「還暦過ぎても見た目は40代」南雲医師の食生活
プレジデントオンライン / 2019年8月31日 17時15分
■菜食主義も健康食品も効かなかった
30代の頃は、体重が80キロ近くありました。世はちょうどバブルに浮かれ騒いでいた時代。毎晩、夜更かししては暴飲暴食し、タバコが切れると人にもらって吸っていましたよ。もちろん、運動もしないし、移動もタクシー。肥満のため不整脈がひどく、腰と膝に負担がかかって腰痛ベルトが手放せないありさまでしたね。
現在の私は体重61キロ、身長173センチ。BMIは20.3です。体脂肪率は19%。自分でいうのは気恥ずかしいですが、ウエストはくびれ、子どものようにすべすべした肌が自慢です。髪もふさふさで、64歳という年齢を明かすと、いつも周りに驚かれます。
簡単に若返ったわけではありません。38歳のときにメタボ体形の自分に嫌気がさし、あらゆる健康本に書かれた若返り法を実践するようになりました。完全なベジタリアンだった時代もありますし、話題の健康食品もあれこれ試しました。日傘を持ち歩き、徹底的に紫外線を避けていたこともあります。結局、効果があるものはさほどなかったというのが私の出した結論でした。
新しいものを見極める術も身に付けました。どんなものも、まず3日間試してみて体の不調を感じたら、使用を中止するようにしています。とくに体調不良などはないけれど、3週間続けて効果を体感できないものもダメ。また、3カ月間続けられないようなものは、見切りをつけることにしています。名付けて、「3・3・3の法則」。世間の口コミに惑わされず、自分に合ったものを探すことが肝心です。
試行錯誤の末、いま実践しているライフスタイルはきわめてシンプルなものです。
■仕事の間のおやつはナッツや小魚が最適
食事は、10年以上前から「一日一食」のルールを決め、実践しています。朝は消化しきれていない前の晩の食べ物が胃に残っていることもあるので、ほとんど何も口にしません。昼も基本的に食べない。当然、空腹でお腹が鳴りますが、あわててカップ麺をかきこむなどということは決してしません。人類は地球上に誕生してから、長い間、飢餓状態を耐え、生き延びてきました。空腹こそ、延命遺伝子とも呼ばれる「サーチュイン遺伝子」を活性化させるカギである、とする研究結果もあります。
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▼「一日一食」の健康食をお店で表現
(写真左から)●鎌倉市にある「日本料理 吟」では南雲医師が提唱する健康食が提供されている。●果物は皮ごと食べる。●雑穀玄米、渡り蟹の栄養が凝縮した土鍋ご飯。一日一食のメーンだ。●塩分カットのため、醤油の代替としてパンプキンシードオイルを使う。刺身にもオススメ。
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そもそも現代人は過食気味。胃腸が疲れているときは、食事を抜いたり軽くしたりして休ませるというのは医学的な原則です。それに、ご飯や麺が中心のランチをがっつり食べると眠くなりますからね。大事な手術中に頭がぼうっとするようでは、医師として失格でしょう。どうしてもお腹が減ったときは、糖質を含まない食べ物をつまみます。コンビニのおつまみコーナーにある柿の種以外のもの、ナッツや小魚、チーズなどは向いています。
■うどんよりも十割そば 果物も皮ごと食べる
それだけに、唯一の食事である夕食はじっくり味わっていただきます。メニューは「低糖質で完全栄養、かつ高ポリフェノール」と決めており、オメガ3の油と、塩分や化学調味料を減らした発酵食品を欠かしません。このルールを守れば、メタボの原因となる糖質、油(脂質)、塩分の3つを抑えることができます。
痩せるために、糖質の高いご飯やパン、麺をあきらめる人も多いようですが、私は主食を抜きません。ただし、白米でなく、より糖質の低い雑穀玄米を食べています。全粒ですので皮のなかにポリフェノール、ビタミン、ミネラル、食物繊維がしっかり含まれている。いわば「完全栄養」です。同様の考え方で、パンなら白パンでなく精製度の低い粉を使った黒パン、麺であればうどんより十割そばを選びます。
そうそう、果物も皮ごと食べれば完全栄養になりますよ。私は十分に熟した無農薬栽培のものなら、バナナも皮ごとぺろりと平らげます。ただ、果物に含まれる果糖は体脂肪になるなど、悪影響もあるので食べすぎには注意していますが。
油はサラダ油ではなく、エゴマ油、アマニ油を使います。どちらも血液中の脂質濃度を下げるオメガ3脂肪酸を含んでいます。味付けには塩や化学調味料のかわりに酢などの発酵調味料を愛用。サラダは市販のドレッシングなど使わず、酢とエゴマ油で野菜を揉めば、甘みと旨みのある最高の一品になりますよ。
■髪がふさふさになる頭皮ケアの方法
若さを維持するためには体を鍛える必要がありますが、心拍数を上げすぎる激しい運動は心臓に負担をかけるので避けています。ジムにも通っていませんし、ジョギングもしていません。それでも筋肉が引き締まっているのは、ある簡単な方法でインナーマッスルを鍛えているからです。その方法とは「呼吸と姿勢に気をつけること」。
呼吸は腹式呼吸を心掛けます。姿勢は猫背にならないように。たとえば、立つときは「プールサイドのポーズ」を意識します。プールサイドで水着姿を写真に撮られるとしたら、どんなポーズをとりますか? 胸を張ってお腹を引っ込めるでしょう。あの姿勢を保つのです。歩くときは「スーパースター歩き」。あごをやや上げて胸を張り、歩幅を広げて歩きます。いすに座るときも深く腰をかける「はめ込み座り」をしています。
プールサイドの立ち方
水着姿を写真に撮られるシーンをイメージし、胸を張ってお腹を引っ込める。
スーパースター歩き
歩くときにはあごをやや上げ気味にし、胸を張ってできるかぎり大きな歩幅で進む。
はめ込み座り
背もたれと座面の角にお尻を深くはめ込み、背もたれに沿うように背筋を伸ばす。
■無添加せっけんで汚れを落とす
髪がふさふさでよく驚かれますが、特別なシャンプーを使っているわけではありません。それどころかシャンプーはせず、普段はお湯で流すだけ。週に2回くらい、無添加せっけんで汚れを落とすようにしています。頭皮の保護膜となっている皮脂を落としすぎると、保護膜が傷ついたり、かえって皮脂が増えたりして髪によくありません。
若さを保つ努力を怠らないのは、自分の体を張って検証した健康法を人々に伝えるためです。残りの人生をかけて、この30年間で2倍に増えたガン死亡数を半減させるのが、がん専門医である私の使命と考えています。まことの人生は、これからが勝負です。
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医学博士 乳腺専門医/ナグモクリニック総院長
1955年生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京女子医科大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院を経て、ナグモクリニックを開業。著書に『「空腹」が人を健康にする』など。2019年、鎌倉・稲村ヶ崎に自らがプロデュースする「日本料理 吟」をオープン。
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(医学博士 乳腺専門医/ナグモクリニック総院長 南雲 吉則 構成=西川敦子 撮影=澁谷高晴)
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