日本の女性活躍を阻む真の元凶5つ
プレジデントオンライン / 2019年6月24日 6時15分
■その1:男性側に意識改革を求める
まずは、前回の記事でお話ししたように「男性側に意識改革を求める」こと。アイスランド女性のように「仕事・家事・育児のストライキ」を断行し、仕事を満足にさせてもらえないフラストレーションや、一瞬たりとも気が抜けない家事・育児の大変さなどを、「女性はラクでいいな」と思っている男性に共感させましょう。
■その2:「会社にとっての当たり前」を改めてもらう
2019年4月の「働き方改革関連法」施行により、多くの企業で残業や定時帰宅に対する意識が変わりつつありますが、いっそう仕事を拘束時間ではなく「成果」で評価してもらうには、まず給与は「職務給」(仕事の成果だけで賃金決定)を基本としたうえで、勤務形態の種類を増やす必要があります。
つまり従来型の「正社員が無理なら、パートか派遣」ではなく、「正社員で働ける形」を増やすのです。例えばオランダで導入されている「短時間正社員制度」、または「フレックスタイム制の柔軟活用」「テレワーク(在宅勤務)」などが考えられます。これらと職務給が結びつけば、男女間の賃金格差は大幅に縮小します。
想像力と共感能力が欠如した者に共感させるには、無理やり「体験」させ「学習させる」ことが有効です。
■その3:第3号被保険者をなくす
第3号被保険者は、どう考えても“専業主婦製造機”。つまり「専業主婦になるなら年金あげる。だから自立せず、サラリーマンである夫を支えなさい」という制度です。ある意味「お金で因果を含められている」わけですから、この制度があるうちは「女は家事・育児に専念しろ」という社会的圧力は消えませんし、何より女性の「潜在的な依存心の源」になります。
私でも思いますよ。「いいなー、女性は。いざとなったら誰かと結婚して専業主婦になりさえすれば、死なない制度があるんだから」って。これ、確実に女性の自立心をスポイルする制度です。
ならば、こんな制度、なくしましょう。お尻に火がつかない限り、自立心も制度改革を求める声も、本気では盛り上がってはきません。今の日本の労働力不足などの状況を考えたら、年金をバラまいて女性という貴重な労働力を主婦にしばりつけている場合ではないです。
■その4:賃金面における「成果主義」「女性管理職増加」の徹底
偉そうな男性の心の支えになっているのが「男のほうが給料は高く、社内での地位が高い」という事実です。
男性の多くは、賃金と肩書で女性に負けると、コンプレックスを激しくえぐられます。なぜでしょうね。これは男尊女卑というよりも、過去のトラウマ、つまり中高生の頃、総じて女子に成績面で負けていたことを思い出すせいじゃないですかね。特に「男のほうが仕事はできる!」と叫ぶ男性ほど、学業面でかなわなかった過去のコンプレックスを引きずっているような気がします。
それならば、ラクにしてあげましょう。男女間の賃金格差の是正です。日本は労働基準法で「男女同一賃金」をうたっておきながら、フルタイム従業員の男女間賃金格差ではOECD26カ国で調査した結果、25位でブービーでした。30~40代に「結婚・出産・子育て」で職場を離れ、その後パートや派遣で復職する形だと、どうしても格差は出てしまいます。ですから「賃金面での成果主義と雇用形態の多様さ」は不可欠です。
■その5:政治的に働きかける
女性が働きやすい環境をつくるには、各部署の責任者や役員クラスに多数の女性がいることが不可欠です。具体的には本誌でご提案した「クオータ制の法制化」です。
クオータ制とは、社会の人数比に合わせて、議員の一定割合を女性にする制度ですが、1970年代にノルウェーで始まり、北欧諸国へ広まって、今や世界の先進国のほとんどでは、何らかの形のクオータ制があります。
政府は「2030(ニイマルサンマル)」(2020年までに指導的地位にいる女性比率を30%以上に)を目標に掲げていますが、2018年現在、全国の企業で女性管理職がいない企業は48.4%にものぼり、女性管理職の割合は平均7.2%、役員は平均9.7%でした。また「管理職30%以上」を達成できている企業に至っては、わずか6.8%でした(18年:帝国データバンク調べ)。
ここまで社内の上層部が男まみれでは、女性の働き方改革など進むはずがありません。今のやり方では、この先何年かかっても、実現なんかできません。ならクオータ制で、強引にルートをこじ開けましょう。これに尽きます。
クオータ制の実現には、女性の政治参加が不可欠です。本気で政策実現を考えるなら、大政党に接近すると早道です。つまり与党か、与党を狙えるほどの野党です。
国会で過半数の議席を持つ与党だけが、法案を可決させる力を持っています。ならば女性が女性だけの政党をつくることは、とても大事です。なぜなら女性党が衆議院議員を数人抱えているだけで、与野党伯仲時には与党にも最大野党にも「女性党と連立するメリット」ができるからです。つまり、どっちにつくかで政権与党を変えられる立場、いわゆる「キャスティングボートを握れる」わけです。
「クオータ制なんか法制化されたら、俺の議席がなくなっちゃうよ」という狭量な与党の男性議員だって、下野(野党に転落すること)の屈辱と比べたら、女性党との連立を選ぶはずです。しかも、小政党が連立政権内で多くを望んでもなかなか受け入れてもらえませんが、要求が1つだけなら、十分実現可能です。
クオータ制以外にも「企業への罰則強化」「法律の見直し」など、政治的に働きかけて変えられることはいろいろあります。そして、これら諸々を実現させたければ、女性国会議員の比率を高めることは不可欠です。
女性のみなさん、本当に自分が望む世の中に変革したければ、選挙の投票には必ず行ってください。女性有権者が全員投票に行けば、必ず世の中は変わりますから。
(代々木ゼミナール公民科講師 蔭山 克秀 写真=iStock.com)
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