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「NHKをぶっ壊す」と安倍政権が手を組む可能性

プレジデントオンライン / 2019年8月2日 19時15分

初登院し、ポーズを取るNHKから国民を守る党の立花孝志代表=2019年8月1日、国会前 - 写真=時事通信フォト

参院選後、新しいメンバーを加えた臨時国会が8月1日、召集された。脚光を最も浴びたのは「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首だった。存在感を高めつつあるN国は、この後どこに向かっていくのだろうか――。

■「わらしべ長者」のような増殖ぶり

「NHKをぶっ壊す」

1日、初登院した立花氏はマスコミの求めに応じるままに、国会内のいたる所でN国の決めぜりふを口にてフラッシュを浴びていた。

政見放送や街頭演説では、ガッツポーズとともにこのせりふを数えきれないほど繰り返した。

参院選が始まったころは、N国がどういう存在なのか知っている国民はごく少数だった。しかし今は、立花氏が元NHKの職員で、局内の不祥事を暴露し、受信料を払った人だけがNHKを視聴できる「スクランブル放送」の実現を求めていることは、国民の「常識」になっているようだ。学校などでは子どもたちがふざけて「ぶっ壊す」をまねしている。

7月29日には北方領土領土に関する暴言で日本維新の会を除名されたの丸山穂高衆院議員が入党。30日には渡辺喜美参院議員と参院で統一会派を組むことになった。参院選で1人当選者を出しただけでも世間を驚かせていたN国は10日足らずで3人の塊になった。「わらしべ長者」のような増殖ぶりだ。

立花氏は丸山氏らも含めて計12人の国会議員に声をかけているという。12人全員がN国の同志になるとは思えないが、今後も同志が増える可能性はあるだろう。

それにしてもN国は何を目指して増殖しているのか。「国会内の数合わせ」という旧来型の手法を使ってまで、議席を増やそうとしているのはなぜか。

■5人集めてNHK日曜討論で「ぶっ壊す」が夢

1つ目の理由は、国会の「数の壁」を破ることだろう。国会は議員数によってできること、できないことがはっきりしている。

独りぼっちだと、本会議や委員会で質問したり質問主意書を提出したりする以外、やれることは少ない。2人になれば会派が結成できて、他の党派と交渉できる。10人いれば党首討論や本会議での代表質問の権利が与えられる。参院10人、衆院20人で法案を提出できる。

上を見ればきりがないが、立花氏が当面目指すのは「5人」だ。NHKの日曜討論に参加できる基準は「得票率2%プラス国会議員5人」とされる。「2%」のほうは先の参院選の選挙区でクリアしているので、メンバーを5人にしてNHKの日曜討論に出席し、「NHKをぶっ壊す」とやるのが悲願なのだ。

2つ目の理由は政党交付金だ。N国は参院選で1議席確保したことで、年間5900万円の政党交付金を得る権利を得た。メンバーが増えれば増えるほど交付金の額は跳ね上がる。立花氏は過去、選挙を「ビジネス」と考えているような言動をしており、交付金の額にも敏感に反応している。

■スクランブルと改憲を「バーター」にする

N国は、他党からも熱視線を浴び始めた。安倍晋三首相が目指す憲法改正に向けた補完勢力になり得るとみられるようになった。

N国は選挙戦を「NHKのスクランブル放送」の1本に絞って戦い、他の政策についてはほとんど語ってこなかった。しかし立花氏はもともと保守的な思考の持ち主だ。

そして選挙後、立花氏は「スクランブル放送の実現というワンイシューでいくには限界がある」と、発言を微妙に変え始めている。要するに、目指すスクランブル放送を実現するためには、他の政党の政策にも関与し、取引することも模索し始めたのだ。

立花氏が特に意識するのは政権与党の自民党。「自民党が政権をとっているわけだから、しっかりとやってほしい」とエールを送る一方、「とりあえず憲法改正に反対するが、賛成と引き換えに、安倍氏にスクランブル放送をしてもらう」とまで言い切る。スクランブルと改憲をバーターにするという意味だ。

■「改憲勢力」にN国が加わる日は近い

今、自民党、公明党、日本維新の会の3党と一部の無所属議員などで構成する改憲勢力は、衆院では国会発議に必要な「3分の2」を維持している。しかし参院の方は7月の参院選で「3分の2」を割り込んだ。4議席足りない。

当選したばかりの立花氏は今、マスコミによる分類では「非改憲勢力」扱いとなっている。ただし、同志となった丸山氏や渡辺氏はいずれも「改憲勢力」にカウントされている。立花氏の発言も含めて考えれば、近々にもマスコミによる改憲勢力の定義が「自民、公明、維新、N国の4党」と変わる可能性は十分にある。

もちろん立花氏は改憲勢力に加わる条件としてスクランブル化をつきつけるだろう。ハードルは決して低くはない。しかし、例えば「NHKの抜本的な改革に取り組む」というような漠然とした政策合意で折り合うことはあり得るのではないか。

そして、その時、N国の議員数によってはあっさりと参院でも改憲勢力が3分の2を回復することにもなる。立花氏もそのことは強く意識しているのだろう。「改憲のキャスチングボートを握る議席を持てば、NHKのスクランブル放送を実現するのも早いのではないか」と発言している。与党入りも意識しているような発言だ。

これは、少数者の代表として「最も厄介な抵抗勢力」に徹しようという、山本太郎代表率いるれいわ新選組の立ち位置とは決定的に違う。

N国が仕掛ける国会内の増殖工作は、安倍氏が目指す憲法改正と表裏の関係となる。ひょっとすると、N国は、NHKをぶっ壊す前に、非改憲勢力をぶっ壊すことになるかもしれない。

(プレジデントオンライン編集部)

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