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グズでダラダラな子を変身させる夏休みの魔法

プレジデントオンライン / 2019年8月14日 15時15分

『プレジデントFamily』2019年夏号で本稿「すぐやる!」子になる時間管理のトリセツを詳報している

「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」……。なぜ、夏休みになると子供はダラダラしてしまうのか。作業療法士の菅原洋平氏は「人間の脳の特性に沿って親子で計画を立てたり声をかけたりすれば、小さな子でも時間管理できるようになり自ら動くようになる」という——。

■夏休み、ダラダラな生活リズムの子をどうするか

夏休みはふだん時間がなくてできない勉強や運動にトライできるチャンスだ。しかし、現実は「ダラダラ過ごして生活リズムがメチャクチャ」「やるべきことが終わらず親子でバトル」……。昨年の夏休みを思い出して、思わずため息が出てしまう親も少なくないだろう。

今年こそはわが子に充実した夏休みを送ってほしい。作業療法士の菅原洋平先生によると、子供の行動を変えるにはちょっとしたコツをつかむことが重要だという。

「夏休みを前に高い目標を掲げたものの、毎年計画倒れになってしまっているご家庭も多いのではないでしょうか。人間の行動は精神論では変えられませんし、長続きしません。

しかし、脳の特性に沿って予定を立てたり、空間づくりをしたり、日課を決めたりすれば習慣が身について、“やらないと落ち着かない”という状態になります」

子供は大人に比べて、経験が乏しいので“いま、どれくらいの時間が経ったか”“あとどれくらい遊んでいても大丈夫か”といった時間感覚が未熟なのだと菅原先生。

「大人が子供に指示するのではなく、子供自身が考えることで時間感覚は鍛えることができます。夏休みを上手に使って、子供の成長にもつなげていってほしいですね」

■「すぐやる子」になるするための親の魔法のかけ方

【脳の時間割編】
▼宿題はなぜ、朝やるべきなの?

まずお子さんに伝えてほしいのは、脳には“時間割”があるということ。起きてから3〜4時間後は頭がさえて論理的に考えられる、7〜8時間後は手先を器用に動かせる、9〜11時間後は体を活発に動かせるなど、脳は時間帯によって得意なことが異なります。ですから、朝の頭がさえている時間帯に宿題を済ませるのは、理にかなったことなのです。

7時に起きた場合の脳の時間割

大切なのは、子供に実感させること。たとえば、「朝のほうが脳って活発に動くらしいよ。これまで午後にやっていた宿題を午前中にやってみて、時間を比べてみようか」などと提案してみてください。宿題が終わったら、かかった時間と、宿題に向かう気持ちがどう変わったかをお子さんに聞いてみましょう。おそらく、早く終わったと感じるはずです。

自由研究でも読書でも集中して取り組ませたいことは朝のうちに済ませてしまいましょう。一方、好きなことに寝る前に取り組むと、夢中になって睡眠時間を削ってしまいがちなので、朝のうちにやり終えてしまうのがおすすめです。

▼子供がすぐに動かないのでイライラします

「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」、ふだんから口癖のように出てくるこのセリフ。夏休みになると、さらに増えるかもしれません。

しかし、このセリフはすぐに行動することにはあまり役に立ちません。脳が体に行動を命令するときに、その命令が具体的になるほど体はすんなり動きます。すぐに行動するためには、具体的な行動を自分で言語化することが役立ちます。

写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

そこで、テキパキ行動してほしいときには、子供に「今日の予定について教えて」と聞いてみましょう。自ら予定を言語化すれば、子供の脳に次の行動の見通しを立てさせることができます。

外出の用事があるなら、「出発まで○分あるけど何ができる?」と聞いてみるのもいいでしょう。「○○ならできるかも」と言語化できれば、それを実行することができるはずです。

親の上手な問いかけで、子供自身が予定や行動を言葉にする機会を増やしてみましょう。

■なぜ、子供に「あと10分だよ」と言っても動かないのか

【声かけ編】
▼休憩をきり良く終わらせる方法は?

休憩で、もっとも避けてほしいのが“なんとなく休む”です。クールダウンのために机から離れてゲームやマンガを読み始め、気がつけば、ダラダラと過ごしている……。

こんなシーンに効き目があるのは、ストップウオッチやタイマーを使った方法です。休憩は時間を決めたほうが休む効果も高まります。音が鳴るタイマーを使うと、より効果的です。子供は時計を気にせずに、いま取り組んでいる勉強にも休憩にも集中できるようになります。

一つのことになかなか集中できない場合は、子供にタイマーを渡し、時間設定をさせて、サーキットトレーニングのように勉強や休憩をさせるのもおすすめです。

たとえば算数を10分やって、ピピッと鳴ったら国語を10分やって、またピピッと鳴ったら10分休憩してと、違うことを順繰りに行ってトータルで1時間という形でやらせてみてください。時間は子供に決めさせるとより効果的です。

▼なぜ、夜更かししてしまうの?

子供が夜、ゲームに夢中になってしまい、そのままお風呂に入るのが遅くなり、結局寝たのは夜の11時。そんな相談はどの学校に伺っても耳にします。

子供に早く寝てもらうには、子供に寝ることの魅力を知ってもらうことがおすすめの方法です。

眠りの力で得られることは、主に次の四つです。①頭が良くなる②足が速くなる③イライラしなくなる④きれいに・かっこよくなる。

これらを子供と話してみてください。きっと、「ちゃんと眠ったほうが次の日も勉強がはかどったな」「よく寝たら気持ちのもやもやがなくなった」など、実際の体験を思い出しながら、納得してくれるはずです。

口をすっぱくして「早く寝なさい」と繰り返すと、眠ること自体が目的になってしまい、息苦しくなってしまうかもしれません。

眠ることはあくまでも充実した毎日を送るための手段です。毎日を充実させるために眠りの力をうまく使おう、と睡眠の意味をあらためて子供に伝えてみてください。

写真=iStock.com/fzant
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fzant
▼なぜ、子供は「あと10分」がわからないの?

親が「あと10分で出かけるよ」と言ったのに、子供はテレビの前でのんびり。そんな経験はありませんか。子供が「あと10分だから、これくらいのペースで準備しないと」とならないのは、まだ十分な時間の見積もりをする力が身についていないから。時間の見積もりをする力はトレーニングである程度鍛えることができます。

親が「どれぐらいでできる?」「あと何分でできる?」と、一言かけることで、子供は時間を予測できるようになります。

たとえば、見たいテレビが始まるまでに30分あるとして、「その30分で、どれぐらいドリルができる?」と聞いてみましょう。そうすると、子供は「2ページぐらいかな」などと予測します。実際に取り組んだあとに、「どうだった?」と聞いてみれば、「1ページしかできなかった」などと本人は思い込みと実感との違いに気づくでしょう。

こんなふうに先を見通すことで、脳はうまく働き、だんだんと時間感覚が身についてくるのです。

■なぜ「夏休みの計画」はその通りにできないのか

【倒れない計画編】
▼先延ばし癖を直すにはどうしたらいい?

自由研究や読書感想文など大物の宿題は、ついつい先延ばしになってしまう代表選手。ふだんから難しい問題集の宿題を先延ばししてしまう癖のある子も多いでしょう。こうしたハードルの高い課題に取り組むときは、前の課題が終わったら、とりあえずノートや原稿用紙などを開いて、最初の1行だけ書いておくのがおすすめ。脳は新たに行うことにストレスを感じますが、前回から続くことはラクラクとこなせるからです。つまり、課題を終えて終わりではなく、次の大物の課題を少し始めて終わり、と動作の区切りを変えることで、次の作業は驚くほどあっさりできてしまうのです。

また大きな課題を小さな課題に区切るのも手です。自由研究なら、資料を集める、資料を読む、下書きをする……、細かくパーツを区切ってひとつの作業をこなしたら、次の作業にちょっと手をつける、と重ねてやっていけば、いつの間にか終わってしまうはずです。

写真=iStock.com/Imgorthand
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Imgorthand
▼計画倒れはどうしたら防げる?

1カ月ほどの夏休みは子供にとって、とても長く感じられます。計画倒れを防ぐためには、計画を1週間から10日ほどを一区切りにして立てることをおすすめします。

まずは「夏祭り」「習い事」といった自分の予定、「旅行」や「帰省」などの家族の予定、「絵日記」「ドリル」といった宿題、「読書感想文」や「自由研究」と夏休み中にすべきことを書き出してみましょう。

そして、1週間〜10日分の計画表に書き込んでみてください。親御さんは「習い事など予定が入っている日は宿題はたくさんできないね」などとペース配分についてアドバイスをしましょう。学校のペースが残っている夏休み前半のうちに難しいと感じる予定を入れて早めに終えてしまうのが、おすすめです。

ペースをつかむコツは、最初の4日間だけ予定通りにこなすこと。脳は4日以上続けた習慣をそのまま続けたくなるという性質があります。

▼夏休みで新しい日課を身につけるには?

片づけを習慣づけたい、朝学習を毎日やりたい、こうした新しい日課を続けるコツは、欲張らないこと。脳は新しい習慣を始める際に、大きなストレスを感じます。人は多くの日常の行動を慣れ親しんだ形で無意識に行っているので、これを変えて定着させるには“一つだけ”が大原則です。目標をいくつも書き連ねても、脳が言うことを聞いてくれず、面倒くさくなり、結局長続きしません。

新しい習慣を一つだけに絞って、4日間続けてみてください。面倒だなという感覚がなくなったら、脳がストレスを感じなくなった証拠。次の習慣づけに取り組みましょう。

別のアプローチで、場所を変えたり時間をずらしたりするのも生活習慣の変え方として有効です。脳に行動と場所や時間をひもづけて覚えさせるのです。

たとえば、「勉強机では宿題しかやらない」「朝9時からは宿題の時間」などと決めて、4日間以上続けてみてください。その場所、その時間になったら、宿題をしないと落ち着かないという状態になるはずです。

■気が散って「すぐゲームしてしまう問題」をどうすべきか

【場所づくり編】
▼何回片づけても、元通りに……。どうしたらいい?

子供部屋の中を大きく三つに分けてしまいましょう。まずは勉強をするための勉強ゾーン、寝るための睡眠ゾーン、遊びゾーンです。勉強ゾーンには教材類、睡眠ゾーンにはパジャマと目覚ましのみ、遊びゾーンにはマンガやゲームしか置かないようにして、各ゾーンから他のゾーンへの持ち出しは禁止しましょう。こうするだけで、ゾーンを越えて物が持ち込まれたことが、散らかったということだと、わかりやすくなります。

また、各ゾーンの中でも片づける際に物の定位置を決めてしまいましょう。大事なのは、本人に決めさせるということ。邪魔だろうと親が片づけていては、本人に“そろそろ片づけよう”“後でまとめて大掃除は嫌だな”といった危機意識が生まれません。

普段から散らからない工夫として、ゲームを終えたら充電器に置く、マンガを読んだら本棚に戻す、というように、一つずつの行動を完結させる動作を一緒に親がやってみせると行動が変わりやすいです。

▼帰宅後すぐに宿題をやらせるには?

子供に帰宅後すぐに宿題をさせたいのであれば、外から帰ってきて、玄関から勉強机までの動線を一緒に確認してみましょう。その間のリビングにお菓子やゲーム、マンガといった誘惑になるものがあれば、お子さんと相談し、目に触れない場所に片づけてしまいましょう。

誘惑を目にせずに勉強机にたどり着けたら、そのまま宿題に取り掛かるのは難しいことではありません。

写真=iStock.com/RichLegg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichLegg

また、夏休みは生活リズムが不規則になりがちなので、ベッド周りもチェックしてください。マンガや携帯ゲーム機などをベッドに持ち込むようになると、脳はダラダラ遊ぶ場所と認識してしまい、入眠が遅くなったり、眠りが浅くなったりしてしまいます。ベッドに行くと自然と眠くなる、じっくりと睡眠ができるという状態にするために、マンガなどの持ち込みは禁止して、脳にベッドは寝るための場所と覚えさせましょう。

▼子供が勉強に集中できない。どこを見直すべき?

人間は何かに集中しようとしても、視界に気になる物が入ってきてしまうと、途端に集中力が途切れてしまいます。お子さんの勉強スペースの周りを見渡してみてください。ゲームやおもちゃなど遊び道具が視界に入りませんか? 目から入ってくる誘惑の情報を振り切るのは、子供にとって大きなストレスです。

また、勉強机に教材を複数置くのも避けてほしいですね。目の前にある教材以外に、次はこれもやるのかと精神的な負担になり、集中力を下げる一因になります。

机にやるべきことを付箋で貼ったり、机の上のビニール製のシートの下にプリントを挟んでおくのも、余計な情報が脳に入ってくることになるので、避けたほうが望ましいですね。必要なテキストや教材だけを出して、いまやっている勉強のみに集中できる環境にしてください。また、脳に“勉強机は勉強をする場所”と覚えこませるためにも、休憩をとったり、マンガを読んだりする際には、机から離れさせるようにしてください。

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菅原 洋平(すがわら・ようへい)
作業療法士
ユークロニア代表。国際医療福祉大学卒業。2012年ユークロニアを設立。全国の企業を対象に、「睡眠マネジメント研修」など、生体リズムや脳の仕組みを使った人材開発を精力的に行う。

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(作業療法士 菅原 洋平 文=池田 純子)

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