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「家を買うなら東京五輪の後」は正しいか

プレジデントオンライン / 2019年6月30日 6時15分

家を買うなら“売るとき”のことも考えて選びましょう。どんな場所にどんな家を買えば、資産として将来有望なのか。購入後の“住み方”も含めて、不動産コンサルタントが教えてくれました。

■不動産市場の“三極化”

Q1.資産価値の落ちない、条件のいい立地とは?

人口が減り、空き家も急増している今の時代。不動産コンサルタントの長嶋修さんによると、不動産市場は“三極化”が進んでいるという。

「都心の一等地や、郊外でも主要駅に近い不動産は価格が上昇。この条件から外れても、比較的利便性の良いエリアの不動産は価格維持、もしくは徐々に下落。利便性の悪いエリアの不動産は底なしに下落しています。よって、価値の落ちにくい不動産が希望なら、駅近はマストです」

昔から駅近物件は人気だが、近年ますますその傾向が顕著だという。

「われわれの統計では、現在、都心7区では、駅から1分離れるごとに中古マンションで価格が1平方メートルあたり約1万8000円値下がりします。5年前に比べて2倍以上。今、一部ブランド街を除き、駅から7分以内の立地でなければ売りづらいというのが不動産業界の常識に。不動産を買うときはこの点を意識すべきです」

■洪水マップなど災害履歴は必ず確認!

加えて注意したいのが災害情報だ。

イラスト=柿崎サラ

「異常気象の深刻化で都心でも浸水のニュースが増えましたが、従来は洪水浸水想定区域の物件でも周辺と比べて極端な価格差はなかった。理由は、災害情報や各種不動産情報が一元管理されていなかったから。ただ、最近、国土交通省がこの問題を解決する『新住宅情報システム』を始動。洪水浸水想定区域が浮き彫りにされつつあり、今後リスクの有無で物件価格に差がつくはずです」

さらに、“活力のある自治体”かどうかも念頭に置くべきだという。

「首長が子育て世帯などの誘致に積極的で、住みやすさを向上させる取り組みをしている自治体がベター。末永く人口流入、税収アップが見込める自治体は衰退しづらく、域内の物件価値も落ちにくいでしょう」

Q2.一戸建て? マンション? どんな家を買えばいい?

マイホーム=ついのすみかではなく、「値上がりしたら売却したい」という意向があるなら、「売りやすさも踏まえて不動産を選ぶ必要がある」と長嶋さんは話す。

「一戸建てでもマンションでも立地さえ良ければ売れますが、どちらかといえばマンションのほうが、より売りやすいかもしれません」

ひと口にマンションと言っても新築を選ぶか中古を選ぶかが悩みどころ。たとえ高額でも、新築か築浅の中古が売りやすそうなものだが、「今後、築年数はあまり関係ない時代になるでしょう」と言う。

特に、最近は好立地マンションの価格が上昇中で、新築はもちろん、中古でも強気の値づけがされている。

「こまめにメンテナンスすれば本来、不動産は100年でも建て替えなしで持ちこたえます。管理状況さえ良ければ中古でも問題なし。そもそも、新築は“新築プレミアム”がついて割高なので、中古も積極的に視野に入れましょう」

■ずさんな管理体制に要注意!

管理状況の良しあしは、そのマンションの長期修繕計画や修繕実績、管理組合の議事録などから垣間見えるが、資料を開示していない場合も。それでも、共用部分が汚れているなど、管理の行き届かなさが目に見えてわかることもしばしばだという。

イラスト=柿崎サラ

また、マンションに住むと毎月徴収される修繕積立金にも注目したい。

「安いほうが負担が少なくてラクだと思いがちですが、少なすぎるとメンテナンスに回すお金が不足して建物が劣化、不動産の資産価値の低下につながります。今後は、修繕計画がずさんで、廃虚化するマンションが増えると考えられます。それを避けるためにも、200円/平方メートルを目安に、修繕積立金をきちんと集めている物件を選びましょう」

なお、新築物件では管理状況を調べる手だてはほぼない。

「廃虚化は、住民のマンション管理に対する無関心に端を発します。新築を買うなら、いっそ管理組合の理事になって、資産価値を維持する活動に取り組むのも手です」

Q3.転売するなら、どんな間取りが有利?

「近年は老若男女を問わず、単身世帯や2人暮らし世帯が多数派。今後もこの傾向はますます強まるはずなので、売りやすいのはそういった人たちのニーズに合致する、コンパクトな物件です」

イラスト=柿崎サラ

長嶋さんいわく、広さの目安はおおむね80平方メートル以内。一方で、ファミリー向けの広い3~4LDKは売りづらくなりそうだとも。

「実際、駅から徒歩5分・70平方メートルの物件と、駅から徒歩15分・100平方メートルの物件では、圧倒的に前者のほうが引き合いは強くなります」

サイズさえクリアすれば、間取りはあまり気にしなくてもいいという。

■マンションなら、リフォームで内部の変更も

「一戸建てだと、耐震性との兼ね合いもあって、間取りの変更が難しいことも多いのですが、マンションの場合は周囲をコンクリートで固めているため、壁などの内部造作を取り払って、大掛かりなリフォームをすることも比較的容易です。ただ、柱や窓などは動かせませんし、水回りの移動もなかなか大変なので、それぞれ望ましい場所に配置されているか、確認しておくといいと思います」

間取り同様、実際に住むことを想定したとき気になるのが、生活していくうちにつく汚れや傷み。売却前提なら、家を汚したり傷つけたりしないように生活しなければいけないのでは? という疑問がわく。

「壁紙は張り替えればいいし、売却前、清掃のプロに徹底的にクリーニングしてもらえばいい。神経質にならず、好きなように住みましょう」

Q4.損をしない買い時はいつ?

ちまたでは「東京オリンピック開催まで不動産価格は上昇し、オリンピック後に下がる」という意見をよく耳にする。しかし、長嶋さんは「会場周辺の湾岸エリアなどを除き、東京オリンピックと不動産の値動きには関連性が薄い」という見方だ。

イラスト=柿崎サラ

「過去の事例だと、先進国ではオリンピックと不動産価格動向があまり連動しておらず、日本も例外ではないでしょう。今、都心部の不動産価格が上昇しているのは、人件費や資材価格の高騰などが主な要因です」

■市場の動向は、考慮しなくてOK

こうした問題は一朝一夕に解決しそうにないため、「オリンピック後に不動産が安くなり、買い時が訪れる」と考えるのは間違い。

「人それぞれ住宅購入を検討するタイミングは異なりますし、物件との出合いも一期一会。ですから、市場の動向にこだわらず、“買いたいときが買い時”と考えましょう」

また、今は消費増税を前に、住宅ローン減税の拡大などの施策が実行され、ローン金利も低水準だ。

「住宅ローンでの住宅購入には追い風の状況です。この先インフレになり、金利上昇の可能性もあるので、低水準の長期固定金利でローンを組むといいでしょう。ただ、なかには当初何年かは低い固定金利で、その後金利が上がるようなタイプもあるので、契約内容はよく確認を」

Q5.確実に売るための策はある?

ここまで長嶋さんに挙げてもらったように、主要駅の駅近7分以内、洪水浸水想定区域を避け、管理状況の良いコンパクトサイズの物件を選択すれば、将来的に買値から価格を落とすことなく売却できる可能性が高くなる。とはいえ、約7戸に1戸の割合で空き家が存在するといわれる今、売却物件の在庫はダブついている状況だ。

「数ある物件の中で、きらりと光る好物件として多くの人に目をつけてもらうためには、まず値づけが大切ですね。高く売れたら御の字と、強気の価格をつけたくなりますが、周辺の同等物件の相場価格を調べて、それに若干上乗せしたくらいの価格を提示するとちょうどいいでしょう。若干というと漠然としていますが、おおむね相場+7%以内、といったところでしょうか」

■内観写真はかなり重要! ホームステージングも手

売却の際は、不動産仲介業者に依頼し、物件の内外の写真を公開することになる。この写真も非常に重要だと長嶋さんは指摘。

「物件を探している人は、内観の写真を通して、その物件での自分たちの生活をイメージするもの。雑然としたありのままの部屋の写真を出すと、心象が悪くなります。薄暗い写真もNG。風通しが良く、開放感のある雰囲気を演出することが重要ですね。壁や床がボロボロだったりするとイメージがガタ落ちなので、あらかじめ壁紙を張り替えたり、床をワックスがけしたりするとベター。それほど手間をかける価値があるくらい、内観写真は重要なんです」

日本ではあまり浸透していないが、海外では物件を売る際、プロのインテリアコーディネーターなどに依頼して、モデルルームのように部屋を飾る「ホームステージング」も当たり前に行われる。日本でも、一部不動産仲介業者がサービスを手掛けているので、覚えておくとよさそうだ。

「ちなみに、最近は買い手の方も勉強されていて、事前にホームインスペクション(住宅診断)をしたいと希望されることも。必要十分なメンテナンスさえしていれば、売り手側がインスペクションをしておく必然性はあまりないので、買い手に希望されたら、快く協力する姿勢を見せることが大切だと思います」

▼将来有望!? 田舎に家を買うという選択

都心の好物件は高すぎる。地方で少し安い不動産を買い、当初は賃貸に出して、いずれ自分が住んでも……といった理想を持つ人も多いのではないか。

イラスト=柿崎サラ

「地方でも人口の流入が増えている自治体は少なからずあります。こうした自治体の不動産は、価値が落ちにくいので狙い目です」と長嶋さんは話す。

人口が増える自治体の多くに共通するのは、本当に子育て世帯に寄り添った支援策を打ち出しているところ。たとえば、埼玉県滑川町(なめがわまち)では、給食費を中学校まで無料にし、医療費を高校まで無償にするなど、手厚いバックアップ体制を整えている。また、群馬県大泉町のように外国人と共生する環境づくりを試みる自治体や、アートなどで町おこしに成功した自治体なども期待値は大。

「ほどほど都会がよければ、地方で今最もホットなのは福岡市。すでに値上がりしていますが、若い40代の市長が頑張っていて、中国や韓国から近いという地の利があるのも魅力です」

不動産は保有するだけでコストがかかる難しい投資対象。しかし、将来性のある地域に物件を持てば、大幅な値上がりも期待できるだろう。

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長嶋 修(ながしま・おさむ)
不動産コンサルタント
業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」の創業者、現会長。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。近著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日経プレミアシリーズ)。

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(元山 夏香 イラスト=柿崎サラ)

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