ベンツ社長が40代でトライアスロン始めたワケ
プレジデントオンライン / 2019年8月10日 9時15分
上野金太郎●メルセデス・ベンツ日本社長 1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒業後、メルセデス・ベンツ日本に新卒採用1期生として入社。商用車部門取締役や副社長などを経て2012年に代表取締役兼CEOに就任。
■トライアスロンで、判断が速くなった
クルマや電車……。快適に移動する手段を提供する業界に携わる経営者は、意外にも自らの体を動かすことを好んでいた。経営者の1週間の平均運動時間のデータを見ると、2~3時間以上運動する人の割合は一般人が58%に対し、71%。経営者には体を動かす人が多いのだ。
「脳科学の研究で、週2時間以上の運動をすると認知症発症率が2分の1以下になることがわかっています。ほかにも、運動には免疫力を高めたり、新陳代謝を活発化させるなどの効果があり、日々健康な状態で最適な判断が求められる経営者に運動は必須と言えるでしょう」と精神科医で、ベストセラー作家でもある樺沢紫苑氏。
アンケートでは「パーソナルトレーニングをしている」という社長が目立った(フェイスネットワーク・蜂谷二郎氏、ファクト・菅在根氏ほか)。「シニアのアメフトリーグで週1回ほど現役選手として活動」(アクティブ・ギア・高野知司氏)といった回答もあった。
その中でも、特に激しい運動を健康法として実践する社長がいる。メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長だ。彼は、年に1回参加するトライアスロンと自宅周辺のジョギングが習慣となっている。
「トライアスロンは1.5キロメートル泳いで、40キロメートルを自転車で、10キロメートルを自分の脚で走って合計51.5キロメートル。これをもう8年続けています」
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始めたのは40代のとき。きっかけは何だったのか。
「子どもがまだ7歳のときでした。一緒に公園に遊びに行ったときに、たまたまセミの抜け殻が木に付いていて、『お父さんが取ってやる』とジャンプしたんです。その瞬間、全身に電気が走り、ストンとそのまま落ちて転げたんです。これは衝撃でした。体がもう自分の思っているのと違うんだなと強く実感しましたね」
当時は会食が多かったこともあり、体重が今よりも10キログラム以上あり、悩んでいたという上野氏。
「それを機会に加圧ジムに通い始めました。すると、3カ月で、あっという間に8キログラム痩せたんですよね。その後たまたまトライアスロンの第一人者の方と出会うきっかけがあり、誘われて今に至ります」
トライアスロンに取り組むため、ジョギングを始めたのはこの頃から。
「海外出張に行くたびに、走るようになりました。ドイツでの会議が10時前後なので、朝の時間は空いています。知らないところを自分のペースで、小走りからだんだん走るペースにしていきます。走るのは時差ボケにも効きます。出張が年200日を超えるので、そのたびに走っていることになりますね」
走ることによって得られる仕事のメリットもある。
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「走って汗をかくと、全体的にメリハリが生まれるんです。走りながらいろんなことを考えているので、仕事での判断が速くなりました」
上野氏の経験談は、樺沢氏によれば脳科学的に裏付けられたものだ。
「有酸素運動をすることで集中力と記憶力、創造性が高まることが実験で明らかになっています。そのため、集中力が切れた夕方にジムへ行けば、もうひと頑張りできるようになります。夕方は代謝が最も高まる時間なのでダイエットにもおすすめですね」
上野氏によれば、続けるコツは何より楽しむこと。
「トライアスロンは、結果よりは完走が大事です。私は、水泳と自転車の練習はほとんどしません。一方でジョギングは出張先や自宅周辺で毎朝できる。無理なく続けられる運動から始めるのがおすすめです」
■日々の散歩は、うつの予防に
JR西日本の来島達夫社長の習慣は週末2時間の「町歩き」。その効果もあるのか、長年の付き合いがあるJR西日本のとある社員は「もう20年くらい体形が変わっていませんよ」と驚いている。
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「もともと、時間があった頃は六甲山の縦走大会に年に一回出ていました。朝5時から夜7時までアップダウンのある山道を歩くと、よいリフレッシュになります。旧国鉄時代、仙台にいたとき蔵王に登山したこともあります。最近は登山からはすっかり離れてしまいましたが、その習慣があったこともあり今はもう少し神戸の海のほうの街歩きを続けています」(来島氏)
樺沢氏によると、週2時間以上の運動は認知症発症率を大きく下げることにつながる。
「散歩はうつ病予防にも効果があります。フィンランドの研究では、1カ月の間5時間以上自然の中で過ごす人には、うつ病の人がほとんどいないという結果が出ました。月にたった5時間自然の中で過ごすだけで、ストレスの大部分が発散できるのです。また、この効果は、自然の中に限らず、街中の公園でも得られることがわかっています。日中の散歩(特に公園や緑の多い場所)が、いかに効果的かわかる研究です。一定の運動時間の確保が難しい方は、毎日30分でもよいので公園でランチを摂りましょう。緑や青空を見ると気分転換になる自然効果というものを得られます」
来島氏は、毎週末の定番散歩コースがあるという。
「よく歩くのは兵庫運河沿い。サッカーのノエビアスタジアム神戸の芝生広場から見る神戸の景色はキレイで、軽く走ることもあります」
■スタジアム周辺を1周1時間かけてスロージョギング
スタジアム周辺を1周1時間かけてスロージョギングすると、この季節はじわりと心地よい汗が流れてくる。これくらいの運動量が自分には適度だという。
「ジョギングは、自分で行う体調チェックも兼ねています。体に適度な負荷をかけることで、足腰のコンディションも確認できますから、問題があればすぐにわかります」
来島氏が運動する時間帯は朝だったり夕方だったり時間はまちまちだというが、樺沢氏は「朝の散歩は効果的です」と指摘。
「朝日を浴び、リズム運動することで、癒やし物質のセロトニンが活性化するからです。セロトニンが出ることで今日も一日頑張ろうという気力が出ます」
そんな来島氏の平日の睡眠時間は5~6時間程度。運動以外に食生活で気にしているのが野菜中心の食事や、ビタミン系のサプリも摂取することのほかに、食事の量だ。
「社長に就任してから年を重ねるとともに体が動かなくなっている実感はあります。炭水化物は控え、夜の会食でもお酒はビール1杯程度にしています」
食事で体に負荷をかけず、運動では適度な負荷をかける。まだまだ健康でいるために、来島氏は神戸の街を歩く習慣を続けていくつもりだ。
(集計協力=mikuPR、アイランド・ブレイン、ネタもと、高橋史佳)
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精神科医
1965年、札幌市生まれ。札幌医科大学卒。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』など多数。
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編集者・ライター
1985年生まれ。12年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。専門分野は金融、起業、IT、不動産、自動車、婚活、美容など。
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(編集者・ライター 鈴木 俊之 撮影=長谷英史、篠塚ようこ)
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