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AV男優"ラブホに行っても応じなくていい"

プレジデントオンライン / 2019年7月4日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/eopleImages)

デートの後にホテルで2人きりになったら、セックスをしてもいいのか。AV男優の一徹さんは「なしくずしのセックスは避けるべきです。たとえ夫婦であっても、相手から『いいよ』と同意を得なければいけません」と指摘する――。

※本稿は、一徹『セックスのほんとう』(ハフポストブックス/ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■10年後「同意のないセックスが犯罪になる」

先日、『未来のセックス年表 2019-2050年』(坂爪真吾著/SB新書)という本を読みました。その中の「日本人の性 未来予測カレンダー」には「2029年 同意のないセックスが犯罪になる」と書かれていて、どきっとしました。この本に書かれていることは、実は僕も「たぶんそうなるだろうな」と日頃から感じていることが多く、とても興味深く読ませていただきました。

近年、議論の的になっている「性的同意」は今、AV業界でもよく話題になることです。

みなさんが知りたいのは、性的同意などという堅苦しいことではなく、気になる女性や彼女といい雰囲気になった時に、どんなふうにセックスに誘うのか、ということだと思います。けれども、この性的同意は、今後、僕たちが女性とセックスをしようと思った時に避けては通れない話になっていくと思います。

日本で性的同意が話題になったきっかけは、#MeToo(ミートゥー)運動が大きかったのではないかと思います。

MeTooとは、文字通り、「私も」という意味です。この英語にハッシュタグ(#)をつけた#MeTooは、著名な映画プロデューサーの数十年に及ぶセクハラを告発する2017年の記事に発端しています。「私も同じような被害を受けた」という女性たちが、#MeTooというハッシュタグをつけて、世界的なセクハラ告発運動が展開することになりました。日本でも、この#MeToo運動が起こり、女性たちが過去に受けたセクハラを証言しました。

■「あの時、本当は嫌だった」に申し開きができるか

この問題を、まずは僕たちAV業界で振り返ってみたいと思います。#MeTooが世の中に認知される前後、日本のAV業界でも、望まない女優さんの出演強要があったという訴えがありました。

業界では昔から女優さんも男優さんも、必ず事前に契約書を交わすことが義務づけられています。プレイの内容も、事前にちゃんと相談し、これはOK、こっちはNGと、細かく話し合いをしてから作品を撮っています。また、性病検査も男優さん・女優さん共に厳しく義務づけられています。

また、これはあまり知られていないことですが、撮影現場でも、四六時中定点カメラが回っています。これは、スタッフやマネージャーが見ていない場所で、契約以外の行為が行われていないかを監視する目的のためのものです。

僕たちは仕事でセックスをしている身なので、いち早く、この「性的同意」に取り組むことになりましたが、この流れは確実にプライベートなセックスにも及んでくると感じます。

#MeToo運動では、かなり時間のたった過去のセックスに対して性的同意がなかったと訴えるケースが多く見られました。

その時は、その場の雰囲気でなしくずしにセックスできたとしても、数年後「その時、本当は嫌だった」と女性から訴えられた場合、僕たちは「申し開き」ができるでしょうか。最低限のルールとして、僕たちは、これからするいかなるセックスにおいても、女性に強要をしたり、同意なしに行為に及んだりすることを避けなくてはなりません。

とくに大量にお酒を飲ませた後の勢いでのセックスは、決して許されません。性的同意を得られていないと判断されます。

そして性的同意は、初めてセックスする相手に限りません。たとえ結婚している夫婦であっても、セックスを無理強いすると、犯罪になることもありえます。

■世界中で拡散された「紅茶と同意」の例え

ではいったい、何が問題になり、何が同意となるのか、と考えた時に、わかりやすいのが、一時期SNSでも広く拡散された、イギリスの紅茶の例です。

これは、イギリスの警察が2015年に公開した動画で、性的同意についてとてもわかりやすく解説されています。日本語訳されたものもあるので、YouTubeで検索して、ぜひすべての男性に(女性にも)見てもらえたらと思います。

この動画は、性行為の同意を、紅茶にたとえて解説しています。短くまとめると次のような内容となります。(「Tea and Consent」─Thames Valley Police─)

・あなたが誰かに紅茶を淹れても、相手が飲む義務はない。
・「紅茶はいかが?」とあなたが尋ねて「いただきます」と相手が答えたのに、いざあなたが紅茶を出すと「要らない」と言われることがある。その場合でも、相手に紅茶を飲む義務はない。
・相手が酔っていて意識がないときは紅茶を淹れない。意識のない人は紅茶を飲みたいと思わない。
・相手が「紅茶を飲みたい!」と言ったあとに意識がなくなったら、紅茶を飲ませてはいけない。意識不明の人は紅茶を欲しいとは思わない。
・「紅茶を飲みたい!」と言って飲みはじめ、飲み終わる前に意識がなくなったら、紅茶を飲ませてはいけない。
・「紅茶を飲みたい」と先週言っていたとしても、常に紅茶を飲みたいわけではない。
・紅茶と同じようにセックスも相手の同意と承認、納得が必要なのは当然のこと。

■“ホテルで2人きり=同意した”とは限らない

いかがでしょうか。性的同意が、いったいどんなものか、イメージできたのではないでしょうか。僕も、この動画の内容には全面的に賛成です。これはたとえば、デートの後にホテルに行って2人っきりになったからといって、セックスしてもいいとは限らないということです。

彼女が生理になってしまったので、そういう行為はしたくないなと思ったら、そこは我慢しなくてはなりません。生理といった物理的な変化ではなく、「なんとなく嫌になった」と言われた場合も同じです。「ホテルまで来たのに、セックスさせないなんて!」と怒ってはいけないということなのです。

とくに、気をつけなくてはならないのは、この動画でも何度もリピートされていた、お酒が入って意識があやしい時ですね。今、日本で問題になるケースでも、お酒やドラッグで意識がなかった場合が少なくありません。セックスをしたい相手とは、できるだけ深酒しないくらいの気持ちでデートしたほうがよさそうです。

セックスしたいかどうかの意思確認をすることは、野暮と言えば野暮です。でも、これからはそういった確認が必須になると思います。そこできちんと確認して同意を得た場合ですら、人と人との関係はどうなるかわかりませんから、あとから「あの時は強要されたんだ」と言われるケースが100パーセントないとは言い切れません。その時は合意だったじゃないかと言っても、それを証明するのは難しいでしょう。

こんなことを言うと、セックスが怖くなってしまうかもしれません。だったら家でオナニーしたほうがマシと思うかもしれません。それでも僕はセックスがしたいし、女性と心も体も触れ合いたいと思っています。そのためには、最大限の配慮をしたいと思っています。

■「あなたとの初めてのセックスを特別なものにしたい」

と、性的同意の前置きが長くなりましたが、ここでシルクラボの女性向けAVでは、どのように女性を誘っているのかを紹介します。

男性向けAVと一番違うのは、セックスに至るまでに「あなたを愛しているからセックスしたいのだ」という意思表明をしているところだと思います。単純に欲望を解消する手段としてではなく、あなたとセックスしたいから、という動機を大事にしています。過去、シルクラボの作品に『四畳半ダーリン』という貧乏な童貞男子とセックスをする作品がありました。

この作品の登場人物は、彼女との初めてのセックスを、ちゃんとしたホテルでしたいと考えます。そのため、貧乏な彼は、彼女と会う時間も減らしてバイトに明け暮れます。

一方で彼女は、最近あまり会ってくれない彼に嫌われたのかもしれないと思って、一度はケンカするのですが、彼は「ちゃんとした場所で初エッチをしたいから、お金をためていたんだ」と初めて告白します。それを聞いた彼女は感激して、その気持ちだけで嬉しいと四畳半のせんべい布団の上でセックスをするというストーリーです。

そのセックスは、初めてなので拙(つたな)く下手なものなのですが、それがまたいいと、女性に好評でした。お金がなくてもセックスが下手でも、「あなたとの初めてのセックスを特別なものにしたかった」というストーリーに女性たちはきゅんときたのです。

もちろん女性向けのAVだって、ファンタジーです。ドラマじゃあるまいし、いちいち想いを伝えてセックスするなんて面倒だと思うかもしれません。でも、こういった作品が女性に支持されていることは、知っておいて損はないと思います。

■「誘い方」の最も大事なポイントとは

一方で、単純に性欲を解消したいから「セックスさせて」というパターンもあります。その場合は先にはっきりとそれを表明し、相手の女優さんにも同意してもらった上でセックスする流れになります。スポーツのようにセックスを楽しもうよというシチュエーションです。

一徹『セックスのほんとう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

さらに言えば、シルクラボの女性向けAVにも強引にセックスするシチュエーションはあります。ただ、レイプのように嫌な相手に無理やり犯されるというものではありません。「女性自身が好意をもっている男性から強引に迫られる」という演出が必ず加わります。

いかがでしょうか。性的同意や、女性の気持ちを考えると、セックスってなんて面倒なんだと思ってしまうかもしれません。

でも、難しく考えなければ、要は「君とセックスしたい(なぜなら好きだから)」とちゃんと伝えて、「いいよ」と言われればいいわけです。ダメと言われたらすぐに引き下がり、いいと言われたら楽しめばいい。

実はそれが「誘い方」の最も大事なポイントだと思います。

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一徹
AV男優
1979年生まれ。大学卒業後、公認会計士試験の勉強中に見つけたエキストラ男優募集をきっかけにAV業界へ。2009年「an an」SEX特集号のDVD(SILK LABO監修)に出演。これをきっかけに一般女性にブレークし、人気男優へ。2018年、自身のAV監督レーベルAV「RINGTREE」を立ち上げる。著書に『恋に効く SEXセラピー』(KADOKAWA)。

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(AV男優 一徹 写真=iStock.com)

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