イギリス人女性に学ぶ「私らしい」働き方
プレジデントオンライン / 2019年7月23日 11時15分
(写真左、右上)ディラン・ヤマダ・ライスさん。マンガを描くのが趣味。筆などの文具は日本のものがお気に入り。(同右下)1人に1台コンピュータ付きデスクがあてがわれる英国王立美術大学。学生とは友人のような関係で、和気あいあい。
■週に2日はプチ単身赴任。息子の視点や発想はアイデアの源
美術大学のなかでは世界で唯一、博士号が取得できるロンドンの英国王立美術大学。ディラン・ヤマダ・ライスさんは、ここで週に2日間、「情報体験デザイン」の上級講師として学生のワークショップを指導している。今期は“物語の伝え方”がテーマだ。
講師だけが彼女の仕事ではない。現在、別の週2日はイギリス北部のリーズにある子どものためのデジタルゲーム会社でリサーチやデザインを請け負っている。2つの拠点で2つの仕事をしているというユニークな働き方だ。
「自分が普段から張り巡らせている興味や情報のアンテナが、たまたま今の仕事をキャッチしてこうなった」と言う。2つの仕事がそれぞれ違う刺激を彼女に与え、どちらの仕事にも良い効果を与えているそう。
「“物語”や“子ども”は、私が小さな頃から好きだった対象です。アートやデザインの手法でこれらを創造し、表現することが夢でした」とほほ笑む。
大学講師を務める2日間は自宅から離れてロンドンに滞在する、プチ単身赴任の生活。ロンドンの仕事を受けるかどうかは、子どもの判断次第だった。小学生の子どもを、アーティストの夫に任せて自分は仕事に打ち込むことについて、家族でよく話し合った。
「息子が『いいよ』と言ってくれたおかげで、可能になりました。私が自宅にいるときは、必ず学校の送り迎えを担当します。リサーチなどで海外へ出張するときは、学校が休みなら、一緒に息子を連れていきます。彼の視点や発想からアイデアをもらったり、学ばされたりすることもあるんです」
最近では、病気療養をする子どもたちのためのビデオゲーム開発にも参画している。クリエーティブな世界と子どもたちを結びつけ、彼女の夢は現実となり大きく育っていく。
6:30 起床。
7:00 シリアル、ピーナッツバターのトースト、バナナなどの朝食。
7:30 自宅にいるときは、子どもを学校に送っていく。
9:00 自宅にいるときはゲーム会社に、ロンドンにいるときは大学に出勤。
13:00 昼食。会社ではリサーチやデザイン会議、クライアントと打ち合わせ。大学ではワークショップ。
19:00 夕食。
23:00 就寝。
▼my favorite
●好きな映画→濱津隆之主演『カメラを止めるな!』 ●愛読書→松本大洋、べルギーのブレヒト・エヴァンスのコミック
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デジタルゲーム会社デザイナー・大学講師
1975年、コーンウォール生まれ。ロンドン大学を卒業後、京都大学に留学し狩野派の絵画を研究。その後、シェフィールド大学で博士号取得。大学講師とゲームデザイナーを兼務。
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■お店は小さいままでいい。顧客との交流が私の財産になっている
近代的な高層ビルと古い倉庫街が共存するロンドンの一角、観光地としても有名なタワーブリッジの近くに、クレア・エドブルックさんの自宅兼サロンがある。しかしサロンの看板も名前も出ていない。自身と2人のスタッフ、パートの事務員と、4人だけの店構えだ。
もともと人に使われる仕事に興味がなく、自分のビジネスをいつか立ち上げたいと思っていた。大学では音楽を専攻したが、音楽で稼ぐのは容易ではない。そこで以前から興味があり、ロンドンではまだまだ店舗数が少なくビジネスチャンスがある、まつげエクステンションのサロンを始めた。3年間の技術取得コースに通って資格を取り、自宅の2階を改装して開業した。
「一人一人、目の形やまつげの生え方が違い、お客さまの要望は異なります。丁寧に話を聞き、求められているものをきちんと理解すること、さらにコミュニケーションをとって良好な関係を築くことも大事です」
技術はもちろん、施術者の人柄も店の魅力となるのだろう。リピーターが多く、顧客は口コミで増えている。しかし、ビジネスの拡大にはあまり興味がないというクレアさん。店を大きくすると顧客との関係性が希薄になり、友達の家に来たような、小さなサロンだからこそできるサービスの質が低下するかもしれないと危惧しているからだ。
「大都市ロンドンの中心部ですから、世界を股にかけて働く方もやって来ます。忙しい時間からスイッチオフして、施術後の変化に満足していただきたいのです」
また、顧客との時間は、クレアさんにとっても宝物となっている。
「私生活で辛いことがあった方も来店されます。彼女たちと悲しみや喜びを共有することで、人生には何が大切なのか知ることもできました」
一方で好きな音楽を捨てたわけではない。音楽は彼女にとって「パッション・プロジェクト」。情熱を注げられる対象だ。時間があれば常に曲作りに励み、カクテルバーでギタリストの弟とともにライブ活動も行う。12曲の映像つきアルバムトラックの配信が2019年の目標だそう。公私ともに精力的な活動が続く。
6:45 起床後、ゆっくり身支度。
7:00 紅茶とバナナの朝食。
7:30 その日に来店する顧客のカルテなどを見て準備をする。
8:00 施術を始める。
13:00 昼食。顧客からの電話メッセージを聞き電話する。
13:30 再び施術。
21:00 サロンを片付ける。
21:30 軽めの夕食。
22:00 なるべく毎日曲作り。
22:45 1日の出来事を日記に書く。
24:00 読書の後、就寝。
▼my favorite
●好きな言葉→「諦めるな、絶対に、絶対に、絶対に」(イギリスの元首相チャーチル) ●愛読書→ティモシー・フェリス著『「週4時間」だけ働く。』
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まつげエクステサロン経営
1982年、ヨークシャー生まれ。ウエストミンスター大学で商業音楽を専攻。卒業後は不動産関連やゴルフ場開発のフリーランス・コンサルタントになる。2014年に起業。
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■“フリーランス・マネジャー”が次の目標。未経験の業界に挑戦したい
世界でも一、二を争うイギリスの航空エンジン会社で、プロジェクトマネジャーを任されているヘザー・ステイプルトンさん。本来の所属先はドイツ系企業のエネルギー部門で、両社の業務契約に基づき、クライアントである航空エンジン会社のオフィスで働いているのだ。
ヘザーさんが暮らすイギリス中部は18世紀の産業革命発祥の地。今でも大小の製造業の本拠地となっている。学生時代にビジネス学を専攻していたとき、早く実務経験を身につけたいという思いで、在学中にエネルギー業界の会社に就職し事務職に就いた。その後夜間部に編入してグレード(※)を取得後、社内公募を利用し専門職となる。そして、現在籍を置くドイツ系企業に転職、4~20人のグループからなるプロジェクトのマネジャーにステップアップした。
「一緒に暮らすパートナーは、元同僚なので仕事の理解を得やすいのがいいですね」とヘザーさん。彼は毎週火曜から木曜は出張しているので、その期間はそれぞれ仕事に没頭。週末を含む4日間をともに過ごすという生活は、メリハリがきいている。
18年、上級マネジャーの職を得て、さらに責任あるポジションに。しかし、彼女の心を沸き立たせているのは、異なる分野の業界にチャレンジすること。これまでの仕事で得てきた知識、スキル、経験を生かして、銀行や金融業界など未経験の業界に挑戦したいと考えている。
「ゆくゆくは、フリーランスのマネジャーを目指します」とも。企業や団体でプロジェクトやリサーチのために期間契約で雇用される職で、パートナーもフリーのマネジャーとして働いている。業界を超えて働くことができ、正社員と比べて収入が飛躍的にアップするケースが多い。実力で勝負する世界だが、いつでもたゆまぬ努力と研さんを続けてきた彼女だから、その夢がかなうのも遠くないだろう。
週3回はジムに行き、サーキット運動や重量挙げなどのパーソナルトレーナーのアドバイスを受けている。走るのも好きでハーフマラソンに何度か挑戦。「体力づくりも仕事のうち」というヘザーさん。健康だからこそ、いい仕事ができるのだ。
※より専門的に学ぶことで得られる、進学や就職に必要な資格。学位とは異なる。
6:00 起床。
6:30 朝食。
7:00 クライアントのオフィスへ車で向かう。
8:00 顧客や同僚とミーティング。
12:00 同僚と昼食。
13:00 ミーティング、メールチェック。
18:00 退社。
19:00 ジムのクラスに行くかジョギング。
20:30 帰宅。パートナーが作った料理で夕食。
21:00 読書、個人メールのチェックなど。
22:00 就寝。
▼my favorite
●好きな映画→マット・デイモン主演『グッド・ウィル・ハンティング』
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多国籍企業上級マネジャー
1975年、ノッティンガム生まれ。地元のカレッジでビジネス学を専攻中に、エネルギー関連会社に就職、夜間部に移って勉強を続け、一般職から専門職に。2018年より現職。
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(Misako Sato 撮影=村松史郎、James Pickersgill)
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