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経営者が慶應幼稚舎に子供を入れたがる訳

プレジデントオンライン / 2019年6月28日 9時15分

デジタルハーツホールディングス社長の玉塚元一氏(『プレジデントFamily2019夏号』より)

慶應出身の経営者は、わが子も慶應に入れようとする。ユニクロを運営するファーストリテイリングやローソンの社長を歴任し、現在はIT企業の社長を務める玉塚元一氏は、自身が慶應幼稚舎出身であり、さらに3人の子供も幼稚舎から慶應に通う。なぜそこまで母校で学ばせたいのか――。

■「私は16年間慶應で学び、3人の子供も幼稚舎に通っています」

私は幼稚舎から大学まで16年間、一貫教育を受けました。私の3人の子供たちも、みな幼稚舎から慶應義塾に通っています。

福澤諭吉先生は明治維新という日本の夜明け前、咸臨丸に紛れ込むようにして乗り込んで、いち早く近代化した世界を見聞した。能力に応じて人が生き生きと仕事をしている様子を目の当たりにして、ビジョンを持って物事を学び、努力すれば誰でも平等にあらゆる道が開けると強く信じた。

こうした、福澤先生の教えというのは本質的に正しいと思っています。いまだに新鮮だし、今の混沌とした世の中でも通じる原理原則をうたっていると。慶應ではいろいろな場面で教えてもらいました。

慶應の教育は大学よりも高校、高校よりも中学、中学よりも幼稚舎と、生徒の年齢が低くなるほど、福澤先生の教えに対して忠実で「濃い」です。幼稚舎では、修学旅行などで福澤先生ゆかりの地を訪ねたり、毎年2月3日の命日には全員そろってお墓参りをしたりします。この「濃さ」は僕が小学生の頃も、今も多分変わらないでしょう。

「まず獣身を成して、後に人心を養う」と福澤先生は体づくりの大切さも説いています。だから早い段階からきつい山登りをしたり、海を1000m泳いだり、早朝にはだしでランニングしたりします。強い体をつくることに重点が置かれている。運動会もガチですから(笑)。

■ラグビー部では「練習は不可能を可能にす」を学ぶ

幼稚舎では、福澤先生の理念の伝え方は教員に任されているので、それぞれ違います。それぞれの先生が福澤先生を深く研究されていて、それをご自分の教育法に取り入れながら、創意工夫して生徒たちに伝えています。

私は中学からラグビー部に所属しましたが、そこで先輩から教えてもらった「練習は不可能を可能にす」という小泉信三先生の言葉にも大きな影響を受けました。小泉先生は慶應の塾長の一人で大学の体育会(運動部)の発展に寄与され、上皇陛下の教育係を務めたことでも知られています。

『プレジデントFamily2019夏号』の特集は「わが子を慶應に入れる」。

私が所属していた頃の慶應義塾大学のラグビー部は受験のハードルがあり、他大学のように高校で活躍した優秀な選手が集まってくるわけではありませんでした。大学選手権や大学対抗戦で勝つというビジョンを掲げて、ひたすらつらい猛練習をしました。結果、大学4年のときに関東大学対抗戦で優勝できたし、大学選手権でも準優勝した。ビジョンを掲げて努力すれば、巨象だって倒せることを実体験できたわけです。

小学校から「ビジョンを持って努力することの大切さ」を刷り込まれたこと、ラグビーに出合い「練習は不可能を可能にす」を実体験できたことは、私の人生にとってすごく大きな財産になっています。

■慶應での経験がユニクロ&ローソン社長のベースになっている

私はユニクロやローソンをはじめさまざまな企業の経営に携わってきましたが、戦略的に自分のキャリアプランを考えてきたわけではありません。ただ目の前の壁に必死で向き合っていると、「こっちの壁にも向き合ってくれ」と頼まれて、新たな壁に必死になって突き進んでいく。それが7年サイクルぐらいで続いてきた感じです。

今は、ITというこれまでとはまったく違う分野に突き進んで、1から人間関係をつくったり、プログラミング教室に通ったりして必死になって、この新しい「壁」と向き合っています。私は、意思決定の際、チャレンジするリスクよりも、チャレンジしないリスクを考えてしまうタイプです。

それは福澤先生の教えである「学び、努力し、成長し続ける」というモチベーションが根底にあるからだと思います。「学び」がなく、成長が止まる状態が一番嫌なんです。

それからもうひとつ、学生時代に得た糧といえばやはり友人。どの段階から入ってこようが、慶應のカルチャーから巣立った仲間は絆が強い。年代は違っても、DNAを共有している信頼感があります。実際、経済界にいると先輩だらけで、たいていの方とはアクセスできる。

ただ私は群れるのは嫌いだし、出身校も国籍も関係なく、誰とでもオープンに付き合っていますが、それでも理念を共有している慶應の仲間は私にとってスペシャルであることは確かです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/mizoula)

■「慶應に入れたから大丈夫」なんて、そんな甘い時代じゃない

今後、間違いなくグローバル化がさらに進み、テクノロジーの進化もハイピッチになっていくでしょう。そういう変化の時代にあって、独立自尊の精神を持って自ら学び、成長し続けて、最終的に国家に貢献できる人材を輩出するという理念はすばらしい。

経営者の視点で言えば、自分の子供が慶應で学べる機会があるのなら学ばせたい。

ただ「慶應に入れたから大丈夫」なんて、そんな甘い時代じゃないですよ。早い段階で日本の外に飛び出して世界を知ることも大事だし、テクノロジーの基本的な考え方を身につけることも大事だと思う。うちの子たちには、三者三様の形でいいので、やりたいことを見つけチャレンジし、成長して、世の中に貢献してほしい。

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玉塚 元一(たまつか・げんいち)
デジタルハーツホールディングス社長
1962年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、旭硝子(現:AGC)、日本IBMを経て、98年ファーストリテイリング入社。2002年に社長に。05年にリヴァンプを設立し代表取締役に。10年にローソンに入社し社長、会長を歴任。17年6月から現職。

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(デジタルハーツホールディングス社長 玉塚 元一 構成=小川 剛 撮影=市来朋久 写真=iStock.com)

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