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時計職人"2時間作業したら30分海を見る"

プレジデントオンライン / 2019年7月22日 17時15分

新光時計店4代目 松浦敬一氏

目を酷使するプロは、視力をどうやって維持しているのか。雑誌「プレジデント」(2019年7月19日号)の特集「眼医者、メガネ屋のナゾ」では、「目が命」のプロたち5人に話を聞いた。3人目は時計職人の松浦敬一氏だ――。(第3回、全5回)
▼2時間作業したら30分、海を眺める

広島県の大崎下島・御手洗地区にある新光時計店は、創業150年を超える時計店。メーカーでも修理不可能な時計が持ち込まれる「時計の駆け込み寺」として、全国に知られる。同店の4代目で、時計職人として50年以上のキャリアを持つ松浦敬一氏に話を伺った。

■0.5ミリ以下の部品をピンセットで修理

私は2019年で75歳になりますが、今も視力は両目とも1.2あります。時計の部品はどれも非常に細かく、一番小さなネジは0.5ミリ以下です。それを右目につけたルーペで見ながら、ピンセットで細心の注意を払って修理します。埃が風で舞ってしまうため、真夏でもクーラーや扇風機の使用には細かい注意を払い、呼吸にも気を使います。当店に持ち込まれる時計は数十年前に作られた、メーカーにも部品の在庫が残っていない製品が珍しくありません。難しい修理は2日がかりになることもあり、その間は集中しているので目を酷使することになります。時計職人にとって目は何より重要な商売道具ですから、若いときから大切にしてきました。

目が悪くなる原因は、眼球の水晶体を調節してピントを合わせる毛様体筋に緊張が続いて、うまく働かなくなることです。目の筋肉の緊張をほぐすため、私は2時間ほど作業をしたら必ず外に出て、30分ほど桟橋から海や瀬戸内海の島々を眺めることにしています。緑に覆われた島やカモメが飛び交う遠くの海を見ていると、疲れた目が休まるのです。会社で働く人も、しばらくパソコンで作業をしたらビルの屋上などで、遠くの景色を眺めることをお勧めします。

■ぴったり自分に合うメガネを作って、矯正することが大切

毛様体筋を疲れさせないためには、常に網膜にピントがきちんと合う「正視」の状態で生活することも大切です。店ではメガネも扱っていますので、老眼になってからは自分にピッタリ合うメガネを自作してかけるようにしました。近視気味の人の中には、目を細めたり目の端を押さえたりすることでピントを調節する人がいますが、それは毛様体筋に負担をかけます。少しでも「見えにくい」と感じたら、ぴったり自分に合うメガネを作って、矯正することが大切です。

美しい瀬戸内海や島々を眺めて、目を休める。

また、紫外線も目にはよくありませんので、夏場に外出するときは注意していました。紫外線よけでサングラスをかける人も多いと思いますが、色の濃いサングラスは瞳孔が開くため、かえって多くの紫外線が目に入ってきます。ほどほどの色の濃さのものを選ぶか、しっかりと紫外線カット機能のついたものを選ぶといいでしょう。日よけの帽子も横からの光が入らないように、夏の間、360度全体につばがついている大きな麦わら帽子を被ってきました。

時計にはそれを身につけていた人の「唯一の歴史」が刻まれています。家族や大切な人の形見の時計の修理を依頼されることも多く、そうしたお客様の思いに応えることがこの仕事のやりがいです。

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松浦敬一(まつうら・けいいち)
新光時計店4代目
1944年、新光時計店3代目の長男として生まれる。「時計の名医」として全国に知られる。現在は息子で5代目の光司氏と全国からの時計修理依頼に対応。

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(新光時計店4代目 松浦 敬一 構成=大越 裕 撮影=滑 恵介)

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