普通の会社員がお金持ちになる唯一の方法

プレジデントオンライン / 2019年7月22日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

多くのミリオネアを見てきた経済コラムニストの大江英樹さんは、意外と会社員にもミリオネアは多いと言います。彼らが億単位の資産を築いた方法とは?

■“億り人”には会社員も多い

日本は働いている人の多くは雇用者、つまり俗に言う会社員です。総務省統計局が発表している「労働力調査」によれば、2019年5月の時点で就業者の数は6,732万人ですが、この内、雇用者の数は5,993万人となっているので、働く人の約9割は会社員と言っていいでしょう。会社員という言い方には、「平凡な」とか「しがない」といった枕言葉がつくことが多く、会社で働くビジネスウーマンにとってはあまり呼ばれたくない呼称かもしれませんが、今回のテーマは広く会社で雇用されて働いている人が前提となるため、本稿での言い方も会社員で統一させていただくことをお許しください。

その会社員の多くは、「我々は所詮、会社員で決まった給料しか貰えないのだからお金持ちになれるわけがない」と思っています。ところがこの考えは正しいのでしょうか? 私は長年にわたって証券会社で投資相談の仕事をしてきましたので、金融資産を億単位で持つ人々、最近流行りの言葉で言えば“億り人”をたくさん見てきました。そしてそれらの人の中には意外と会社員が多いのです。

■資産づくりの大原則とは

今から20年ほど前にアメリカで出版された「となりの億万長者(原題:The Millionaire next door)」という本があります。この本は純金融資産(持っているお金から借金を引いたもの)が百万ドル以上ある人達の考え方や生活習慣等を調査した、なかなか興味深い本です。この本によれば、億万長者と言われている人達は決して華やかな暮らしをしているわけではなく、とても地味で質素な暮らしをしていると言います。着飾って高級外車で毎夜パーティーに出かけるような生活をしている人は意外とお金は持っておらず、どこにでもいる普通の人が億万長者だったりするということが書かれていますが、この事実は数多くのお金持ちを見てきた私の感覚とも一致します。

この本にも出てきますが、資産作りの大原則は「入ってくる以上に使わない」という、ごくシンプルなことです。そのためには、まず何よりも「入」と「出」がどれぐらいあるか?ということが正確に把握できなければなりません。

■“お金持ち”のイメージのあるタレントだが……

世の中で、俗に“お金持ち”とか“資産家”といわれている人達といえば、タレント、お医者さん、そして企業のオーナーいったイメージでしょう。彼らに共通して言えることは、収入が必ずしも一定ではないことです。オーナーなら事業が当たれば、大きな儲けが出るし、タレントは有名になれば、出演料やCMで大きな収入が入ってきますが、下手をすれば一銭も入ってこないことだってありえます。つまり「入」は読めないのです。一方、「出」は、特別に贅沢な生活をしていなければ、ある程度読めるはずでしょうが、タレントなどは仕事柄生活が派手になりがちだし、商売や事業をしていると設備投資や商品の仕入などの機会があれば、資金を出さざるを得ません。つまり不安定な収入と意図せざる支出に悩まされ続けることになるのが彼らの生活なのです。

これに対して会社員の場合、収入はずっと安定していますし、支出にしても大きな病気にでもならない限り、あまり意図せざる出費というのはありません。すなわち「入」と「出」がきちんと読めるのが会社員なのです。したがって、やり方さえ間違わなければ会社員の方がずっと計画的に資産形成ができ、お金持ちになれる可能性はあります。にもかかわらず、多くの会社員はなかなか資産形成ができません。これは一体どういうわけでしょう?

■将来の蓄えが増えない2つの理由

これには「現在バイアス」という心の罠があります。これはいやなことや面倒なことを先延ばしにしたいという心理です。例えば小学校の時の宿題を夏休みが終わる前ぎりぎりになって慌てて取り組んだという人は多いでしょう。宿題という嫌なものは早くやるに越したことはないとわかっていてもつい目先の利益、つまり遊びに行く方を優先させてしまう傾向、これが現在バイアスなのです。このため、人はどうしても老後のための資金を貯めるよりも遊びや買い物に使ってしまいがちになってしまう傾向があるのです。

さらに厄介なことに遠い将来に得られる利益の価値を低く見積もり、目先の価値をより高く評価してしまう「双曲割引」という心理現象もこれに加わるから余計に将来に向けた蓄えは難しくなります。1年後のスリムな体型を想像する楽しみよりも目の前のショートケーキの美味しい誘惑の方が魅力的に決まっているからです。

会社員の場合を考えてみると収入はほぼ一定なので問題ありませんが、支出がこの現在バイアスや双曲割引によって大きく乱れがちになります。資産形成のために計画的に貯蓄や投資をすべきだとわかっていながら、どうしても目先の旅行や食事などの楽しいイベントにお金を使ってしまうということになりがちです。さらに買い物についても本来は計画的に支出していくべきなのですが、つい衝動買い等をしてしまうということも起こりがちです。

■給与天引きは最強の資産形成術

では一体どうすればいいのでしょう? 会社員ならではの対策が二つあります。まずひとつは給与天引きをフルに活用することです。実は給与天引きには不思議な効果があります。それは行動経済学で「メンタルアカウンティング=心の会計」といって、同じようにお金を動かしても心の中で勝手に仕訳される不思議な心理のことです。

最初から一定額を天引きし、残ったお金で生活するようにすれば、知らず知らずのうちにお金は貯まっていきます。一定額を強制的に天引きすることで、最初は少し生活が窮屈に感じてもすぐに慣れてくるのです。なぜなら天引きで引かれてしまったものは最初から「無かったもの」と認識されるからです。そうすれば天引きされた後の残りのお金はどんなに無駄遣いしても大丈夫です。もし会社に給与天引きで貯蓄をする仕組みがなければ、銀行からの自動引き落としでもかまいません。

■社内制度で貯めたお金は残る

次に、「会社の制度を利用すること」です。以前、このコラムで「会社の制度を利用することのメリット」について取り上げました。その時に、会社の制度というのはお得だと言いましたが、実はそれだけではなく、心理的にも資産形成には有意なのです。その理由は社内制度というのが「始めるのは簡単だけど、引き出すのは面倒」ということが多いからです。

一般的に社内制度で貯められたお金は銀行のATMで簡単に引き出すようなわけにはいかないことが多いでしょう。社内的に書類を出したり、場合によっては上司の印鑑をもらったりしなければならないこともあります。この面倒さや、上司にハンコをもらいに行った時によけいなひと言を言われるくらいなら使うのは我慢しようと考えたり、別のお金を使おうという気持ちになったりしがちです。結果として社内制度で貯めたお金は“残る”のです。

実際に会社員で多くの金融資産を作った人を見てみると、そのほとんどは、何か特別なことをしているわけではなく、こうした給与天引きによる制度を長年に亘って地味に実行してきた人達であることがわかります。あらためてお金を貯めるというのは相当な決心が必要です。だとすれば「会社の制度」を「天引きで」利用することは心理的な要因を逆に利用することで手間をかけずにお金が残っていくことになるのです。

ビジネスウーマンがタレントよりもお金持ちになれる秘訣、それはごく身近なところにヒントがあると言っていいでしょう。

(経済コラムニスト 大江 英樹 写真=iStock.com)

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