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ラーメン二郎店主も参加「三田会」の正体

プレジデントオンライン / 2019年6月17日 9時15分

『プレジデントFamily』2019夏号の特集は「わが子を慶應に入れる」。その中で「慶應連合三田会大会」(写真は2018年度の冊子)の内容も紹介。

慶應義塾大学の卒業生が集う同窓会「三田会」。その規模とネットワークは他大を圧倒している。特に年1回開催の「慶應連合三田会大会」は数万人が集まり、複数の高級車が当たる抽選会が行われる。そこには多くの慶應生に愛される「ラーメン二郎」店主も参加するという――。

■慶應義塾大学の巨大同窓会「三田会」とは何か

早稲田大学と並ぶ私学の雄・慶應義塾大学。その卒業生、つまり同窓会の組織は「三田会」と呼ばれる。国公立であれ、私立であれ、ほとんどの大学には同窓会組織があるが、慶應のそれは「別格」だといわれる。

三田会とはいったいどんな組織なのか。三田会関連の書籍を執筆してきたジャーナリストの田中幾太郎さんはこう話す。

「慶應の学生は『塾生』と呼ばれますが、卒業すると自動的に『塾員』『三田会員』となります。ひとくちに三田会といっても、その種類はさまざま。卒業年度ごとの集まり(年度三田会)、自分が住む・勤務する地域ごとの集まり(地域三田会)、会社や職種ごとの集まり(勤務先・職種三田会)、出身学部のゼミや所属した部活ごとの集まり、主に駐在員などが集まる海外支部といったカテゴリーがあり、三田会の数は世界中に全部で900以上もあります。会費は基本的にかかりませんが、一部徴収するケースもあります。それぞれが主催する会合などへの登録・参加は各OB・OGの自由ですが、複数の三田会に所属している人も少なくありません」

他大学ではこうした同窓会組織は形骸化することも多いが、各三田会の活動はかなり活発だ。それぞれの会によって異なるが、新年会やクリスマス会など年に数回の定例会で飲食や余興とともに親睦を深めるという形が多い。

■「ラーメン二郎」店主が参加した「連合三田会」がヤバい

中でも年に1回、10月に日吉キャンパスで開かれる「慶應連合三田会大会」は最大規模の三田会イベントだ。入場者が毎年数万人にもなる、塾員のための盛大な「お祭り」である。

塾長をはじめ、OB・OGの政財界の要人、芸能人も参加し、ライブや出店、講演会などでにぎわう。

また参加者は慶應出身者に限らない。たとえば2016年には三田キャンパスそばにある「ラーメン二郎」三田本店・店主の山田拓美さんのトークショーが行われた。山田さんは慶應義塾大学の卒業生ではない。なお慶應には卒業生からの推薦があれば「塾員」になることができ、山田さんは2018年度より塾員にもなっている。

昨年度の「慶應連合三田会大会」の景品例。『プレジデントFamily』2019夏号より。

さらに連合三田会を象徴するのが、「福引抽選会」の景品の豪華さだ。2018年の景品は高級車(メルセデスベンツなど)、高級時計、真珠のアクセサリーや160万円相当の旅行券などだった。

たくさんの企業や個人による協賛金やチケット収入を合わせると、運営費用は数億円に上るとみられている。それを切り盛りするのは広告代理店などではなく、ボランティアの塾員だ。どの塾員も多忙な仕事の中、手弁当で臨んでいるという。

■「三田会」を通じて慶應OBは人脈をどんどん広げる

三田会のメリットとして最も大きいのは人のネットワークが広がることだろう。

「さまざまな年代の卒業生と知り合い、ざっくばらんに語り合うことで、結果的に情報交換ができ、人脈がぐんと広がります。同じ塾員という信頼感や安心感があり、警戒感のようなものを抱きにくいです。そのためか、自然とビジネスのお付き合いに発展することも少なくありません」

そう語るのは、1990年度に大学の経済学部を卒業したタチバナ産業社長の野原将彦さん。卒業年度の「1990年三田会」(愛称・キューマル三田会)と、会社がある東京都台東区の「台東三田会」などに参加している。

三田会や連合三田会で知り合った塾員同士で食事したりゴルフコンペしたりする中で、包装、梱包といった物流加工を手がける本業に加え、今、力を入れている紅茶の企画・販売の仕事にもそのネットワークが役立っているという。

「『連合三田会大会』で幹事を務め、綿密な準備・運営をするのは、大学卒業後、10年目、20年目、30年目、40年目の学年というルールで、なかでも、最も重要な責任を負うのが大卒30年目の代で、20年目の代がそのサポートをします。連合三田会大会には、私は20年目から参加しています。ここで出会った仲間にうちの商品を応援してもらったり、一緒にコラボ商品を作ろうということになったりして、非常にありがたいことです」

また、卒業後25年目の年には、その年の大学の卒業式に招待される仕組みがあり、寄付金を集めるのが通例となっている。野原さんの代は約5200万円も集まったとか。こうした活動で野原さんが何よりも得難かったのは「それぞれの分野で、第一線で活躍している同期と再び会え、刺激を受けられたこと」だという。

ちなみに寄付金の使い先は、経済的に苦しむ学生の奨学金として活用してもらったそうだ。

■企業の採用も、学生も就活も「三田会」で恩恵を得ている

三田会が別格な点はほかにもある。それは就職活動に関してだと田中さんは言う。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/mizoula)

帝国データバンクが昨夏発表した「全国社長出身大学分析」によれば、上場企業社長の出身大学別ランキングで、1位が慶應義塾大学260人、2位が東京大学と早稲田大学の172人だった。田中さんによれば「1999年以降はずっと慶應大がトップ。企業には社長だけでなく慶應大卒の有能なビジネスパーソンが数多く存在し、こうした企業内の慶應閥(三田会)は強力な力を発揮しています」という。

その力は、採用時にも働き、慶應大卒の学生は他大の学生に比べ優遇される場面も多いそうだ。

「2000年代前半の就職氷河期には、就活に大苦戦している自分のゼミの学生を見かねた担当教授が三田会を通じて相談したことで、一度落ちた企業に再挑戦でき、内定をもらったといった事例もありました。一方、売り手市場の現在は、企業側がさまざまな三田会の関係者を通じて、有能な慶應大の就活生を囲い込み、青田買いしてしまおうという動きがあるようです」(田中さん)

企業も学生も、上手に三田会のネットワークの恩恵を互いに享受しているというわけだ。

■三井物産、三菱商事に入社する学生の出身校が慶應断トツのワケ

『プレジデント』(2018年10月1日号)によれば、「18年春に大手商社やメガバンクなどに入社した社員の出身大学で1、2位を占めたのは主に早慶」で、とりわけ三井物産、三菱商事など日本を代表する商社では慶應が断トツだった。

これは、「かつて慶應創立者・福澤諭吉の弟子たちが三井、三菱といった財閥に入り、積極的に慶應大出身者を雇い入れた結果、慶應閥が組織されたという経緯がある」(田中さん)ことが関係しているとみられる。

100年以上も続いているこうした大企業と慶應の絆は、この先ますます太くなるようにも思えてくる。今後、就職事情が悪化したとしても慶應卒というのは就活市場で大きな武器になるのだ。

(フリーランス編集者/ライター 大塚 常好 写真=iStock.com)

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