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記憶力向上・物忘れ防止に効くヤバい画像

プレジデントオンライン / 2019年7月27日 11時15分

amanaimages=写真

運転免許の更新が近くなってくると、自分の視力が合格基準に達しているか、気になってくる。メガネやコンタクトレンズを前もって調整しておくことも大切だが、目のパフォーマンスを上げるために今すぐできることも知っておきたい。「ここぞ」というときに視力を上げるにはどうしたらいいか。眼科医の平松類氏に、直前でもできる対策について聞いた。

■「老眼鏡」であえて遠くを見る

人間の視力には波がある。一般に朝起きたときに比べて、夕方は見えにくくなるものだし、パソコンやスマホの操作で手元を見続けていると、目は見えにくくなってくる。

これは、目のピント合わせをする筋肉(毛様体筋)が緊張し続け、疲れてくるからだ。眼球の中には水晶体というレンズがあって、その周りに毛様体筋がある。この筋肉がギューッと縮むことによってレンズが厚くなって手元にピントが合い、逆に遠くにピントを合わせるときは筋肉が緩くなることによってレンズも薄くなる。ちょうど陸上競技で100メートルダッシュを何本も続けると筋肉が疲労し、タイムが次第に落ちてくるように、毛様体筋も使い続ければ疲労し、ピントの調節力が落ち、遠くが見えにくくなる。

そこで、目の筋肉の疲れを取ることで、視力検査で自分の視力における瞬間最大の能力を出すことができる。

まず、検査の1分前にできるのは、目を温める「ホットアイ」だ。温めることで目の血流がよくなり、疲労物質の排出を促すのに役に立つ。同時に、まぶたのふちにある皮脂腺「マイボーム腺」からの油の分泌がよくなるため、涙の質がよくなって見えやすくなる。

ホットアイの基本は「目をつぶって温かいおしぼりを目に載せる」ことだが、市販の「目を温めるシート」を使ってもいい。何もないときは両手を10回ほどこすりあわせて温め、手のひらで目全体を包むように、30秒~1分程度、そっと載せる。

なお、エアコンでガンガンに冷えている室内では空気もかなり乾燥している。目の表面も乾き、目がかすむ原因になる。目を温めるとともに目薬を1滴さすだけでも、結果は違ってくるはずだ。

次に、視力検査の5分前にできることに「雲霧法」がある。日頃からスマホを見る時間の長い人は、手元を見すぎていてピントの調節をする毛様体筋が痙攣、または麻痺した状態になりがちだ。雲霧法は、この使いすぎて痙攣している目の筋肉を緩和させる方法なのだ。

具体的には、100円ショップで購入できる「+2.0の老眼鏡」をかけて、2メートル以上遠くを5分間見る。メガネやコンタクトレンズをしている人は、その上からかければいい。「+2.0の老眼鏡」は手元を見るためのものなので、2メートル先には焦点を合わせることができず、ぼんやりした画像しか見えないが、これでよい。つまり「雲霧法」は、目のピント合わせをしない時間をつくることで目の緊張をときほぐすもので、5分後には、かける前より見えるようになっているのだ。

ホットアイと雲霧法の2つは、ピントを合わせる能力に対しての効果なので、角膜(黒目の部分)の形のゆがみによって生じる乱視には、あまり効果がない。

■ノーベル賞博士が開発したトレーニング

そこで乱視の人および、検査まで1日以上の時間があるなら、試してほしいのは「ガボール・アイ」だ。

ガボール・アイの問題例。同じ模様を探すのを繰り返す。

ガボール・アイは、これまでの2つのような目の筋肉の状態や血流をよくする方法ではない。目で見たものを処理する脳の「視覚野」の機能を上げるものだ。

目は眼球というレンズでとらえた情報を脳で処理し、見えたものを認識している。「見る」という行動は、目と脳の緻密なネットワークや共同作業で行われていて、脳は目のレンズではかすんだり欠けたりして、はっきりとらえていない部分も推測して、像を補完している。たとえば、汚れたガラス越しに外の景色をながめるとき、外の景色に意識を集中するほどガラスの汚れは見えなくなる。写真にとれば一目瞭然なその汚れを、脳が自動で補正してくれているのだ。

そこで、脳のこの「画像を補正する力」をさらにトレーニングすることで、近視や老眼でぼやけた画像もよりはっきり認識でき、視力は上がることになる。

具体的には、「ガボール・パッチ」といわれる輪郭のぼやけた特殊な縞模様が並んだ画像の中から、同じページに同じ形のものを探すというトレーニングである。

「ガボール・パッチ」は、光の波長をガボール変換という数学的な処理を行うことで生まれた図形だ。開発したデニス・ガボール博士は、ホログラフィーの発明で1971年にノーベル物理学賞を受賞した人で、「ガボール・パッチ」はもともとは視力回復のために開発されたものではなかった。しかし、この画像のぼやけ方が、脳の視覚野を刺激するということがわかり、アメリカではいくつもの研究報告が行われている。

米カリフォルニア大学での実験では、大学生16人と65歳以上の高齢者16人が集められ、どちらのグループでも1週間で視力の向上が認められた。カンザス大学の研究では、近視の人では平均視力0.4から0.6へ。老眼の人では平均視力0.3から0.6へ改善したという報告が行われている。

■認知機能全般へのよい影響も期待できる

「見る」「聞く」など脳の感覚野の老化は、認知機能にも影響を与えることがわかっている。「ガボール・アイ」で視覚野が活性化されることは、記憶力や集中力の向上、物忘れの防止など、認知機能全般へのよい影響も期待できるだろう。

(写真右)図の解答。1回につき3~10分を目安に。1日1回でOK。(同左)平松氏の著書『ガボール・アイ』。28点の問題と解答が掲載。

なお、「ガボール・アイ」は、判別できた数や所要時間を競うものではなく、正解率と視力アップが関係するわけでもないので、答え合わせも必要ない。ただ、1日の空いた時間に3~10分、判別トレーニングを続けていくことで、脳の視覚野の力が上がっていくのだ。1日だけ行った場合もある程度の効果が期待できるが、2週間は続けてもらうと効果が表れやすい。効果が出やすいのは、裸眼で0.1以上の視力のある人で、老眼で困っている人にはたいていあてはまるはず。

ここで紹介した方法は、目の基本的なケアであったり、脳の視覚野を生涯にわたって活性化していく手段でもあったりする。スポーツでの動体視力アップや、仕事の作業効率を上げるためにも役に立つはずだ。

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平松 類(ひらまつ・るい)
眼科専門医
1978年、愛知県生まれ。昭和大学医学部卒業。山形県米沢市三友堂病院眼科科長、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長などを経て、二本松眼科病院勤務、昭和大学兼任講師。わかりやすい解説が好評で、テレビ、新聞、雑誌などで活躍。

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(眼科専門医 平松 類 構成=南雲つぐみ 写真=amanaimages)

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