家事をやる男性が日本で評価されないワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月17日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yagi-Studio)

家事・育児の分担や家族のあり方を研究してきた立命館大学教授の筒井淳也先生に、これからの共働き夫婦のあるべき姿についてお話を伺いました。キーワードは「生計維持分担」。日本ではフルタイムで働く夫婦ですら、2人で家計を維持していくという意識が低いと言います。その理由とは――。

■フルタイムでも稼ぐ覚悟がない女性も

真の共働き家族を目指すためには、「生計維持分担」がキーワードになります。「生計維持分担」とは、夫婦2人で家計を維持しているという意識があることです。

共働きと言っても色々あります。例えば、フルタイムでバリバリ働いている夫と、家計の補助として働いている妻という組み合わせの夫婦。それから、夫も妻もフルタイムでバリバリ働いている夫婦。

実はフルタイムで働いている女性でも、生計維持分担の意識がないことがあります。「私はいつ辞めてもいいけど、あなたは辞めちゃダメ」と思っている。真の共働き家族を目指すなら、夫婦2人とも、生計を維持していこうという意識を持っているはずです。女性側も「私の所得も生計にきちんと貢献しているし、夫も同じように貢献している」という感覚を持つことが大切になります。

■男性は大黒柱から降りたがっている

生計維持分担の意識があれば、例えばどちらかが転勤になったときに、「当然、女性側が仕事を辞める」ということにはなりません。少なくとも夫婦できちんと話し合うことになります。それぐらい対等になれば、互いに仕事に対して気持ちが楽になります。どちらかが働けなくなったら家計が行き詰まる状況だと、病気もできないし、ひと休みもできない。会社でひどい立場になっても辞められない。それは健康的な状態ではないと、私は思います。

女性の生計維持分担意識の低さは、社会の変化と共に、徐々に変わっていくでしょう。高度経済成長期以降は「大黒柱は一人」という風潮がありますが、男性はもはや大黒柱から降りたがっていると思います。女性も家計を一人で担いたくない人が多いでしょうし、2人で「真の共働き」はゆっくりと増えていくと思いますね。

■女性の稼ぐ意識が低い理由3つ

「生計維持分担の意識を持て」と言われても、女性が働きやすい環境はまだまだ整っていません。今のような状況では、生計維持分担意識を持てなくて当然だと思います。

今年19年10月から保育園の無償化が始まりますが、あまり好手とは思えません。待機児童の問題は、保育サービスが増えたら働く女性が増え、再びサービスが増えると働く女性がさらに増える……という繰り返しです。保育園の無償化は、それを加速させるだけになると思います。未だに待機児童問題が解消されておらず、供給の準備が全くできていない状況で行う施策としては、ミスマッチでしょう。やらないよりはいいのかも知れませんが、順番が違います。まずは供給を増やし、待機児童を無くしてから、無償化を進めるべきでした。

また、生計維持分担の意識を持てない理由として、男女間の賃金格差もあります(図表1)。フルタイムで働いている男女の賃金格差の最大要因は、女性の管理職が少ないことです。おそらく、残業をして、転勤も受け入れて、会社に貢献するという、日本的な働き方をしていないと管理職になれない会社が多いのでしょう。そこも改める必要があります。

待機児童、賃金格差、残業や転勤をよしとする日本的雇用など、社会課題は山積しています。よく、何から手をつければよいかと聞かれますが、それぞれの問題が絡まり合っていますから、少しずつでも全てを同時に進めていかないといけません。

■男性の家事時間はここ数年増えていない

真の共働きを実現するには、女性の管理職も男性と同等に増えていく必要がありますし、男性が家庭進出し、家事育児をやるようになる必要があります。

ところが、女性の有償労働時間はそれなりに増えていますが、男性の家事時間は、ここ数年でほとんど増えていません。家事や育児などの無償労働を男性が行うことが、なぜこれほど難しいのでしょうか。

■家庭での男女平等を実現するには

家庭での男女平等が進みにくい背景に、家事の基準のすり合わせは仕事のようにはうまくいかないことがあげられます。また、強制力も会社と比べると弱いです。家の中のことを夫婦で話し合って分担するというのは、疲れますし、面倒くささがあると思います。お互い広い心でやらないと、ケンカをして「もう全部私がやる」と、結局女性が引き受けることになりがちです。夫婦二人で家事のルールを決めて、クオリティをすり合わせて実行する――。会社だと他の人がやってくれる部分もあるかもしれませんが、全部自分達でやる必要があります。

非常に大変な部分ではありますが、仕事も家事育児も、男女がお互いに乗り入れることが重要だと考えています。

■無償労働も評価される社会に

現在は、学校での家庭科教育を男女共に受けているので、昔よりも男性は家事の教育を受けているはずです。インターネットでも調べられますし、やろうと思えば男性も女性と同じように家事育児ができるはずなのです。

男性が家事をやりたがらない理由の一つとして「評価されないからモチベーションが保てない」というのがあると思います。無償ですし、頑張ったところで出世するわけでもない。さらに、「やれて当然」などと言われてしまう。

とはいえ、家事や育児をやる男性を評価するようになればいいかというと、それもどうかと思います。女性からすると、「私はやって当たり前なのに」と不公平感が募るでしょう。ですから、男女に関わらず無償労働がもっと評価されるべきなのです。

そして、女性の無償労働が評価されるなら、男性の有償労働も評価すべきですね。長時間労働や転勤を受け入れて、馬車馬のように働かせられて、「男だから当然でしょ」なんて言われたら心が折れてしまいます。

男女とも、無償労働も有償労働も、互いに評価し合えるようになれば、「真の共働き夫婦」に近づくことができるのではないでしょうか。

(立命館大学教授 筒井 淳也 構成=梶塚美帆 写真=iStock.com)

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