バーゲンで大損する人の"心理的ワナ"3つ

プレジデントオンライン / 2019年6月24日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TommL)

もうすぐ夏のバーゲンが始まる時期になりました。ボーナス支給とも重なり、誰もが心ときめく季節といえるでしょう。ところが気をつけないとバーゲンセールには実に周到な心の罠が仕掛けられているのです。そこで今回は、このバーゲンセールについて考えてみたいと思います。

■なぜバーゲンをやるのか

そもそもバーゲンセールとは、一体どういう目的でおこなうのでしょうか? 言うまでもなく、その第一の目的は、商品の在庫をさばくことです。洋服の場合、ファッション性の高い流行の品物については、製品を作るための企画の段階から、実際に生産し、販売するまではとても時間がかかると言われています。ところが、それを販売する期間は限られていて短いのです。そこで、商品の入れ替えがどんどん早くなり、どれぐらい売れるかという予測が難しくなっています。逆に、売れて品物がなくなってしまうと売り上げの機会を失ってしまいますから、それを恐れてつい過剰に作ってしまうという傾向もあるようです。

以前、NHKの番組でこの問題が取り上げられたことがありました。市場に出回っている衣料品は28億点もありますが、その半分は売れ残り、何とそのうちの一部は新品のまま焼却処分になることもあるそうです。それではまるまる損ですね。値段を下げてでも売れれば、その損を小さくすることはできます。だからバーゲンセールをやるのです。

■日頃のご愛顧に感謝しているわけではない

みなさんの中にはバーゲンセールは日頃のご愛顧に感謝して、お店が損をしてでも安く売ってくれると思っている人がいるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。商売として考えた場合、バーゲンをやることで利益は増えます。なぜなら焼却処分をしてしまうぐらいなら、少しでも売れて現金が入ってくる方が良いにきまっているからです。

それに売値を下げたとしても仕入れの原価より少しでも上回る価格で売れれば粗利益は出ます。つまりバーゲンセールは儲かるから行なうのです。その証拠にプロ野球のチームが優勝すると関連する百貨店が優勝記念セールをやりますね。ところが優勝しなくても「応援感謝セール」というのをやります。要は何でもいいから理由を見つけて、バーゲンセールをやりたいのです。なぜならバーゲンはお店にとって儲かるからです。

■値札の書き換えにだまされてはいけない

そんなバーゲンセールに潜む心理的な罠、その一つが「値札の書き換え」です。バーゲンセールの場合、全店3割引とか50%OFFといった札があちこちにぶら下がっています。それに加えて、実際の商品を見ると5万円という値段を線で消して2万9800円といった具合に新しい値段が書き加えられていることもあります。率で言われるよりも実際の金額で示された方が、インパクトが強いからです。しかも3万円というのと2万9800円とではたった200円しか違わなくても大台が違う分、安くなっているという印象が強くなります。

それに、もし元の値段の5万円が本当の値段でなかったとしたら? つまり元々3万円程度のものであったものが、値引き率を大きく見せるためにわざと5万円と書いて線で消してあったとしたらどうでしょう? バーゲンが始まる前の値段を覚えている人でなければ、まずそのことに気付かないでしょう。顧客を勧誘するために実際の販売価格と異なる表示をすることは「不当表示」といって、景品表示法で禁止されていますから、そんなことは無いと思いますが、ひょっとしたら悪質なお店では行われているかもしれません。

■「アンカリング効果」を使ったワナ

行動経済学では、「アンカリング効果」というのがあります。アンカーというのは船のイカリのことですが、そのイカリを下ろすことをアンカリングと言います。この場合、最初に示されている値段がアンカーになり、判断の基準値となります。その基準値よりも大幅に低く表示されることで、お得感が増してくるという仕掛けです。

もちろん本当に値段を下げているのであれば、消費者にとってはありがたいのですが、さきほどのように実際よりもわざと高く表示したものを大きく割引しているかのように見せる違法行為には注意が必要です。また、アンカリング効果を使ったやり方には別な方法もあります。それが二つ目のお話、「セール対象外商品」の存在です。

■「セール対象外商品」をつくる意図

バーゲンセールをやっているお店に行くと、商品の陳列棚のところの一角に「セール対象外商品」というコーナーを作っている場合があります。それもしばしば、よく目立つところにおいてあるのです。でも考えてみるとこのセール対象外商品というのは不思議な存在です。そもそも買いに来るお客さんはほとんどがバーゲンで値段が下がったものを探しに来ているわけですから、そんな時にわざわざ定価で値下げしていない商品を買うことはあまりないでしょう。

それに、前にもお話したようにバーゲンセールというのは少しでも商品の在庫を減らして、お店の損失を少なくするためにやるわけですから、お店にはできるだけたくさん売れ残った商品を並べようとするはずです。にもかかわらず、そんな貴重な限られたお店のスペースに、どうしてそれほど売れるとは思えない、定価の「セール対象外商品」を置いているのか? 私はここにもアンカリング効果の狙いがあるのではないかと考えています。

それは、同じ店の中に定価の商品と値下げした商品を並べておくことで値下げされた商品のお得感が出てくるからです。もちろんセール対象外商品は新製品ですから値打ちがあるので定価だということは誰もが理解しています。しかしながら、数カ月遅れ程度であるのなら、そんなに値打ちが違うことはないでしょう。それなら値段の安い方が良いと考えるのは自然です。「あ、セール対象外に比べるとこんなに安いんだ!」といって購買意欲が刺激される可能性が高まることも考えられます。

■いつまでたっても閉店しない閉店セール

次によくあるのが「閉店セール」です。それも「いつまでたっても閉店しない閉店セール」というのを見かけたことがありませんか(笑)。以前、ある大学で消費問題を研究している学生さんたちのゼミで「閉店セール」について調査をしたことがありました。都内で閉店セールをやっている9つの店を半年にわたって調査したところ、4つの店は実際に閉店しましたが残りの5つは閉店していなかったというのです。

なぜそんなことになったのかというと、実は閉店セールといっても2つのパターンがあるからです。完全に廃業してしまう場合とお店の改装のために一時閉店するという場合です。「閉店セール」とうたいながら、閉店しないお店というのは改装のために閉店したということだったのでしょうね。実際、お店の改装のために閉店する場合では、短い時はたった1日しか閉店しないということもあるそうなのです。これなら単なる定休日と同じです。本当に閉店したのかどうか気付かない場合だってありますよね。

結局、多くの人が「閉店」という言葉で連想するのは「廃業」に限りなく近いでしょうから、ほとんど“たたき売り”みたいな安い値段になっているはずだ、というイメージを持つのでしょう。お店も当然、それを狙っていると思います。

■バーゲンのときこそ、気を引き締めて

ここまでバーゲンセールについて考えてみましたが、言うまでもなく、バーゲンセールそのものが悪いというわけではありません。やはりバーゲンという言葉を聞くと心がときめくのはごく自然なことですよね。でもそんな心ときめくバーゲンだからこそ、気持ちが高揚しているからこそ、なかなか冷静に判断できないこともあります。

バーゲンセールにはそんな高揚した気持ちで買い物をする人の購買意欲をさらにそそるような仕掛けがたくさんあるということは知っておいた方がいいでしょう。

(経済コラムニスト 大江 英樹 写真=iStock.com)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング