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医師「ED治療薬が心臓に悪いというのは誤解だ」

プレジデントオンライン / 2019年9月7日 17時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/baona)

■「もらさず」は間違いだった

儒学者、貝原益軒の『養生訓』の一節に「四〇以降、血気やうやく衰ふる故、精気をもらさずして、只しばしば交接すべし(巻第4の65)」という箇所があります。

俗にいう「接してもらさず」で、そうすれば「血気がよく巡って体によい」と続くのですが、最新医学からすると全くの誤解です。

最新の科学的根拠による新常識では、精はもらせばもらすほど心臓にも血管にもよく、がんや生活習慣病を予防して寿命を延ばすというもの。逆に早くから性行為をやめた男性は、死亡リスクが上昇するという研究結果もあります。現代の養生訓を説くなら、さしずめ「しばしば交接し、大いにもらすべし」ですね。

男性不妊の治療現場では、出せば出すほど精子の運動率が向上し、活きがよくなることが知られています。体に悪いわけがありません。

ただし、女性のように明らかなサインはないものの、男性にも更年期があります。その気はあっても肝心の性機能が……ということも。

男性更年期の諸症状は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の減少が原因です。60歳を過ぎて、何となく憂鬱な気分に苛まれる、やる気が出ないといった症状と、「朝立ち」しない、性欲がなくなったなど性機能の変化を感じたら、更年期を疑うといいでしょう。

治療はテストステロン補充療法(TRT)で、日本では医療機関(主に泌尿器科)での注射のほか、街の薬局で塗り薬(第1類医薬品)を購入することができます。

男性更年期には明確な診断基準はありませんが、不調が続くようなら1度はTRTを試す価値があります。私の経験では、劇的に諸症状が改善するケースが多い。年だからと諦めず、ぜひ医療の力を借りてください。

中高年の性機能を巡るもう1つの都市伝説は、バイアグラなどの勃起不全(ED)治療薬は心臓に悪いというもの。これこそ声を大にして「誤解だ」と言いたいですね。

もともとED治療薬は狭心症など血管が詰まる心臓の病気の薬として開発されました。その過程でEDに効くことがわかり、そちらにスイッチした経緯があります。

最新の研究では、ED治療薬を定期的に飲むと抗老化に働く抗酸化作用のほか、テストステロン産生が増加することもわかっています。

今や、低用量のED治療薬を「男性のアンチエイジング薬として習慣的に飲むべきではないか」という議論があるほどです。

そもそもEDの発症リスクの多くは、加齢のほか喫煙、肥満と運動不足などの不健康な生活と高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。

■不健康な生活の影響で動脈硬化が生じる

不健康な生活の影響で動脈硬化が生じると、海綿体の血管がガチガチに固くなって拡張不全を起こし、勃起を維持する血流を確保できなくなってしまうのです。

当然ですが、ペニスの血管だけが動脈硬化を起こしているとは考えられません。

男性の体のなかで最も細いペニスの動脈が真っ先に詰まった後は、2番目に細い心臓の冠動脈が、さらに脳に血液を運ぶ頸動脈と、ドミノ倒しのように心筋梗塞や脳梗塞を起こしかねないのです。実際、EDがある人では心血管系の病気による5年後の死亡率が2倍以上になるというデータも出ています。

一方、ED治療薬は、血管の拡張を促進する作用があります。EDではこの作用が勃起の持続に働き、全身の血管では動脈硬化の改善と進展予防が期待できるわけです。

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小堀 善友(こぼり・よしとも)
獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科外来医長・医局長
1975年、埼玉県生まれ。金沢大学医学部卒。専門は男性性機能障害、男性不妊症、性感染症。著書『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』など。

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(獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科外来医長・医局長 小堀 善友 構成=医療ジャーナリスト・井手ゆきえ 写真=iStock.com)

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