雑談のないチームからヒットは生まれない

プレジデントオンライン / 2019年7月19日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/daruma46)

チームの力を引き出すには、なにが重要なのか。オウンドメディア「サイボウズ式」では、オンラインに雑談スペースをつくることで、最大のヒット記事が生まれたという。サイボウズ式の藤村能光編集長が、その背景を解説する――。

■チーム作りは「雑談」で決まる

チーム内のコミュニケーションの流量を増やすには、コミュニケーションツール内を仕事のことだけを語る場所にしないほうがいいでしょう。サイボウズ式編集部では、グループウェアのスペース内に「藤村のつぶやき」といった個人が思ったことをつぶやく場所も用意しています。ここでは仕事とは関係のない、たわいないつぶやきも大歓迎です。編集部メンバーは、みんな独自に自分専用の「つぶやき掲示板」を設けています。

このつぶやき掲示板もオープンな状態で、編集部と社員みんなが閲覧できるようになっています。雑談タイプのつぶやきのほうが盛り上がることもあるぐらいです。だって、雑談や井戸端会議って楽しいじゃないですか。話をしていると、すぐに時間が過ぎてしまうような感覚は、誰もが体験したことがあると思います。それをオンラインスペース上でも実現したい。言うなれば「オンライン雑談」です。

最近は、チームにおける「雑談」の重要性が増していると感じます。マネジメント手法のひとつに、マネジャーとメンバーが定期的に話し合う場を設ける「1on1」ミーティングがあります。第1章でも触れた通り、サイボウズでもこの「1on1」のミーティングを導入していて、週1回、マネジャーと各メンバーが話し合う時間をとるようにしています。サイボウズではその時間を「ザツダン」と呼んでいます。

■「ホウレンソウ」よりも欲しいのは「ザッソウ」

ザツダンでは、その名の通り雑談をします。目的は「相手を知ること」です。そのため、話の内容は仕事以外に休日の話やプライベートな報告など多岐にわたります。ザツダンは、チームのみんなの人となりを知ることに直結します。

僕の場合、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」よりも「ザッソウ(雑談・相談)」を重視する考え方をしています。これは、ソニックガーデン代表の倉貫義人さんが提唱している考え方で、この言葉に僕は非常に感銘を受けました。こうまとめるとやや乱暴かもしれませんが、「雑談はチームマネジメントによく効く」と思いますし、結果としてチーム内での心理的安全性が生まれることにつながっています。

そんな雑談をオンラインの場でも活発に行うというのは、「マネジャー対メンバー」という1:nの場を、「チームメンバー:チームメンバー」というn:nの関係性に適用することでもあります。「その人を知ること」が、僕だけではなくチーム全体に広がっていく効果があるのです。

■情報共有の場はいつでもフルオープン

情報共有の場をフルオープンにして、投稿やコメントのハードルを下げ、誰でも書き込みやすい雰囲気をつくることができれば、自然とアイデアが集まってきます。こうした場をつくるなかで僕がとりわけ大事にしているのは、思いつきを投稿したり、直接業務とは関係のない雑談や井戸端会議のようなやりとりです。むしろ、仕事に直接関係ないことでも、お互いに情報を共有し合うことを推奨しています。

企画系の仕事であるなしにかかわらず、自分だけでは思いもつかなかったようなアイデアがふと生まれるときがあります。そして、こういったアイデアは、自分以外の誰かと雑談や井戸端会議をしているときにふと思い浮かぶことが少なくないのです。

企画の仕事にかかわる人ならば、『アイデアのつくりかた』(ジェームス・W・ヤング著)という本を知っているかもしれません。この本では、アイデアはゼロからは生まれない。既存のアイデア同士の掛け合わせで新しいアイデアが生まれるということを説いています。アイデア同士が掛け合わさってこそ、新しいアイデアが生まれます。とすれば、掛け合わせのアイデアや切り口の数が増えれば増えるほど、新しい価値を生み出すアイデアが出てくるはずです。

■最大のヒット作は、営業部からやってきた

思いつきのアイデアを出す、井戸端会議のようなザツダンをオンラインで推奨することは、このアイデアの掛け合わせを誘発するようなものです。しかも、仕事に直接関係のない話題にこそ、きっかけがあったりします。人の数だけ視点が存在し、他人のアイデアや切り口は自分が持っていないものもたくさんあります。それをも共有することで、新しい価値がチームから生まれる可能性が出てきます。

他部署から寄せられるアイデアに、編集部のメンバーがアイデアを掛け合わせて新しい価値を生み出した企画はいくつもあります。サイボウズ式の最大のヒット記事がこちらです。営業チームのメンバーが、同僚に代わって子守をした様子を描いています。

サイボウズ式の最大のヒット記事。「いいね!」数は2.1万を超えた。

インセンティブの達成など、個人の成果に重きを置きがちな営業という職種において、チームで営業することの大切さを伝える内容でした。SNSでも大量にシェアされ、「いいね!」数は2.1万を超えました(2019年7月現在)。

驚くべきは、この企画の素案を書き込んでくれたのは、営業本部の社員でした。そして、最初にこのアイデアを書き込んでもらったとき、編集長である僕は、この切り口のおもしろさに気づいておらず、スルーしてしまいました。

■外の人をチーム内に意図的に招き入れる

ここに待ったをかけ、「このアイデアは絶対におもしろくなる」と言って、形にしてくれたのが、営業経験もあるサイボウズ式編集部のメンバーでした。営業経験からくる感性によってこのアイデアが企画として日の目を見て、結果的には過去最大のヒット記事になったのです。ページビューは1週間で10万以上。これまでの企画にないような伸びでした。

藤村能光『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』(扶桑社)

編集部は企画を作るコアの役割を果たしますが、企画のタネのすべてを編集部がまく必要はありません。特にオウンドメディア運営に必要な企画のタネは、編集部以外の社員が持っていることも少なくありません。オープンな環境と誰もが書き込めるラフさ、そしてチームで物事に取り組むというスタンスが揃えば、企画のアイデアは誰でも出せる可能性があります。そして、思いもよらない仕事の成果につながっていく。それを実感した瞬間でした。

「チームの外の人」をはねのけない。むしろ、外の人をチーム内に意図的に招き入れて、良き突然変異を巻き起こす。これぞ、オープンな情報共有とチームで仕事をすることの醍醐味です。

こうした試行錯誤を経て、僕たちはチーム作りに取り組んできました。チームにはいろいろな個性があるという前提のもと、それでもみんなでひとつの目標に向かうにはどうすればいいのか? みんなからさまざまなアイデアを引き出すにはどうしたらいいのか? それを自分たちで実践するなかで感じた苦労や発見を、働き方という切り口を通して読者に見せるのが、サイボウズ式というオウンドメディアなのです。

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藤村 能光(ふじむら・よしみつ)
サイボウズ式 編集長
1982年大阪生まれ。神戸大学を卒業後、ウェブメディアの編集記者などを務め、サイボウズ株式会社に入社。製品マーケティング担当とともにオウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げにかかわり、2015年から編集長を務める。メディア運営や編集部のチームビルディングに関する講演や勉強会への登壇も多数。複業としてタオルブランド「IKEUCHI ORGANIC」のオウンドメディア運営支援にも携わる。趣味はコミュニティ活動とサウナ。
・Twitter:https://twitter.com/saicolobe

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(サイボウズ式 編集長 藤村 能光 写真=iStock.com)

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