夜の誘いを断る夫婦がそれでも円満なワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月14日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yue_)

結婚後にセックスレスになり、解消したくてもパートナーに打ち明けられずに悩む人がいる。AV男優の一徹さんは「たとえ断ったとしても、『この日はセックスする』と次にする予定日を決めるといい。恥ずかしいかもしれないけれど、お互いの気持ちを通わせるためには真面目に話し合うことが大事です」とアドバイスする――。

※本稿は、一徹『セックスのほんとう』(ハフポストブックス/ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■セックスする人も、結婚する人も減っている

これからのセックスがどのように変わっていくのかを考えたときに、よく言われている日本人全体の「セックス離れ」がまず浮かびます。

たとえば、東京大学とスウェーデン・カロリンスカ研究所のチームの発表によると、18~39歳の日本人の25パーセントに性交渉経験がないそうです。1992年は20パーセントだったそうなので、23年間でずいぶん、セックス未経験者が増えたと言えるでしょう。30代に限っても、ほぼ10人に1人が未経験だったそうです。

また、結婚しない人たちも年々増えていて、「2015年国勢調査」によると、30代前半の男性の未婚率は47.1パーセント。約半数が35歳までに結婚していないことがわかります。生涯未婚率も年々あがっていて、50歳時点で一度も結婚歴がない人の割合は男性で約4人に1人、女性で約7人に1人だそうです。

セックスをする男女が減っている。結婚する人も減っている。これらには、いろんな要因があると言われています。大きなところでは、経済的な側面。若い世代の低賃金化は社会問題にもなっています。将来を考えると、お金を使いたくても使えない。これは男性も女性も同じです。

もしここに、「デートでは男性がおごるのが当然」という空気があるとしたら、男性は女性をデートに誘えない、セックスまで持ち込めない、結婚しても養えないという状況が生まれていても不思議ではありません。実際、男性は女性をリードすべきだと考える大学生は3分の2近くいるとも言われています。

■働く女性が増えても求められる「経済力」

加えて、「AV男優"ラブホに行っても応じなくていい"」(7月4日)でお話ししたような、性的同意の課題があります。100パーセント同意の上で行ったと言い切れるセックスでないと、のちのちトラブルになる可能性があるとなると、及び腰になるのもわかります。

現実問題として、恋愛、セックス、結婚のための物理的・精神的コストが、若い男性にとって大きな負担になっているように思います。

近年「パパ活」という名の年配男性と若い女性の交際も話題になっています。収入面だけでいうと、経済的余裕のある年配の男性に、学校を出たばかりの若い男性が太刀打ちできるはずがありません。

女性の社会進出が当たり前になった今でも、女性が交際相手や結婚相手に求める条件には「経済力」が上位にあがります。むしろ、国立社会保障・人口問題研究所による「出生動向基本調査」によると1997年の調査よりも、2015年の調査時の方が、「結婚相手の条件で重視する点」として「経済力」の数字があがっているほどです。

もちろんこれを見て、一概に「女性はわがままだ」と切り捨てるわけにはいかないと感じます。女性が働きやすい社会になったとはいえ、残念ながら、男性に比べてまだ女性の賃金が安い状況もあります。出産時には物理的に休業しなくてはならない事情もあるでしょう。だからそのぶん、パートナーに経済力を求めるという面もあるのかもしれません。

■性欲処理が手軽に済ませられるようになった

でも、卵が先か、鶏が先かという話と同様、男女どちらか片方だけの問題でないことは間違いありません。女性にとって生きづらい社会は男性にとっても生きづらいと思うのです。これを変えていくためには、男女ともに男性がすべてをリードする、男性が女性を養うという考え方を変えていく必要があると言えます。

こういった、セックスに対するコストがあがる一方で、AVをはじめとする性を処理できるツールや場は増えました。「可愛い女性の裸」がデフレを起こしている状況とも言えます。

AV業界でも、綺麗な女優さんたちが、どんどん新作を発表していきます。2次元の世界ならトラブルになることもないと、AVでオナニーすれば十分という男性も増えています。性欲処理が、どんどんイージーになってきています。そこにきてVRの登場です。近い将来、自分好みの顔の女の子と擬似セックスできる日もくるでしょう。現在でも、VRもののAV動画の人気はどんどんあがっています。

可愛くて、リスクもなくて、限りなくリアルに近い感覚のVRセックスが当たり前になった時、コストをかけてまで人間関係を大事にする必要があるのか? それでも僕たちはセックスをしようと思うのか?

■それでもセックスを諦めてほしくない

そんな時代に、もし僕が今20歳の自分と出会ってアドバイスをすることがあったら、何と言うだろうかと考えてみました。

しばらく悩んだのですが、僕は「それでもセックスを諦めないで」と言いたいなと思います。綺麗ごとかもしれませんが、生身の人と人が触れ合ってできるコミュニケーションは特別だと思うから。自分自身も諦めたくないし、20代の彼にも諦めてほしくないと思うからです。

実は、男性がセックスを避けるようになったので、口説いてもらえなくなったことに傷ついている女性もいるようです。終電がなくなって、女性はセックスをしてもいいという気持ちでいたのに、男性側が口説いてくれなかったという話も聞きました。女性は女性で恋をしたりセックスをしたりするハードルが上がってしまっている現状があると思うのです。

だから僕は、もう男性がリードして、女性は口説かれるのを待つべきという考えはやめたほうがいいんじゃないかと思います。「好きだ」「セックスしたい」と思ったら、性別に関係なく気持ちを伝えればいい。「男だからうまくリードしなきゃ、口説かなきゃ」と気負わなくていいんです。

男性だから、女性だからという先入観を取り払うことも大事だし、素直に自分の気持ちを伝えることも大事だと思うんです。

■対等になるにつれ、夫婦関係は選べる時代に

ここまでは未婚の男女の話をしてきましたが、2015年に発表された日本家族計画協会のデータによると、既婚者の44.6パーセントが1カ月セックスをしていないとなっています。ほぼ半数ですよね。

夫婦間のセックスレスにも、いろんな原因があると言われています。ひとつはメディアによるセックスレスの煽りがあると思います。また、共働きが増えて、忙しい夫婦が増えていることなどもあるでしょう。さらに、先にお話ししたAVをはじめとする動画や雑誌の入手が手軽になって、そちらで性欲の処理を済ませてしまうということもあるかもしれません。

これまでは男性が家庭で甘やかされてきたところもあるのではないかと感じます。以前、男性が外で稼いでくるのが当たり前という時代は、女性はポケットにキャバクラや風俗の割引券を見つけても、我慢して受け入れていたところがあったかもしれません。見て見ぬふりをするという話も聞きました。

でも、女性も経済力をつけ、対等なパートナーとなったときに、そこは我慢する必要がないと感じるようになったのだと思います。また、お互いの合意の上であれば、パートナーとセックスをしないという考えもあるかと思います。セックスをするもしないも、対等な関係で選べるようになった。そんな時代なのかもしれません。

いわゆる「夜のおつとめ」のような義務感が男女両方から消え、夫婦であったとしても、セックスを断れる状況になってきた。これはこれで、健全な状態とも言えます。相手に無理強いをしない社会になったとも言えるかもしれません。

「家族としては好きだけれど、セックスはしたくない」と思うのであれば、それを伝えて新しい関係を築くという方法もあり得るでしょう。セックス以外に愛情の確認をとれるのであれば、それでもいいのかもしれません。夫婦の数だけ、セックスの形があっていいと思います。

■仲直りしたくて久しぶりに誘ってみると……

それでもセックスレスから抜け出したいと思った場合は、やはり、パートナーと向き合う必要があると感じます。

以前、知り合いの夫婦が大げんかになったことがあると教えてくれました。でも男性のほうが、そのあと冷静になって振り返って、やっぱり離婚はしたくないと思ったんだそうです。そこで、もう一度仲良くなるためにどうすればいいかと考えた時に、付き合った時を振り返ってみたのだとか。

結婚してから……、子どもができてから……、何が変わったかと考えたら、やはりセックスの回数が減ったと思ったんだそうです。だから、もう一度セックスをしようと奥さんに提案したそうなんですね。けんかをしている状況だから、それを提案した時の空気は最悪だったけれど、やっぱりセックスを取り戻したら、一気に仲良くなれたというんです。

この話を聞いて「頭で考えていることと心と体で考えていることは、実は違ったりする」ということを感じました。ムカついていても笑っていたらだんだん楽しくなるのと同じで、セックスが仲を取り持ってくれることもあると感じます。

■断った方が「次」を誘ってみる

その話で、僕がとくにおもしろいと思ったのは、彼が「この日はセックスをする日だと決めよう」と伝えたところです。最初は奥さんが、「それだとムードも何もないじゃないか」と言ってきたそうなのですが、実際に実行したら、とてもスムーズにうまくいっているそうです。

実は、僕自身もセックスレスになったことがあって、その時は彼と同じ方法をとったんです。なので、彼の話にとても共感しました。最初に彼女に言い出すのはすごく勇気がいることだったのですが、今は伝えてよかったと思っています。次の日の仕事が早いとか、疲れていて難しいというように、セックスを断る時もあるのですが、その時は、断ったほうから次を提案しようということも決めました。

これは男性でも女性でも同じだと思うのですが、たとえ夫婦でも2度続けてセックスを断られたら、メンタルがきついですよね。だから、断ったほうが次に誘う。そういうルールがあれば、お互い誘いやすいし、無理をしないでもすむのかなと思っています。

子どもが生まれたり、お互いの仕事が忙しかったりする時は、セックスについて話すのもはばかられたり、面倒になってしまったりすると思います。正面切ってセックスについて話すのも野暮なんじゃないかとか、ムードがないとか……。

■それでも難しいなら、セックスの定義を変えよう

でも、カッコ悪くても、恥ずかしくても、夫婦でセックスについて真面目に話すことは大事だと感じます。男性がセックスを求めなくなると、「女性として、もう魅力がないのかな」と悩んでしまうという話もよく聞きます。

ですから、セックスの話ほど、真面目に正面切って話をする、くらいの勢いでいいのではないかと思います。

一徹『セックスのほんとう』(ハフポストブックス/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

夫婦のセックス再開にAVを使ったという話も聞きます。男性向けのAVも女性向けのAVも、どちらもファンタジーがありますが、夫婦で仲良くセックスできるきっかけになったら嬉しいです。

セックスレスについてもうひとつ大事だと思うのは、セックスのハードルを下げることです。男性はどうしても「セックス=射精」と考えてしまいます。でも、自分や相手の体調や都合で射精をともなうセックスが難しいこともある。そんなときは「1分間ハグし合う」などセックスの定義を変えるのがいいと思います。

僕は、お互いがお互いを大事にしている気持ちを共有することができたら、それはもう「セックス」だと思うんです。お互いの気持ちを通わせる方法を、相手と話し合ってみてください。

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一徹
AV男優
1979年生まれ。大学卒業後、公認会計士試験の勉強中に見つけたエキストラ男優募集をきっかけにAV業界へ。2009年「an an」SEX特集号のDVD(SILK LABO監修)に出演。これをきっかけに一般女性にブレークし、人気男優へ。2018年、自身のAV監督レーベルAV「RINGTREE」を立ち上げる。著書に『恋に効く SEXセラピー』(KADOKAWA)。

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(AV男優 一徹 写真=iStock.com)

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