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集合住宅の隣人トラブル対応の法律はない

プレジデントオンライン / 2019年7月24日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Damir Khabirov)

■近隣トラブルは明治時代からある

もし、ご近所トラブルに巻き込まれたら……。「最初から『引っ越しする』という選択肢を持つことが大事です」とあさやけ法律事務所の松岡太一郎弁護士は語る。

松岡弁護士によれば、明治時代にはすでに、隣近所で諍いが起きた際にどうすべきか、ということが民法で定められていた。法律の文言自体はあまり変わることなく、現代に至るまで時代に応じて解釈されている。つまり、近隣トラブルは「日本全国どこでも」「いつの時代でも」必ず起こりうるものなのだ。

松岡弁護士は「隣人トラブルとは、毎日続くことですから、ある日突然爆発してしまう方が多いのです」と説明する。いわゆる「ご近所づきあい」が対策になることもあるが、親しいからこそかえって言い出せないケースも多い。

近隣トラブルは毎日の問題。腹に据えかねて弁護士へ相談する人も後を絶たない。だが、法律で解決できる部分は意外にも小さい。難しいのは、「違法性」を証明することだ。

「実は、アパートやマンションなど、集合住宅内の音には、『騒音』の定義がありません」。戸建て同士ならば『何デシベル以上の音は騒音』と迷惑行為防止条例で定められていることもあるが、集合住宅の場合は適用外だ。

法に頼ろうとすれば、民法709条の「受忍限度」、つまり一般的に我慢(=受忍)できる範囲を超えている、という訴え方となる。証拠を集めて裁判に持ち込んでも、判断を下すのは裁判官だ。

必勝法はない――弁護士が出ることで解決するケースもゼロではないが、法律に頼ることは難しい。「弁護士でなくともできるような話し合いのレベルのことしかできないということも少なくないです」。

弁護士に依頼するよりも手助けとなる方法もあるという。

例えば、外国人との近隣トラブルは、多くの場合、文化や言語の壁が原因だ。ゴミの分別など、日本語や日本のマナー、ルールがわからないがためにトラブルが生じ、迷惑に感じるほうも、言語が異なるためにどう伝えていいかわからない、ということが起こりうる。「初歩的なやり方ですが、近隣外国人の母国語で書いたメモをポストに投函したり、大家に相談するのもひとつの方法です」。

現実問題、証拠を集めて訴訟に持ち込んでも、労力や費用はペイしない可能性が高い。事案にもよるが「2カ月間毎日続いた証拠があって、引っ越し代がようやく出るか」といったところ。

精神的苦痛に対する金銭の支払いはほとんど期待できない。「この国の心の傷の相場は安いです」。

「引っ越しを決めると晴れ晴れとした表情になるクライアントさんは多いです。負けだと思わず、自分の幸せのために引っ越すことを考えましょう」

○:いざこざが辛くなった時点でさっさと引っ越す
×:隣人に負けたくないからとことん闘う

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松岡太一郎
あさやけ法律事務所代表弁護士
東京大学法学部卒業。専修大学法科大学院修了。首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻博士前期課程(MBA)修了。
 

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(梁 観児 写真=iStock.com)

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