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山本太郎ばかりがネットで話題になるワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月8日 15時15分

政治団体「れいわ新選組」の山本太郎代表=2019年7月5日(写真=アフロ)

7月4日公示された参院選は、残念ながら盛り上がりに欠ける展開になっている。ネットでは山本太郎氏の率いる政治団体「れいわ新選組」が一部で話題だが、これは話題に乏しいことの裏返しだ。「自公過半数」は既定路線。残るポイントは、参院選として最低の投票率を更新するかどうかだ――。

■「安倍1強」が続くが、直ちに憲法改正が進むわけでもない

7月6日の在京各紙は一斉に参院選の序盤情勢を伝えた。

朝日新聞は「自公、改選過半数の勢い 改憲勢力2/3は微妙」、毎日新聞は「改憲 3分の2割れも 与党、改選過半数は確保」、読売新聞は「参院選 自民が優位」、産経新聞が「与党の改選過半数確実 改憲勢力維持か」。そして日経新聞、東京新聞は共同通信社の調査に基づいた「自公、改選過半数の勢い 改憲勢力2/3うかがう」という記事を1面で掲載している。

多少の誤差はあるが、各紙とも自民、公明の与党が過半数を軽くクリアして勝利すると予想している。そして、日本維新の会を含めた改憲勢力が3分の2を取れるかどうかは微妙な情勢だ。当然ながら安倍晋三首相は続投。「安倍1強」態勢が続くが、直ちに憲法改正が進むわけでもない。要するに、ドラマチックな展開にはならないと予想されるのだ。

■5割強の「投票先未決定」は、多くが投票に行かない

この情勢調査で注目すべき点がある。態度未決定の有権者の数が異様に多いのだ。4、5の両日に行った共同通信の調査では「投票先を未決定」とした人は選挙区で54.5%、比例代表で47.8%。朝日新聞の調査では選挙区で5割、比例区で4割が投票行動を明らかにしていないという。序盤とはいえ「5割」という数字は多い。

「投票先未決定」の人たちの中には、その後、意中の政党を決めて投票する人もいるが、多くは最終的に投票に行かない。従って「未決定」が多いということは、投票率が低くなることを予告しているのだ。

前回2016年の参院選の投票率は、54.70%だった。「昭和」のころは7割を超えることも珍しくなかったが最近は50%台の「低値安定」が続く。最低は1995年の44.52%。そして、今回はその最低記録を下回る心配が出てきている。これは、民主主義の危機と言っても言い過ぎではない。

■過去の選挙とは比較にならないほど関心が低い選挙

1995年に投票率最低を記録した後、投票率アップに向けた制度改正が行われてきた。参院選では98年から投票時間が従来の午後6時までから8時までに延長になった。04年からは期日前投票制度が導入された。それによって投票率が飛躍的向上したとは言えないが、下支えしてきたのは事実だ。

仮に今回の参院選で投票率が最低を記録したら95年の「期日前投票なし、投票は午後6時まで」のルールならもっと悲惨な投票率となることだろう。言い換えれば、「午後8時まで投票、期日前投票OK」で最低投票率が懸念される今回は過去の選挙とは比較にならないほど関心が低い選挙ということになる。

これほど関心が低いのは、いったいどういう理由なのか。先に書いたように、選挙結果がある程度見えているというのも大きな要因だろう。衆院との同日選になると思っていた人は、参院単独となったことへの失望もあるはずだ。

■立憲・枝野氏もピークを過ぎ、話題は山本太郎氏ぐらい

さらに今回は、国民が関心を持つような政治家や政党が存在しないという特徴もある。平成になってから数多くの政党ができては消えていった。それらの多くは選挙の前に誕生し、少なくとも最初の選挙では一定の注目を集めた。2017年の衆院選の時には小池百合子東京都知事が希望の党を立ち上げ、それに対抗するような形で枝野幸男氏が立憲民主党を立ち上げて脚光を浴びた。

今回の参院選で政党要件を持つ政党は自民、公明、立憲民主、希望の党の流れをくむ国民民主、共産、日本維新の会、社民党の7つ。いずれも目新しさはない。2年前の衆院選ではブームを起こした枝野氏も今回の参院選ではピークを過ぎた印象だ。

山本太郎氏が率いる政治団体の「れいわ新選組」が、一部リベラル層で注目されているが、これは既成政党が話題性に乏しいことの裏返しでもある。

■選挙報道は「面倒で、しかも数字が取れない」

参院選が盛り上がらず投票率が下がりそうな原因となっているものがもう一つある。これは、恐らく一番大きな原因だ。

2012年に安倍晋三首相が首相に返り咲いてから、自民党はさまざまな形で報道機関に「働き掛け」を行っている。記憶に新しいのは2014年の衆院選を前に、自民党がNHKと民放5社に「公平な報道を求める」という要請文を出したことだ。この時は「事実上の圧力」と問題視されたことがあった。

その結果、テレビ局は、生ニュースを扱う報道番組を除き、極端に選挙報道を抑制するようになった。

少しでもエッジを効かせた番組をつくろうとすると、クレームがくる心配がある。かといって主要政党を公平に扱い、クレームをつけられないように配慮しすぎると、間延びしておもしろくなくなる。視聴率も取れない。ならば、選挙を扱うのは最小限にしようという判断が働いたと言われる。

■自民党の古手秘書「報道時間が短くなればそれでいい」

その後、安倍政権のもとで参院選、衆院選が行われてきたが、テレビ局の報道姿勢はおおむね同じだ。極端な圧力を受けたというわけではなくても「面倒で、しかも数字が取れない」選挙報道を敬遠するのが定着しているのだ。

テレビの放送時間が短くなれば当然、国民の関心が低くなり、投票率も下がる。悪循環だ。

そして、最後に指摘しておかなければならないことがある。低投票率になって有利なのは、やはり自民、公明の与党なのだ。強固な後援会組織と業界団体の支援を受ける自民党。そして創価学会の全面的な支援のある公明党。両党は浮動票を頼りにしないでも選挙戦を戦える。参院選での低関心は、そのまま与党有利の材料を補強することになっている。

自民党の古手秘書はこうささやく。

「報道機関への働き掛けによって自民党に有利な報道をしてもらいたいとは最初から思っていない。報道時間が短くなればそれでいい。今回も、その点では思惑通りだ」

(プレジデントオンライン編集部 写真=アフロ)

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