橋下徹"なぜ枝野さんは政権を獲れないか"
プレジデントオンライン / 2019年7月31日 11時15分
■野党陣営はできるだけ早く候補者を一本化せよ
参議院議員選挙が終わり、自民・公明が圧勝したが、憲法改正の発議をするために必要な3分の2の議席は確保できなかった。
すかさず、7月25日に、国民民主党の玉木雄一郎代表が、憲法改正に前向きな発言をした。ところが翌26日には、発言を事実上撤回。これまでの姿勢に変わりはないという。党内において猛反発が出たので、それに配慮したらしい。
国民民主党のこのような姿勢が、有権者の心を遠ざける。
(略)
今回の参議院議員選挙の投開票日の7月21日、僕は、関西テレビの選挙特番に出演した。その際、僕は立憲民主党の枝野幸男代表と、玉木さんと話す機会があった。
僕は枝野さんに「野党の一本化にあたって、国会議員同士で協議するやり方は、有権者を引きつけないのではないか? やはり野党間で予備選挙をする必要があるのではないか?」と尋ねた。
枝野さんは「今回の統一候補は国会議員だけで決めたわけではない。市民連合の皆さんにも関与してもらった。野党間の予備選挙は今の日本の制度上できない。これからも私の責任で野党候補を統一していく」と答えた。
僕はさらに「野党の方向性として、立憲・共産の方向性(A)と維新・国民民主の方向性(B)のいずれがいいのかを、まずは各党が激論で戦い、自民・公明党と戦う前に、野党間で準決勝をやるべきでは? 有権者は野党間の激論を見たがっているはず。野党間でつぶし合いをすることが有権者を引きつけるのでは?」と尋ねた。
しかし枝野さんは「私の責任で候補者をまとめていく」と答えるのみだった。
衆議院議員選挙は、小選挙区比例代表並立制を採用しており、勝負となる小選挙区は一選挙区に一人しか当選しないので、与野党の候補者は必ず一騎打ちの状態にしなければならない。すなわち、与野党の陣営において、候補者を2名以上出した時点で、陣営内で票が分散し、その陣営は負けとなる。
自民党・公明党の与党はきっちりと調整し、全選挙区、かならず候補者を1人に絞る。
問題は野党だ。
これまで各野党間で調整がきちんとできずに、野党陣営の複数候補者が立候補する選挙区が多かった。その時点で、野党は負けが決まる。
政権を決める(内閣総理大臣を決めるのは事実上衆議院議員による多数決)衆議院議員選挙において、小選挙区制を採用したということは、与野党が競い合う二大政党制を目指していることにほかならない。そして、野党が強くなって、与党に緊張感を持たせ、与野党が切磋琢磨することが二大政党制の目指す姿だ。
とにもかくにも野党には強くなってもらわなければ、日本のためにならないが、野党陣営が各小選挙区において候補者調整がつかず、候補者を複数人擁立した時点で、弱い野党になることが決まってしまうという事態が、今の日本の不幸である。
来るべき衆議院議員選挙に向けて、できる限り早く、野党陣営は候補者を1人に絞らなければならない。というのも、選挙直前に候補者を1人に絞っても遅い。それでは候補者が地元での政治活動が十分にできないからだ。
各野党は、次の衆議院議員選挙に向けて、各選挙区において候補者を一本化し、その候補者に地元活動をできる限り早く徹底的にやらせるべきだ。
このように野党が強い野党になれるかどうかの、しょっぱなの試金石となるのが候補者の一本化であるが、枝野さんは「私の責任で行う」を繰り返す。
申し訳ないが、枝野さんの責任による候補者一本化では、数千万人の有権者の気持ちを引きつけることはできないだろう。
ここは有権者自身に野党陣営の候補者一本化を委ねるべきだ。
それが野党間の予備選挙だ。
枝野さんは、「それは制度上できない」と言っているが、このような官僚的な答えをする政治家、政党に、日本の制度大改革などできるだろうか?
官僚は、なにかあれば、法律上できません、制度上できません、と答えてくる。既に存在する法律や制度をしっかりと守るのが官僚の仕事だから、それは仕方がない。
だからこそ、その法律や制度を変えていくのが政治家の仕事なんだ。政治家は「制度上できない」という言い訳をしてはならない。制度を変えればいいだけなんだから。
■山本太郎氏の政策には反対だが手法は評価したい
野党間の予備選挙など、ちょっと知恵と工夫を施せば、簡単にできることである。
実際の投票でやろうとすると、投票権者を確定しなければならず、これは難しい。別々の党をまたいで予備選をやるとなると、各野党の党員を投票権者とせざるを得ず、そうなると党員数で、事実上、勝負は決まってしまう。
ゆえに予備選挙といっても、実際の投票で決めるのではなく、世論調査を活用すればいい。
(略)
これくらいのこともできない政治家、政党が、日本に山積している超大型課題を解決することなどできるわけがない。
今、野党は、与党に反対することが仕事になっている。反対するのは非常に楽だ。しかし、「反対するのはいいけど、じゃあどうするの?」と突き付けられた時にこそ、政治家・政党の力が試される。まさに法律や制度を作る構想力、実行力であって、今の野党に欠けているのはその点だ。
だからこそ、予備選挙の制度がないなら、その制度を作って実行力を示すべきだ。制度がないからできない、と答える野党に、有権者は実行力を認めることなどできず、政権を委ねることはないだろう。
ゆえに、枝野さんの「制度がないからできない」という答えは野党の党首としては最悪の答えだった。
野党が予備選挙の制度を作り、予備選を実行すれば、今度は野党間でつぶし合いだ。
野党間で激論を戦わせれば、メディアも報じざるを得ない。有権者も、これまで抱いていた野党への関心よりも、はるかに強い関心を抱くことになるだろう。
激論がショー的になってもいい。とにかく、野党に関心を持ってもらわなければならない。そして最後のジャッジは、世論調査の結果によって行う。極めて、クリアーな決め方だ。
(略)
野党は、どうすれば数千万人の有権者を引きつけることができるのか、真剣に考えるべきだ。賛否はあるだろうが、ショー的な要素を入れることも必要になろう。
僕は、「奨学金チャラ」のところ以外は、彼の政策にはまったく賛同できないし、彼が掲げる政策などを実行すれば日本は沈没すると思っているが、それでも山本太郎氏のショー的なやり方には有権者を引きつける力がある。野党間予備選挙に彼を参加させれば、予備選が盛り上がることは間違いないと思う。
(略)
(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約1万2600字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.161(7月30日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【野党予備選】参院選後の今だから言う! 予備選くらい実現できない野党に政権奪取の資格はない/【令和時代の天皇制(4)】秋からの皇位継承論議に向けて提案したいこと》特集です。
(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)
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