東京23区内に「大きな眼科」が少ない裏事情

プレジデントオンライン / 2019年8月17日 11時15分

■高齢化によって増加した疾患は?

年を重ねると「眼が見えにくくなった」「疲れやすくなった」と感じる機会は増えていく。一体、どのような疾患に悩まされるのだろうか。

日本における視覚障害の原因疾患の1位は、緑内障だ。フジモト眼科理事長兼院長・藤本雅彦氏は、「近年、緑内障が早期に見つかる傾向があります」と説明する。

「これは人間ドックが発達し、さらに『40歳以上で20人に1人が緑内障』という啓蒙活動が進んだ結果かと思われます。一方、発展途上国における失明原因の1位は白内障。手術する医療体制がまだ整っていないためです」

それに対して日本は、白内障手術は一定の質が担保されており、多くの病院やクリニックで日帰り手術が行える。そのため、視覚障害の主要な原因にはなっていない。

「2位の網膜色素変性症は治療法が確立されていません。それに次ぐ糖尿病網膜症は、早期に治療介入ができるため、以前よりも重症の患者さんは減っている印象。逆に黄斑変性は、高齢化とともに増えている印象があります」(藤本氏)

藤本氏によれば、中高年に顕著な疾患は、緑内障、白内障、糖尿病網膜症、黄斑変性に結膜炎を加えた5つ。

■眼科で法外な治療費を請求されない理由

患者であれば気になる治療費。歯科などでは「高額な治療費がかかった」という話を耳にすることがある。眼科で同じような話を聞かないのは、なぜだろうか。

「眼科はほぼ保険診療で行われるため、診察料金はどこの病院でも基本的には同じだからです。自由診療は非常に限られていて、今のところ使われているのは白内障の手術で使用する眼内レンズくらいでしょうか。目のピントの合う距離が1つの『単焦点眼内レンズ』は保険が適用されますが、目のピントの合う距離が複数ある『多焦点眼内レンズ』は自由診療。両目で約80万円なので差益は大きい。とはいえ、だからといって無理やり勧める眼科医は少ないでしょう」(同)

視力矯正手術の一種であるレーシックも自由診療だ。しかし、角膜感染症問題が起きて以降、リスクを怖れてレーシックを受ける者はかなり少なくなった。また、コンタクトレンズの検査は保険診療。ただし、クリニックの施設基準や患者の割合によって保険点数が異なるため、どこに行っても同じ料金になるとは限らない。

一般的に自由診療がほとんどない眼科医。そのため、儲けはコストをどれだけ抑えるかで変わってくる。

■都心部で経営する眼科医は、なるべくコストを下げたい

「保険点数は全国一律なので、固定費の高い都心部で経営する眼科医は、なるべくコストを下げたい。賃貸坪単価がとくに高い東京23区内で、大きな眼科が少ないのはこのためです。都内で手術設備を作ったとしても、通常は外来患者の診察が中心となるため、医師が手術を行えるのはせいぜい週に1度。稼働率の低い設備投資は控え、診療スペースも必要最低限に抑えよう、ということになります」(同)

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Bill Oxford)

眼科経営は地域ごとに特色があり、車社会の中部圏では駐車場付きの一軒家タイプの眼科が多く、交通網が発達している大阪では、駐車場付きの眼科はほとんどない。地方では、手術を依頼する大学病院や総合病院などの搬送先が遠方になるため、すべての設備を自前で揃えざるをえず、規模が大きくなることもある。

最後に、眼科の受診で気をつけるべきことを聞いてみた。

「眼科医は、角膜、白内障、糖尿病、緑内障など、それぞれの専門分野を持っています。まず、受診する医師の専門が何かを知ることは非常に大切です。そして、医師が自分の疾患の専門でない場合は、その分野の専門医にきちんと紹介をしてもらえるかを確かめておくとよいでしょう」(同)

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藤本雅彦
フジモト眼科理事長兼院長
日本眼科学会認定眼科専門医。2012年よりフジモト眼科理事長に就任し、15年より院長も兼任。年間1000件以上の白内障手術を手掛ける。著書に『「白内障手術」で絶対に後悔しないための本』。

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(山田 由佳 写真=iStock.com)

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