本当のお金持ちが最後に欲しがるモノとは
プレジデントオンライン / 2019年7月15日 6時15分
■“モナコ基準”の審査とは
モナコに住んでいる人たちは、他国と異なる“モナコ基準”の審査を通過した人たちです。通常外国人が海外に住む場合、住居と銀行の残高証明か現地での雇用契約書が必要になります。これらはどこの国に移住する場合でも最低限必要となる書類ですが、“モナコ基準”というのは、国の物価が高いため、例えば住居を用意するだけでも、20㎡で最低2500€(約31万円)からといった条件です。それも物件が空いていればラッキーなほうで、この手のワンルームはほとんど空きがありません。ちなみに購入する場合は、20㎡のマンションで約2億4000万円からと言われます。
また、銀行口座の残高証明も、数千万円から億単位が必要になります。これは個人によって条件が変わるため金額に幅があります。またモナコの場合は、無犯罪証明書の提出も義務付けられています。住むだけでこれだけの金額がかかるのですから、会社を立ち上げようと思うと、日本のように簡単な手続きだけではないことが想像できるでしょう。
■お金で買うことができない価値あるもの
このような条件をクリアした金銭的に余裕のある人たちが、本当に手に入れたいものは、お金で買うことのできない、人生に価値を与えてくれるものです。例えば「健康」。これはただ単に元気はつらつと生きるための健康でなく、美貌も含めた健康です。日本は長寿大国として世界的に有名で、WHO世界保健統計2018年版によると、日本は世界平均寿命ランキング1位。男女の平均寿命は84.2歳だそうです。数字で見るかぎりは素晴らしい結果ですが、実際の健康状態やライフスタイルはどうなのでしょうか。病院で長く過ごしたり、医療に頼って生かされているというのも現状でしょう。また、元気にされている方でも、男としての自分、女としての自分は失くし、恋愛など考えたこともないケースも多いはず。
モナコで求められる「健康」とは、このような状態を指すのではなく、年を重ねても女性は女性、男性は男性でいることが絶対です。ただ日々を長く生きるというのではなく、家族、恋愛、社交など人生を謳歌するために健康を手に入れたいのです。
■健康のためにオリーブ畑を購入
このように人生を謳歌しつつ長生きするという意識が高いため、すべての年齢の人たちにとって、「食」は毎日の欠かせない重要ポイントになります。健康は「食」からと言われるように、何を口にするかで身体がつくられるため、モナコのスーパーマーケットは専門店へ行かなくても、必ずオーガニックの棚があり、その棚が年々広くなっています。通常の商品より2~3割高くなりますが、健康のためにオーガニック商品を選ぶ人が増えているのが現実です。他にも、この辺りはオリーブの樹がたくさん育っているため、料理にオリーブオイルを使うのが主流。健康意識の高い人はオリーブ畑を購入し、自家製オリーブオイルもつくります。さらに家の庭には普通にオレンジやレモンの樹があり、毎朝フルーツの生絞りを飲む人も多いのです。
■最近流行っている冷凍療法とは
健康を意識する人は、適度な運動も欠かせません。モナコの海岸線には、ジョギングやウォーキングをしている人たちで溢れています。それを見るだけでも美意識の高さが伺えます。エステシャンとして世界中のVIPやロイヤルファミリーから指名を受けるAさんは、「モナコほど美意識の高い人たちはいません。みなさん必ず運動をされていらっしゃいます」とおっしゃっていました。気候が良いこともあり、屋外で運動する人が目に止まります。またモナコにはヨーロッパ最大級タラソテラピーのスパ施設があり、地中海の海水を使用したトリートメントが受けられます。波の立たない穏やかな海からくみ上げた海水は、心を穏やかにしてくれる効果があるそうです。
最近の流行は、クリオテラピーです。これは医療機器としてスポーツ選手の怪我治療に使用しているも冷凍療法の機械です。マイナス110℃という凍りつくような温度の中に最長3分入ることで、血行を良くし、肌にはりを与えてくれます。これは時差ボケにも効くそうで、ジェットセッターの多いモナコでは、クリオテラピーに注目が集まっています。
■モナコにしかない最高級の環境
どんな環境で毎日を過ごすかにによって、人はつくられると言います。その言葉通りの最高の環境がここモナコにはあるのです。海と山に囲まれ、街には最先端の人、モノ、情報が溢れ、天候にも恵まれています。隣接するフランス・コートダジュールの海岸線沿いで雨が降っても、モナコだけ降らないのも日常。地形的なことでしょうが、まるで神から守られている感覚にもなります。逆に考えれば、このように環境が整っているから人が集まり、国も発展してきたのでしょう。
さらにモナコは犯罪率がゼロといわれるほど、治安も安定しています。フランスとの国境沿いにパスポート検査はありません。誰でも簡単に入国できてしまうモナコなのに、なぜ犯罪が無いのでしょうか。それは、街中に防犯カメラが設置され常に監視されていることや、住人60人にひとりの割合で警官がいることなどがあげられます。仮に何かが起きたとしても、国を囲ってしまえば、犯人は逃げられなくなります。
旅行者がよく携帯電話やお財布をどこかに置き忘れたという話を耳にしますが、ほとんど持ち主のところに戻ります。これはヨーロッパでは考えられないことです。安心して暮らせるセキュリティの保証は、世界のお金持ちにとって必要不可欠なこと。夜女性がひとりで歩くことができるのも、この国ならではです。世界的なビリオネア、王族、有名人もボディーガードなしで歩けるのはモナコだけかもしれません。隣国のフランスやイタリアではありえないことです。
■学校では3カ国語を習得できる
こんなに安全な環境だったら、この国で我が子を育てたいと考える親が多いのも自然なことでしょう。モナコは国が豊かなため公立の学校にも制服があり、授業内容も充実しています。ちなみにモナコはフランス語が母国語ですが、英語、イタリア語も使われ、学校では最低3カ国語が習得できるようになっています。外国語に壁をつくりがちな日本人にしてみると羨ましい環境です。彼らにとって外国語は難しいものではなく、人とコミュニケーションをはかるための道具として身につける武器なのです。
さらに国を挙げて、地球環境を守ることに力を注いでいます。電気自動車はもちろんのこと、最近は世界に向けてモナコ製の電気ボートも発表されました。またエコロジー活動としてプラスティック問題や海洋汚染に関わっています。モナコを愛するひとたちは、自然に恵まれた環境を大切にしながら、最高な国を創り上げていくことに協力をしています。お金に余裕があるからと言って、各自が好き勝手なことだけをしていたら、この環境を守ることはできません。最高の環境を手に入れるために、住人も積極的に協力をしています。
■時間の無駄を嫌うからこそお手伝いさんを雇う
時間はどんな人にも平等に与えられるもの。ただしどのように使うかで人生は大きく変化します。モナコに住む人たちは、家事はお手伝いさんにまかせ、空いた時間を自分のために使い、夜はベビーシッターを雇って大人の時間を過ごします。
世界のお金持ちは、時間の無駄遣いを極端に嫌います。そのためにもYESとNOの気持ちをストレートに表します。日本人にしてみるとキツく感じる場合もありますが、はっきりしているぶん明快です。特にオールドリッチタイプの人たちは、どこかへ出かけて心地のいい時間を過ごせたら、それをチップで表現します。世界中の最高を経験してきているオールドリッチたちは、万物に感謝をし、継承という価値にカタチで返します。それがチップです。
ソムリエが料理に対して最高のワインを勧めてくれたとき、それはそのソムリエの学びと経験のお陰です。さらにその作り手にも感謝の気持ちを込めます。また、数百年続いているシャトーホテルの滞在が快適だったら、その建物を造った人から、現在も継続してくれているオーナーや従業員たちへ感謝の気持ちを表します。最高な時間を過ごせた代償として、チップを惜しみなく払うのがオールドリッチです。お金で人を動かすのでなく、最高な時間を手に入れられたことに、気持ちよくお金を使います。逆に無駄な時間を過ごした場合、それに対して強く意見を述べ、チップは支払いません。
■本物のお金持ちはお金をこう使う
お金というのは生きていくために誰でも使います。お金を使うときの気持ちが、嫌々払えばそれは支払いとなり、喜んで払えば感謝になります。世界を経験しているオールドリッチたちはその違いを知っています。
例えば毎月のカード請求額を見ながら、今月もこんなに使ったのかぁ、と思えばそれはただの支払いになり、今月はこんなに素敵な時間を過ごせたと思えば、それはその人の経験や価値となります。お金は巡るものと言いますが、貯蓄だけしていたら、自分のためにも社会のためにもなりません。世界のお金持ちは、お金の増やし方よりも、使い方を重要視しています。好きなものにはお金を費やす分、興味のないことには見向きもしません。使う金額は大きいですが、無駄づかいを嫌います。お金に縛られるのではなく、支払うことで相手に感謝を示せる使い方ができるのが本当のお金持ちなのです。
(国際マナー研究家 畑中 由利江 写真=iStock.com)
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