ED治療薬追い求める人の「死ぬまでセックス」

プレジデントオンライン / 2019年9月10日 17時15分

「人に知られるのは恥ずかしい」と、手軽にできる個人輸入が増えているED治療薬だが、大きな危険も潜む。

■効果と持続性が36時間も続く

加齢にともない性的な好奇心は強くても体がついていかず、セックスへの自信と意欲が失われてゆくもの。そんなとき、手っ取り早く「秘薬」を求めるのは男のサガでもある。「オトコを取り戻す」いちばんの「秘薬」、それはED治療薬だろう。

そもそも性欲はテストステロンが脳に働くことで感じるもの。川崎医科大学泌尿器科学教室の永井敦教授は「50歳を超えるとテストステロンの低下のためにいろいろな障害が現れます。『加齢男性性腺機能低下症候群』といわれるもので、性欲、勃起・射精障害も顕著となります。ある調査では、20歳のときの性欲の強さを100%とすると、60代では約50%、70代で約30%になるとのデータが出ています」と話す。

同泌尿器科学教室の調査によると、ED治療薬の服用によりセックスが可能になって、「自分に自信が持てる、幸福度が増す、健康実感度が高くなる」という意見が多かったという。実際、外来でたくさんの患者を診ている永井教授はこう話す。

「当科で以前に取ったデータでは、ED治療薬を処方した患者さんの実に39%は65歳以上の男性でした。年をとっても勃起を維持したいという高齢男性が多いことがわかります。EDが克服されると欲求不満やストレスの解消ができ、性のQOLの向上ばかりか、日常生活におけるパートナーとの関係性も向上します」

日本でED治療薬として認可されているのは、強い硬度が得られるといわれる「バイアグラ」(シルデナフィル)、飲んで20分後に効果が表れ始める即効性が売りの「レビトラ」(バルデナフィル)、飲んで36時間もの効果と持続性を誇る「シアリス」(タダリス)の3種類と、バイアグラのジェネリック薬だ。

■飲んで15分で効き始め、食事の影響を受けにくい

第4のED治療薬といわれているのが欧米で販売されている「ステンドラ」だ。従来のED治療薬との違いを渋谷三丁目クリニックの古市昌之院長が説明する。

「特徴はバイアグラよりも即効性があり、飲んで15分で効き始め、食事やアルコールの影響を受けにくいということ。ステンドラは日本で未承認の薬ですが、当院では医療機関として特別な輸入許可を得てステンドラと、そのジェネリック薬を処方しています。レビトラやシアリスの特許期限が切れ、ジェネリックが発売されれば価格は下がり、患者さんの選択の幅も広がるでしょう」

このほかにも日本では未承認薬だが、ED治療薬として知られているものに韓国の製薬会社が製造する「ザイデナ」がある。レビトラ、シアリスのジェネリックは、国際的にも特許が満了を迎えていないので本来は存在しないはずだが、海外ではインドが特許法の違いから製造し、インド製が数種類流通している。

ED治療薬以外にセックスや若返りに効果がある精力剤はあるのだろうか。永井教授が説明する。

「学術論文に出ているものを調べたことがありますが、亜鉛、コエンザイムQ10、ビタミンBやD、クルクミン、レスベラトロールなどが該当するでしょう。アルギニンが配合された強壮剤はある程度勃起に有効だと考えられます」

数多くのED治療薬が海外では販売されており、前述した治療薬はインターネットを使えば簡単に手に入るため、個人輸入による購入者が増えている。というのも規定数量の範囲内であれば、個人が使用する分については薬機法(旧薬事法)の規制対象外となり、医療用医薬品であるED治療薬も医師の処方箋なしで輸入できるからだ。安価で手に入ることや、「人に知られるのは恥ずかしい」という感情も大きな理由だ。

とはいえ自分自身で個人輸入するには、税関を通すための難しい手続きが必要になることもあって、海外医薬品を扱う個人輸入代行サイトの利用者がほとんど。インターネットで「医薬品 輸入代行」と検索すると、多くの代行業者がリストアップされる。こうした代行業者を通せば、楽天やアマゾンのような一般的な通販サイトと同じように医薬品を購入することが可能だ。サイトは、すべて日本語で記載され、語学に自信のない人でも利用できる便利さもある。

■個人輸入のED治療薬、偽造医薬品が約40%

ところで未承認の医薬品の広告・宣伝は薬機法によって禁止されているのに、なぜ可能なのか。薬事法広告研究所代表の稲留万希子氏が説明する。

「医療用医薬品を扱う個人輸入代行業者の運営元はほとんどが海外資本で、拠点は国内にありません。外国語が苦手な人の仲介をして、薬代と手数料をいただきますというのが業者のスタンスです。日本国内の消費者に向けて日本語で広告するのは薬機法違反ですが、海外に拠点があり、あくまでも客の依頼に応じて個別商品の輸入手続きを請け負うという形式であるならば、日本の法律を適用するのが難しいのでしょう」

厚生労働省は2014年から国内外のインターネット販売サイトの監視を強化している。実際、17年3月時点で、海外の医薬品の個人輸入を手がける日本語サイトの大半が広告規制に違反しているとして、厚労省が委託したアメリカのネット監視会社の調査結果をもとに、約2500件のサイトが閉鎖されている。

■健康被害にあう人も多い

安易にネットで個人輸入代行業者から購入し、税関の目を欺いて通関した偽造医薬品をつかまされ、さまざまな健康被害にあう人も多い。18年に日本の税関で差し止められた偽造医薬品は約32万点。そのうち多くはバイアグラやシアリスなどED治療薬の偽物だ。

国内でED治療薬を製造・販売している製薬会社4社が16年に合同で実施した偽造ED治療薬に関する調査でも、インターネット経由で発注・入手した治療薬のうち約40%が偽造医薬品であったことが判明している。古市院長は「開発されて20年以上たち、製法の確立されているバイアグラは、発展途上国の町工場でも簡単につくれるため偽物が多いといわれています。闇でつくられたものを安く仕入れて正規品として偽って売るケースです。安ければいい、簡単に手に入ればいいという認識の人が多いでしょうが、命に関わる危険があります」と警告する。

海外産の偽ブランドでもエルメスやロレックスであれば体に害はないが、偽薬はヘタをすれば死に至る。個人輸入した医薬品は公的救済制度の対象外だけに、まずは医者に相談し、処方を受けるべきだろう。

----------

吉田 茂人(よしだ・しげと)
ジャーナリスト
『文藝春秋』記者、ビジネス誌編集長を経て現在に至る。共著に『金利を動かす男』がある。

----------

(ジャーナリスト 吉田 茂人 撮影=小川 聡)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング