アジア最富裕国に学ぶ、老後資金のつくり方

プレジデントオンライン / 2019年8月11日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/DNY59)

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。金融庁が「老後資金2000万円の蓄えが必要」といった内容のレポートを発表し、日本では大変な話題となりました。その後の政府の対応も非常にまずく年金に対するさらなる不信を生むこととなってしまいました。

■日本で女性が生活をするには老後資金はいくら必要か

現実、女性が日本で老後生活を送るにはどれくらいの資金が必要なのでしょうか。

「総務省家計調査2017年」によると、高齢単身無職世帯の1カ月の消費支出および非消費支出の平均額は15万4742円です。ここから65歳から90歳までの生活費の総額を出すと、約4642万円となります。この生活費は持ち家が前提となっているために賃貸の場合はさらに生活費がかさむ場合があります。

この莫大な生活費を一体何で補うかと言うと、大部分は年金になります。では、年金は実際のところいくらもらえるのでしょうか。

「H31年金額 厚生労働省」のデータを基に、単身で厚生年金というパターンでの65歳からの標準的な厚生年金額は、月額15万6496円になります。この場合、65歳から90歳までの年金の総額が約4695万円になります。先ほどの生活費の総額から計算をすると、53万円のプラスになります。

■2000万円必要なのは専業主婦世帯

次に夫婦ともに会社員で厚生年金をもらうパターンも考えてみましょう。このケースで、65歳からの標準的な厚生年金額は、月額15万6496円で、2人分で31万2992円。65歳から90歳までの年金の総額が約9390万円になります。

高齢夫婦、無職世帯の1カ月の消費支出および非消費支出の平均額は26万3717円です。この金額から65歳から90歳までの生活費の総額を出すと、約7912万円となります。生活費の総額からもらえる金額を引いて計算をすると、1478万円のプラスになります。平均的な報酬(賞与含む月額換算)が42万8000円で40年間就業したケースでの試算のため、ハードルは高いですが、いわゆるパワーカップルは老後にも強いということが分かります。

2000万円必要なのは誰なのかというと、夫が会社員で妻は専業主婦というパターンのことなのです。実際、老後の収入と支出は個人によって大きく異なります。まずは、定期便やねんきんネットなどで将来もらえる予定の年金額をシミュレーションしましょう。また、生活費の自分が月にいくら必要なのかを計算してみましょう。

単身だとライフイベント支出が少なく、かかるコストも少なくて済みますが、要介護になった場合に施設に入るなどのリスクが高いために予備費を多めに考えた方がよいでしょう。生活費に加えて、予備費として1000万円程度は考えたいところです。

■シンガポールでは老後1億円必要

シンガポールでも老後の生活を送るには約1億円前後必要だと考えられています。シンガポールの社会保障制度は相互扶助の精神からなる日本の年金制度と違って、自分が現役時代に貯めた分を自分で利用する仕組みになっています。若い世代が高齢者を支える日本と比較して公平ではありますが、自己責任的なシステムになります。

CPF(中央積立基金)という強制貯蓄の仕組みがあって、医療費用、持ち家取得、老後生活に備えます。55歳以下の労働者は収入の20%、雇用者は17%を拠出する形となります。

シンガポール人の場合は月収の約2割をCPF(中央積立基金)に、その他にも月収の1~2割を老後のために備えています。平均的な月収は約30万円で、ここから3割以上を将来のために貯めておくのです。

理由は、CPFに最大限払い込んだとしても老後受け取れる金額は20万円にも満たないからです。CPFに貯めたお金は、住宅取得や医療など他の目的にも使うこともあるので自力でも貯めないと老後の生活はおぼつかないと言います。多くのシンガポーリアンは持ち家ですが、それでも老後のお金は十分ではないために共働きをしたり、長く働いたり、自分たちでも別途老後の貯蓄を作ります。

教育費も安くはありません。もし、子供をローカルの学校に行かせ、シンガポールの大学に進学をする場合は日本の公立コースくらいの費用ですが、海外の大学に進学する人も多いので渡航先によっては莫大な金額になるようです。また、自動車にも非常に高い税金がかけられているために日本以上に維持コストがかかります。月に約20万円前後かかると言われており、車を保有せずに公共の交通機関を使う層も多いです。また、共働きだとヘルパーを利用するため年100万円弱の固定費となります。

■シンガポールでは3%の利回りが一般的

1000万円や2000万円などと言われると、特に若年層にとっては途方もない道のりに感じますが、60歳までに30年以上あれば、無理のない積立も可能になります。例えば、年利3%で複利運用できれば、毎月3万5000円の積立額で、30年間で2000万円を目指すことができるのです。

日本では3%の利回りを目指すのは難しいですが、シンガポールでは3%の利回りは一般的で、強制積み立てを利用する際にもそれくらいは目指せると言います。また、養老保険も契約者が受けられる利回りとして、3%程度が現在の実効レートとなっています。

このようにシンガポールの方が日本より、自己責任的なシステムで社会保障も手薄ですが、その分、高所得者の税金も低く、投資対象の選択肢も多いのでパワーカップルなどは老後資金を作ることが容易なのです。しかし、収入が少ない世帯などは日本よりもより厳しい老後が予測されます。ただし、シンガポールでは67歳まで継続雇用を雇用主は申し出る義務があり、賃金のガイドラインもあるために日本のように大幅な賃金カットはありません。高齢になっても働き続けている人が非常に多いです。

日本人がシンガポール人から学べるところとしては、共働きや高齢になっても働き続けるということ、若い頃から収入の約3分の1を貯金する、リスクに慣れて資産運用をするといったことでしょう。日本で3%運用を継続的に行うことは非常に難しいですが、株式や債券などに長期分散投資をすれば期待リターンは上回ります。今すぐに資産運用を考え、時間を味方につける工夫をしたいですね。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
雑誌・新聞・テレビ等でマネー情報の企画や執筆を幅広く行う。『毒舌うさぎ先生のがんばらない貯金レッスン』(日本文芸社)のほか、著書多数。

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(1級ファイナンシャル・プランニング技能士 花輪 陽子 写真=iStock.com)

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