40歳以上の20人に1人が「緑内障」だった
プレジデントオンライン / 2019年8月2日 17時15分
■Q.「目」の定期検診は受けたほうがいいか?
■視力検査は、病気の発見のためにあった
眼科の定期検診は、もちろんできれば誰もが受けたほうがいいです。でも、みなさん忙しいでしょうから、若い人は「何か気になる症状があったときに眼科に行く」という程度でいいと思います。
しかし、40代になったらぜひ、眼科の定期検診を受けてください。一番の理由は、緑内障の可能性が高まるためです。
緑内障は、日本人の視覚障害の原因として一番多く、視神経に障害が起きて少しずつ見える範囲(視野)が狭くなり、失明につながる怖い病気です。40歳を過ぎるとかかるリスクが高まり、40歳以上の5%、つまり20人に1人がかかっているという研究報告もあります。
早い段階で発見して治療を始めれば、進行を遅らせることができるのですが、初期は自覚症状がほとんどないために気付きにくく、定期的に検診を受けないとわかりません。
病気が進行してから治療を始めても、1度損なわれた視神経は元に戻りません。ですから緑内障は早期発見が非常に重要なのです。
さらに、緑内障にかかわらず多くの目の病気は、早期発見が重要なのに自覚症状がほとんどないという特徴があります。目は2つあって、片方に異常があっても、もう片方がその機能をカバーするという、とてもよくできた器官です。このため、片方の目で視力が落ちたり視野が狭くなったりしても、なかなか気付かないのです。
会社や自治体の健康診断には、視力、眼圧、眼底などいくつか眼科の検査が入っていますが、それぞれの目的はご存じでしょうか。
まず視力検査は、病気の発見のためというイメージは持ちにくいかもしれませんが、そうではありません。視力の悪化の背景には、何かしら目の病気がある可能性が高いからです。もちろん、メガネやコンタクトレンズが合っていないといった理由で視力が落ちている可能性もありますが、前述の緑内障のほか、白内障や加齢黄斑変性など、あらゆる目の病気の症状が視力の低下に表れます。
眼圧の検査は、主に緑内障の可能性を調べます。基準値よりも高いと、緑内障の可能性が高くなります。
眼圧とは眼球内の圧力のことです。目の表面にある角膜と、目のレンズにあたる水晶体の間には、房水という水が流れていて、眼圧を保っているのですが、房水の流れが滞ったり、詰まったりして流れなくなると眼圧が上がってしまいます。すると、目と脳をつなぐ視神経が圧迫されて傷つき、少しずつ見える範囲が狭まり、緑内障になるのです。
しかし日本人は、眼圧が高くないのに緑内障が起こることも多く、眼圧だけでは判断できません。視野の検査や眼底検査なども行って、あわせて判断します。
目の一番奥のほうを見る眼底検査は、検診では眼底の写真撮影をして、後で眼科医が写真を見ることが大半です。瞳孔から入った光を受ける網膜や、視神経の状態を見て、緑内障や、水晶体が濁る白内障、網膜に異常が起きてものが見えにくくなる加齢黄斑変性などの可能性を調べます。
■眼科で行われる「眼科ドック」を考えてほしい
眼科の病気のリスクが高い人はぜひ、眼科で行われる「眼科ドック」を考えてほしいと思います。血縁に緑内障の人がいる場合や、強い近視の人、血圧が高い人は、緑内障になる可能性が高いことがわかっています。一般の健診に含まれる眼科健診は簡易的なものなので、2~3年に1回くらいは眼科ドックなどで診てもらうと安心です。
例えば当院で行っている眼科ドックでは、CT(コンピュータ断層撮影)のように赤外線で目の中の断層撮影を行い、網膜や視神経の状態を細かく見る三次元眼底解析検査(OCT)や、視野検査、涙の量を調べる涙液検査、角膜の細胞の状態を調べる角膜内皮細胞検査などを行い、目の病気がないか判定します。検査時間は約2時間です。
▼緑内障が増える40代から定期検診。眼科ドックも視野に
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医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長
千葉大学医学部卒、東京大学医学部大学院修了。眼科専門医。専門は緑内障。138年(創立1881年)の歴史を有する日本有数の眼科専門病院のトップを務める。著書に『視力0.1でも豊かな生活を送る 目の健康を守る本』など多数。
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千葉大学医学部卒、東京大学医学部大学院修了。眼科専門医。専門は緑内障。138年(創立1881年)の歴史を有する日本有数の眼科専門病院のトップを務める。著書に『視力0.1でも豊かな生活を送る 目の健康を守る本』など多数。
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(医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長 井上 賢治 構成=大井明子 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
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