交通事故で"保険会社任せ"だと損するワケ
プレジデントオンライン / 2019年7月1日 9時15分
■「弁護士に頼んだら高くつくのでは……」
法的な問題に巻き込まれたとき「弁護士に頼んだら高くつくのでは……」と、二の足を踏んでしまう方が多いのではないでしょうか。
まず弁護士費用には、図のような種類があります。法律相談料は、30分5000円程度が相場ですが、最近では初回相談無料にしている弁護士事務所も数多く存在します。また「法テラス」(日本司法支援センター)という機関を経由して申し込むと、収入が一定以下の場合、全国各地の法テラス地方事務所にて弁護士の無料相談が受けられます。法テラスと契約している弁護士であれば、その人の事務所に直接連絡し相談しても無料になります。
そのほかに、着手金、報酬金、日当、手数料、実費があります。このうち安い弁護士を探すうえでポイントとなるのが着手金と報酬金です。着手金とは、弁護士に何らかの事件解決を依頼した際にかかる最初の費用で、報酬金はその事件が解決したときに支払う費用です。事件によって相場は異なりますが、この2つの合計を複数の事務所間で比べることで安いかどうかを判断することができます。
2004年3月末に弁護士会で定められた報酬基準が撤廃されたため、現在は事務所ごとに大きく異なる料金体系をとっています。案件によっては事務所ごとにかかる費用が100万円単位で変わることもありますので、いくつかの事務所に無料相談をして、見積もりをとって比較するとよいでしょう。
■裁判が行われる地元の弁護士に依頼すると安く済む
費用を安くするには、弁護士が出張した際に発生する日当を抑えることも大切です。日当は、遠方の裁判所や現場検証などに弁護士が出向いたときに請求されます。半日なら1万~3万円、1日なら3万~5万円程度が相場で、交通費も合わせるとかなり大きな金額になります。日当を削減するには、裁判が行われる地元の弁護士に依頼するのがよいでしょう。
無料法律相談を受け付けている事務所でも、30分~1時間程度の時間制限を設けていて、それを超えると延長料金がかかるところが多くあります。それゆえ、弁護士への相談の前に質問したいことや不安に思っていることを書き出しておいて、短時間で具体的に質問できる準備をしておくとよいでしょう。
相談内容についての簡単な時系列表や、関係者の相関図なども手書きでよいので用意しておくと、話がすぐに伝わるはずです。また弁護士は相談を受けながら勝てるかどうかを考えていますので、相談前に証拠を集めておくこともお勧めします。
対面での相談はよい弁護士を選ぶうえでも必須です。弁護士選びで何より重要なのは、依頼者に対してどれだけ親身になってくれるかだと私は考えています。弁護士に相談した案件が解決するまでには、数カ月~数年を要することもあります。長い間、深くつきあう可能性がありますから信頼できる人を選ぶことが望ましいと言えます。
■事務所のウェブサイトを読み込むことが有効
もう1つ重要なポイントは、自分が相談する案件について、その弁護士に確かなスキルと経験があるかということです。いくら親身になってくれる弁護士でも、その分野について知識と経験がなければ、最適な解決に導くことはできません。法の解釈は時代によっても変化しますので、最新の判例や法律について法律雑誌や論文、本や研究会などでしっかりと調べていない弁護士は、時代遅れの判断をしたり、本来得られるべき権利を見過ごしてしまったりする可能性があります。
弁護士のスキルや経験を見極める手段としては、その事務所のウェブサイトを読み込むことが有効です。弁護士自身がサイトに付随したブログなどで、自分が担当した案件の事例について記載していれば、その分野について詳しいという判断材料になります。
一方で最近は「離婚」「交通事故」などの検索キーワードで弁護士を探す人が多いことから、サイトを複数立ち上げ、実際にはそれほどの実績がないのに、サイトだけ充実させて仕事をとろうとする事務所もあり、ネットの情報を鵜呑みにするのも危険です。
■「弁護士保険」に加入するのも有効な手
弁護士に頼むべきか否か、その判断に迷うことも多いと思いますが、私は法的なトラブルなどに関することはなんでも、できるだけ早く相談することをお勧めします。
例えば対人の自動車事故(保険会社が相手のケース)ならば、弁護士が間に入るだけで、賠償金や慰謝料の金額がほぼ確実に上がります。それは保険会社が定めている支払額の基準と、判例などに基づく弁護士基準が大きく違うからです。「むちうち」「頚椎捻挫」といった後遺障害の慰謝料も、保険会社基準と弁護士基準では2~3倍は違いますので、弁護士を入れるメリットは大いにあります。
また会社との未払い賃金を巡る交渉なども、確実に弁護士を入れるべきケースと言えます。これは最近増えている医療過誤の事件や、介護現場でのトラブルなども同じです。相手が組織ぐるみで不正を隠蔽しようとしても、弁護士であれば証拠保全の申し立てや情報開示請求を行うことができます。離婚問題や遺産分割に関しても、揉めそうな場合は、早い段階で弁護士に相談しておくことで、有利な証拠を集められるでしょう。
最後に「よい弁護士を安く使う」方法として、近年日本でも広がりを見せている「弁護士保険」に加入するのも有効です。たとえば弁護士保険「Mikata」は、月々2980円の保険料で、着手金や報酬金などの弁護士費用が1事案最高300万円まで補償されます。また無料で弁護士に電話相談できる付帯サービスもあるので、何かがあったときに心強いサポートが得られます。
○:複数の事務所に無料相談をして、見積もりを比較
×:ネットの情報を鵜呑みにし面談なしで事務所を決定
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ライター
元弁護士。京都大学在学中に司法試験に合格後、借金・債務整理・離婚・交通事故・遺産相続など様々な案件を経験。現在は弁護士の経験を活かしライターとして活躍。
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(ライター 福谷 陽子 構成=大越 裕 撮影=熊谷武二)
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