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世界一周は中学英語だけでコト足りる理由

プレジデントオンライン / 2019年7月5日 15時15分

俳優の鈴木亮平さん

旅先で外国人と話すには、どんな英語学習をすればいいか。俳優の鈴木亮平氏は「中学英語で十分。なにかを頼むときには、相手の目を見て“May I?”で通じる」という。イーオンの三宅義和社長との対談をお届けしよう――。(第3回)

■中学英語をバカにして実践しない日本人

【三宅義和(イーオン社長)】鈴木さんは昨年2018年、『鈴木亮平の中学英語で世界1周! Feat.スティーブ・ソレイシィ』という本を出されています。英語学習者にとって大変有益な本だと思ったのですが、どういった意図で出版されたのでしょうか?

【鈴木亮平(俳優)】雑誌の『an・an』で連載していたものをまとめたものです。僕としては科目としての英語ではなく、実際に僕が学んできた英語のサバイバル術というか、こういう場面ではこういう表現が便利ですよといったものを紹介しています。それを英語のスペシャリストのソレイシィ先生と一緒にお届けすればいままでにないものができるのではないかなという思いで出版しました。

【三宅】中学英語でなんとかなる、というのがいいですよね。

【鈴木】僕もふだん、外国の方と英語で会話をするとき、中学英語以上のものはあまり使いません。

たとえば飛行機で後ろの席の人に「シートを倒していいですか?」と尋ねる時に、きれいな英語を話そうとすると「席を傾けるからLeanかな。じゃあCan I lean back? かな、Do you mind if I lean the seat? の方がていねいかな」などいろいろ考えてしまいますよね。でも実は相手の目をみて、席を指さしながらMay I? と言うだけで通じるんです。

■実用書は一冊を繰り返し読まないともったいない

【三宅】そうですね。

【鈴木】あとは道に迷ったときにわざわざ「ここに行きたいのですが、どうやったらいけますか?」と丁寧に聞かなくても、とりあえず地図を差し出してWhere am I now? と聞けば場所を教えてくれます。その上でI want to go here.と地図を指差せば目的は達成できますよね。どれも中学英語レベルで、しかも短くてシンプルな文しか使っていません。ですから、読者の方がすでに持たれている知識をもっと活用してほしいという思いはあります。

【三宅】そこがすばらしいと感じました。「中学英語でなんとかなります」と言っても信じない方が多くて、信じないからそれを使う練習をしない。練習をしなければ一向に話せない。せっかくこのようなすてきな本があるのであれば、これを一冊買って繰り返し読んで、どんどん実践投入する方が一人でも増えればなと感じた次第です。

【鈴木】ありがとうございます。そうですね。英語にかかわらずですが、自分に合っていると感じた実用書は1回読むだけではもったいない気がします。とくに英語の決まった言い回しのようなものは、会話の中でスッと出てこないと意味がないですからね。

■初対面の相手に対して覚えておくと便利なフレーズ

イーオン社長の三宅義和氏

【鈴木】最近、時計メーカーさんの仕事でスイスに行って、ディナーパーティーに呼ばれたんです。僕が座ったテーブルは世界各国の女優さんばかりで男性は僕だけ。「うわぁ、これ何しゃべろうかな」と少し焦ったのですが、とりあえず隣の席の女性に話しかけたらチュニジア出身の女優さんだったんです。

【三宅】チュニジアですか?

【鈴木】はい。地中海に面したアフリカ北部の国です。その方も、きっと日本人なら知らないと思ったのか「私はいまエジプトで女優をしていますが生まれはアフリカのチュニジアです。といっても知らないと思いますけど」と謙虚におっしゃって。実は、僕は世界遺産が大好きなのです。その知識を活かして「ああ、チュニジアといえばアルファベットを作ったフェニキア人の土地ですよね。僕もいつかカルタゴに行ってみたいと思っているんです」みたいなことを言ったらその方も驚いていて。

【三宅】それは、驚くでしょうね。

【鈴木】ただ、僕の記憶ちがいであれば、かなり恥ずかしいとも思ったんです。だからそのときは、お決まりのCorrect me if I’m wrong.を使いました。「もし違っていたら言ってね」と。

【三宅】たしかに便利な表現ですね。

【鈴木】覚えておいてよかったなと思いました。

■目についた英語を口に出してみる

【三宅】鈴木さんがいま英語の実力を維持するために意識して取り組まれていることはありますか?

【鈴木】昔は友達とランゲージ・エクスチェンジをしていましたが、最近は時間が取れなくなったのでそういう勉強らしいものはできていません。

ただ、これは人によると思いますが、英語に対してそもそも興味がある方、もしくは英語が自分の興味なり夢の手段になっている方の英語力は落ちづらいと思います。たとえば外国旅行が好きな人なら、街中を歩いていても外国っぽいものや外国語で書かれているものが目につきやすいですよね。

【三宅】鈴木さんは目についた英語を読み上げると本に書かれていますが、それもやはり英語に意識が自然と向くからですか?

【鈴木】そうですね。どうしてもアンテナが立ってしまうので、お店の看板などでも、おそらくは飾りで書いてある英語に目がいってしまって、つづりのまちがいに気づいたりすることはよくあります。

あと、英語で独り言を言うことが多いです。いま思っていることを英語で言うとしたらなにがベストなのだろうかと。とくに抽象的な概念を英語で相手に伝わるように説明するのはすごく難しいことです。ですから、日本で取材を受けるときによく聞かれることに対する答えなどを、外国の記者さんからインタビューされている想定で考えてみるということはよくやります。

【三宅】そういう自主トレを日頃からされているのですね。すばらしいです。

■好きな洋楽を聴きながら口ずさむ

イーオン社長の三宅義和氏(左)と俳優の鈴木亮平氏。スーツ32万5000円~、シャツ5万4000円~(ともにオーダー価格・税抜き)、ネクタイ〔参考商品〕以上すべてジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン)

【三宅】英語でYouTubeをご覧になるのももはや日常ですか?

【鈴木】よく観ています。本当に便利ですよね。自分が興味のある分野のことを楽しく知ることができて、しかも英単語が増やすことができますから。たとえば僕は世界遺産に関する動画をよく観ますが、日本語の教科書や本で仕入れた情報だと固有名詞がカタカナ表記なので、知識としてあっても英語の会話のなかで使えないことがあります。でも、英語の動画を観ていると「あ、あの地名って英語だとこう発音するんだ」ということがわかるので、ものすごく役に立っています。

あとは洋楽が好きなので、好きな曲の歌詞をまるまる覚えて、一緒に口ずさむことは昔からよく行っています。楽しいですし、シャドーイングの練習にもなるので。いまでもつい英語で口が自然と動いてしまうのは、もしかしたらその習慣のせいかもしれません。

■「けんかができる英語」を目指して

【三宅】好きなものから英語を学ぶというのは大変いいことですよね。また、鈴木さんの留学時代のように、必要に迫られる状況に身を置くことが一番の上達方法かもしれません。

【鈴木】絶対にそう思います。僕も大使館の方や日本企業の方など、ビジネスで英語を日常的に使われている方とお会いする機会がよくありますが、帰国子女の方をのぞけば完璧に英語を操られている方はほとんどおられません。でも、伝えたいことを確実に伝えられるし、聞き取れなかったら知ったかぶりをせずにすぐに聞き直しをされます。最後は仕事ができればいいわけですから、それでまったく問題ないのです。

そういう方をみていると、なんというか日本人の英語コンプレックスや「ちゃんとしゃべらないといけない」という先入観のようなものをとうの昔に捨てられている印象があります。それはやはりサバイブする必要に迫られているからなんだろうな、と。

【三宅】たしかにTOEICが500、600点くらいでも、仕事で英語を日常的に使っていらっしゃる方は英語に迫力があります。逆にTOEICで800、900点くらいをとる方でも、英語でけんかしたことがない方などの英語はどうしても迫力に欠けます。

【鈴木】英語でけんかをしたことがあるかどうかはたしかに大きいかもしれないです。ぼくもそこは弱点です。レシートを出してくれないタクシー運転手と戦うくらいのレベルならありますが、ビジネスの現場でハードな交渉をやられている方の英語を聞いていると、発音の良しあしやなどまったく関係なく、素直に「勝てないな」と感じます。

【三宅】日本人のビジネスマンも「けんかできる英語」を目指すという意識が明確になっていれば、習い方もちがってくるかもしれませんね。

【鈴木】本当にそうですね。

■英語そのものが目的だと続かない

【三宅】最後に英語学習者の方へのメッセージをお願いいたします。

三宅 義和『対談(3)!英語は世界を広げる』(プレジデント社)

【鈴木】僕もまだまだ発展途上なので偉そうなことは言えませんが、やはり英語そのものを目的にしてしまうとモチベーションが長続きしない気がしています。あくまでも何か大きな目標に対する手段として捉え直すといいのかなと思います。僕の場合、それは自分の世界を広げることであり、英語を学んできたことによって人生が豊かになっていくことを日々実感しています。

それに手段だと考えると必ずしも完璧を目指す必要はないわけですから、日本語訛りの英語でまったく問題ないと思います。これは自分にも言い聞かせていることですが、大事なことは完璧な英語ではなくても自信を持ってコミュニケーションをとること。英会話のうまい下手は、最終的には姿勢の問題なのかなと思います。

【三宅】今日はどうもありがとうございました。

〔ヘアメイク=宮田 靖士(THYMON Inc.)スタイリスト=徳永 貴士〕

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鈴木 亮平(すずき・りょうへい)
俳優
1983年、兵庫県生まれ。東京外国語大学卒業。英検1級の資格をもつ。2006年日本で初めての水着キャンペーンボーイに選ばれる。同年テレビ朝日系ドラマ『レガッタ』で俳優デビュー。映画『椿三十郎』『カイジ 人生逆転ゲーム』『HK/変態仮面』『海賊とよばれた男』、フジテレビ系ドラマ『メイちゃんの執事』、NHK連続テレビ小説『花子とアン』、NHK大河ドラマ『西郷どん』などに出演。
三宅 義和(みやけ・よしかず)
イーオン代表取締役社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。85年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。

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(イーオン代表取締役社長 三宅 義和、俳優 鈴木 亮平 構成=郷 和貴 撮影=原 貴彦)

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