マネックス社長の仕事の速度を倍にする法
プレジデントオンライン / 2019年6月23日 6時15分
■朝4時まで悩んで受けた、社長のポスト
最初に社長就任の打診を受けたのは、今年3月です。打ち合わせ中に、4月以降の体制について話す中で松本(現会長)から「社長やらない?」と。私は銀行でキャリアをスタートし、証券業界の経験はそれほど長くないですし、とにかくびっくりしました。しかも、創業者の松本大の後ですからプレッシャーも大きい。「無理です」と言っているうちに次の話題に移ったので、自然に持ち帰って考えることになりました。
私は普段、必ず6、7時間はしっかり寝る方なのですが、さすがにその日はなかなか眠れず、朝4時ごろまでもんもんと悩みました。
結局、「これから会社が大きく成長するうえで、何でも松本頼みではいけない。客観的に会社の将来を考えると、ここで私が引き継いで次につなげていくべきかもしれない」と考え、翌日お引き受けするという返事をしました。
■悩むことに時間をかけない
何事もスピードが重要なので、何か決めるときにも時間をかけないように、できるだけ悩まないようにしています。すべての情報がそろうのを待ってから決めるのでは遅くなってしまう。今は全てのピースが埋まらない状態で、スピーディに判断することが求められていると思います。
普段の仕事の進め方も同じです。若い時は「失敗したくない」「怒られたくない」という気持ちが先に立ち、完璧なものにしたいと一つひとつ時間をかけて悩みながらやっていました。でも、それでは時間がいくらあっても足りません。仕事の効率も上がらない。それで、なるべく悩む時間を減らし、「間違っていてもいいから出しちゃえ」と区切りをつけるようになりました。もちろん、上司にはいっぱい怒られました(笑)。でも、2回同じ間違いを繰り返さなければいいかな、と。それで学んで、次に活かせればいいのですから。
■昔からよく怒られてきた
私は、褒められて伸びるタイプなのですが(笑)、昔からよく怒られてもいます。上司にはとても恵まれていて、その場ではものすごく怒るけれど引きずることがなく、怒り終わるとすぐに切り替えて「さあ、飲みに行こうか」と言うような方ばかりでした。
フィードバックはとても大切だと思います。私自身が、いいことも悪いこともその場で指摘してほしいと思うほうなので、人に対してもそうしています。しばらく経ってから「あの時はこういうところが良くなかった」と言っても、改善につなげにくいということもあります。
今は、ほかの人が言いにくいような、厳しいことも言わなくてはいけない立場になりました。お客さまは、私たちのサービスについて何か気になることがあっても、直接言ってくださることはありません。おそらく何も言わず、ほかのサービスに移ってしまう。だからこそ、私が言うべきことをきちんと言わなくてはと思っています。
■社長になっても、アクティブでい続ける
社長に就任して2カ月になりますが、仕事の仕方もプライベートの過ごし方も、あまり変わっていません。休日はほぼ趣味に使っていて、平日よりも早起きすることも多いくらい。以前は週末のゴルフに寝坊するのが怖くて、ゴルフウエアを着たまま寝たこともあります。家で過ごすことはほとんどなくて、「家は寝に帰るところ」になっています。
![](https://president.jp/mwimgs/3/a/-/img_3a0b38278bee23731570fd42bae5ef7a109258.jpg)
土日はお客さまにお越しいただくイベントがあることも多く、社長として参加する機会が増えてきました。お客さまと接するのは楽しいので、今後もこのようなイベントにも積極的に参加するつもりです。
平日の夜は、友達と食事に行くことも多いです。昔は、翌日二日酔いで出社することもありました。最近は、回復に時間がかかるようになったので、飲み過ぎないようにしていますし、立場を考えなくてはと意識しています。
■百名山の制覇を目指す
ゴルフ、登山、ランニング、ワインと、趣味は多いですが、どれも特別なきかっけがあったわけではないんです。ゴルフは、銀行員だったときに周りの人の影響で始めましたし、登山は友達に誘われたから。ランニングは、はやっていたので「走ることの何がおもしろいんだろう?」と関心を持ったことがきっかけです。ワインエキスパートの資格は、もともと飲み会の場が好きで、ワインを選んだり人にお薦めしたりできるようになりたいと思って取りました。
好奇心が旺盛なのか、誘われたら何でもやってみます。そしてやると決めたら、ゴールを設定してある程度のところまでは頑張ります。ワインエキスパートの資格もそうですし、登山は「百名山」の制覇を目指しています。あと15年くらいかかる計算ですが、達成したら、またほかのことをやりたくなるんだろうなと思います。
■プライベートが充実すると仕事もうまく回る
特に隠しているわけではないのですが、趣味の場を仕事の延長にしたくないので、あまり仕事の話はしていません。仕事の話をしなくても、ほかに楽しい話題はたくさんありますし。社長に就任して、メディアに取り上げられたとき、ワインの仲間からは「そんな仕事をしていたんだ!」と驚かれたほどです。
プライベートが充実しているほうが、仕事もうまく回るという実感があります。いきいきした、ポジティブな雰囲気は周りにも伝播します。影響を与える範囲が大きい立場になったのでなおさらです。
それに、仕事と関係のない趣味を通じた友達と話すと、「そういう考え方、感じ方があったのか」とはっとすることも多いですし、きちんと休んでリフレッシュすると思考の幅も広がります。仕事にも活きるので、遊びと仕事は相乗効果があると思います。
■「私の」ではなく「私たちの」マネックスを作りたい
マネックス証券には役員の部屋がありません。もちろん社長も例外ではないので、私はいつもオフィス中を歩いて「昨日こんなおもしろいことがあってね」と、周りの人に話しかけたりしています。相手は聞いているかわかりませんが(笑)。私は声が大きいので、独り言を言ったつもりでも「清明さん、今の独り言じゃないですよね?」と言われたりしています。社長になったからといって、パーソナリティーは変えられるものではありませんね。
わからないことがあれば、すぐに自分から聞きに行きます。何かあればすぐに集まって話したり、便利なチャットツールを用いて常にコミュニケーションをとるようにしています。
私は「ここに行こう」と旗を立てて「ついて来い!」とみんなをひっぱるタイプではありません。「清明の考える」「私が考える」マネックスを作るのではなく、みんなで考えて「私たちの」マネックスを作っていきたい。私の役割は、みんなの考えをつぶすことなく引き出すことだと思っています。
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マネックス証券 社長
2001年、京都大学卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。06年MKSパートナーズ、09年マネックス・ハンブレクト入社。11年、同社社長。13年グループ本社に転籍し、執行役員。16年に執行役、18年に常務執行役。19年より現職。
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(マネックス証券 社長 清明 祐子)
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