」だけではなく通院の「長さと頻度」も加味して決まる。そのため、通院開始時から弁護士のアドバイスが必要になるので、この観点からも通院開始時から弁護士をつけるのが重要といえる。

入通院慰謝料の算定基準は3つあり、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の順に額は大きくなっていく。弁護士を通じて交渉を行うと、保険会社は裁判で多額の費用がかかるのを避けるため、多少高額になっても裁判基準を適用する傾向がある。この男性のケースでは、弁護士ありの場合、裁判基準で124万円前後の請求になるケースが多いが、弁護士なしの場合は任意保険基準が適用され、裁判基準の6~7割程度となりがちだ。

「治療費」は弁護士の有無で保険会社からの損害賠償金額が変わることはないが、弁護士なしの場合だと自由診療が敬遠されるため、十分な治療が受けづらくなる可能性がある。

対して、弁護士がいる場合、弁護士が保険会社に1本電話を入れるだけで「一括対応」をしてもらいやすくなる。加害者側の保険会社が医療機関に直接治療費を支払うので、被害者は病院の窓口でお金を払う必要がない。さらに、弁護士が交渉に入ることで、自由診療のもと、質の高い治療を受けやすくなるというメリットも。

■事故後に出勤するとお金がもらえない!

続いて、「休業損害」。これは、事故で仕事を休むことで発生する損害に対する賠償金である。事故前3カ月分の月収を日数で割って日収を計算し、それに休業日数をかけることで算出する。年収800万円の男性が右脚骨折で仕事を60日休む場合、休業損害で132万円が支払われる。しかし青木弁護士によれば、計算が煩雑なため、被害者は賠償金の金額がわからず、弁護士をつけない被害者が請求を諦め、出勤してしまうケースもあるという。

そして事故後には、「後遺症慰謝料」を請求する手続き、後遺障害等級認定申請が必要だ。まず、弁護士が医院に「後遺障害診断書」の発行を依頼し、それを損害保険料率算出機構に提出する。すると後遺障害の程度が認定され、給付される金額が決まる。このケースだと脚の関節に機能障害が残る12級7号に該当する可能性があり、裁判基準で290万円が支払われるが、無申請なら、もちろん支払いはない。

また申請しても弁護士がついていない場合、医師とのコミュニケーションがうまくいかず、本来認定されるはずの等級で認定されないケースもある。この場合、下がった等級をベースにして慰謝料が計算されるため、今回のケースでは14級9号の慰謝料、110万円になってしまう可能性がある。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kadmy)

最後は「後遺症逸失利益」。これは、後遺症のせいで減るであろう将来の収入分を請求するものである。

このケースでは、例えば右脚骨折の後遺症で歩く速度が落ちて、営業先を回るのに支障をきたし、商談の機会を逃すといったものだ。この男性が今後17年働く場合、損害賠償額は1200万円前後となるが、こちらも個人で請求した場合は2年程度の認定にとどまってしまい、約36万円の支払いしか得られないこともあるという。

以上が交通事故被害に遭った際の試算だが、弁護士がつくと損害賠償金が増額し、「次に何をすべきなのか」が明確になり、賠償金を得る準備がしやすくなることがわかる。

そして気になる弁護士費用は、被害者が自動車保険の弁護士費用特約に入っていた場合、保険会社から支払われるため費用はかからない。

仮に特約未加入の場合は、賠償金の10~20%程度が相場となる(編集部調べ)。今回の場合、約174万円がかかる(10%で計算)が、その分を差し引いても得られる金額は1572万円。

弁護士をつけなかった場合は232万円しかもらえないため、じつに1340万円も手取りが増える計算だ。これが、「交通事故は無料で弁護士が呼べる」からくりだが、無料どころか大きなお釣りが来るのである。

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青木健悟
第一東京弁護士会所属。相続や交通事故のほか、離婚問題や少年事件などにも注力する。英語のほかタイ語にも明るく、外国人関連の案件にも強い。
 

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(ライター 万亀 すぱえ 写真=iStock.com)

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