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ジャニーズのタレントは「特別な人間」ではない

プレジデントオンライン / 2019年8月14日 15時15分

「元祖・ジャニヲタ男子」の作家・霜田明寛氏

※本稿は、霜田明寛『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■ジャニーズは努力でできている

努力は人を変える――。

そう、ジャニーズは教えてくれました。

中居正広と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?

多くの人が、そのバラエティ番組の司会者ぶりから、もともと明るく、機転の利く人という印象を持っているのではないでしょうか。

しかし、ジャニー喜多川は中居正広のことを「おとなしかった」と振り返り、本人も「話すのは、正直、苦手分野」「アドリブとか利く方ではない」と、10代から仕事に関するメモを書き溜め、今でも入念なシミュレーションをしてバラエティ番組にのぞんでいます。

今や俳優としての地位を確立している岡田准一には、毎日仕事終わりに、寝ずに映画を3本観て学んでいた日々がありました。

堂本剛は、Kinki Kidsとして成功をおさめた後も、ソロ・プロジェクトを始動させるために、自ら企画書を書いてコピーし、社内でプレゼンをする、というようなことまでやっています。

広く知られてはいませんが、ジャニーズのタレントたちは陰で必死の努力を続けていて、それぞれに「人生の哲学」を持っているのです。

■事務所からの連絡を15年間待っている

僕が初めて憧れた大人は、ジャニーズでした。9歳でSMAPに憧れ、15歳で同い年の山下智久の活躍に刺激を受けジャニーズ事務所に履歴書を送り始め、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けました。

2009年、23歳のときに雑誌『SPA!』の「ジャニヲタ男子の奇妙な日常」という特集で、日本で初めて「ジャニヲタ男子」として取り上げられ、それ以降も、ジャニーズへの愛は冷めることなく、今も女性ばかりのライブ会場に勇気を持って乗り込んでいます。普段は、編集長を務めるWEBメディアで、俳優や映画監督にインタビューをし、人生の哲学や世に出るまでの努力の過程を聞いて、文章にしています。

ちなみにオーディションでは、事務所の女性に「皆さんはここに呼ばれた時点で、ジャニーズJr.研修生です。すぐに連絡が来なくてもあきらめないで待っていてください。時間が経って連絡することもありますから」と言われました。なので、現在の僕は「待っている」状況です。あれから15年が過ぎようとしています。

■ジャニーズ本人に思いを告白した日

元男闘呼組の岡本健一さんの舞台出演時に通った、西新宿の稽古場付近の公園。当時の感情を思い出すために定期的に足を運ぶ

冗談はさておき、「ジャニーズに自分の人生を変えてくれるような哲学がある」「ジャニーズは努力でできている」と聞いて、こう感じると思います。

「いやいや、彼らは“もともと”すごかったんでしょう?」と。

たしかに、僕もそう思っていました。

特別な星のもとに生まれてくる人と、それ以外の星に生まれてくる人――。

世の中にはその2種類しかいないと思っていたのです。

「ジャニーズは特別な星のもとに生まれた人たちなんだ」と、彼らと自分の間に線を引いていました。

しかし、そうではないと、ジャニーズ本人から突きつけられたことがあります。

オーディションに落ちた翌年。20歳の頃、端役ながら、元男闘呼組の岡本健一さんの舞台に出演する機会を得ました。稽古期間も3週間を過ぎ、だいぶ打ち解けてきた頃、休憩場で2人きりになった瞬間を見計らって、ずっと言おうと思っていたことを、岡本さんに伝えました。

「僕、ジャニーズJr.になりたいんです」

笑われるかと思っていました。「その顔で?」「その身長で?」「その歳で?」……何を言われるんだろうと怖くもありました。そもそもオーディションで一度落ちている身。自分が何者でもないということをあらためて突きつけられる可能性のほうが高かったと思います。

しかし、岡本さんは僕の目をまっすぐに見て、こう言いました。

「努力できる?」

岡本さんは、ルックスや運動神経のような生まれもった才能ではなく、「努力できるかどうか」の一点のみで、ジャニーズ入りの資格を問うてきたのです。岡本さんの目は真剣で、僕の直訴を一笑に付したりはしませんでした。

■初めて出会った「無謀な夢を否定しない大人」

現在持ち合わせている能力で判断するのではなく、未来を見て「やるのか、やらないのか」を問う。それは、ジャニー喜多川が人を選ぶときの「やる気があれば誰でもいい」という選抜基準と、驚くほど一致しています。その詳細は第2部で紹介しますが、もちろん当時の僕はそんなことを知るよしもありませんでした。

ジャニー喜多川がそうであるように、岡本さんは夢を笑わない大人でした。僕が初めて出会った、どんなに無謀な夢を語ったとしても、人の夢を否定しない大人。

岡本さんは、教えてくれました。ジャニーズの人たちが、小さい頃からどれだけ努力を重ねてきた人たちであるかを。

そう語る岡本さん自身、休みの日も稽古場に来て、空いているスペースでひとり稽古をしたり、他の出演者の様子をじっと眺めたりしていました。年下のキャストにアドバイスをするためだけに来てくれることもあり、その後、舞台演出家として活躍されるキャリアを思うと、演出家としての努力をしていたのかもしれません。

岡本さんをはじめとするジャニーズは、天性の才能を持って生まれてきたから、今の活躍があるわけではない。努力を重ねてきたからこそ、活躍できている――。

■ファンでありながらも僕は、見て見ぬふりをしていた

ジャニーズは努力によって特別になっていった人たちである――。

それは岡本さんの背中から教わった、偉大な真実でした。そして、この真実を直視することは、僕の人生観を一変させました。それは、絶望でもあり、希望でもありました。

それまでは、ジャニーズを恵まれたルックスをもって生まれた人たちの集団だと思っていました。おそらく、多くの人が同じような眼差しでジャニーズを見つめていることと思います。彼らは運良くイケているルックスで生まれ、運良くジャニーズに選ばれ、運良く人気を得ている「特別な星のもとに生まれた、選ばれし人たちなのだ」と。

彼らの活躍の裏には不断の努力や思考の重なりがあります。しかし、ファンでありながらも僕は、それを直視せず、見て見ぬふりをしてきたのでした。

なぜならば、「彼らと自分は生まれた星が違うのだ」と思いこむ方が、楽だったから。しかし、現実は違いました。彼らもまた「普通の星のもとに生まれた、普通の人たち」だったのです。ですが、彼らはそこから努力を重ね、一方で自分は努力を怠っていた。その差が、そのまま人生の差になっている。それを見つめることは苦しくもありました。

■この世界は、努力すればなんとかなる希望の世界

舞台演出家・蜷川幸雄に密着したNHKのドキュメンタリーで、こんなシーンがありました。蜷川幸雄は、自分の劇団に所属する、まだ売れていない若手の舞台俳優たちにこう檄を飛ばします。

「なんでジャニーズの方が努力してんだよ! お前らより売れてる奴らがよ! 全然説得力ねえよ!」

ジャニーズたちの人生に目を向けると、自分の人生こそ説得力がないものだ、ということを自覚しなくてはいけない――それが絶望の理由です。

しかし一方で、岡本さんの言葉は、希望でもありました。「この世界は、努力すればなんとかなる希望の世界である」と教えてもらったような気がするからです。それは、一見すると、芸能界のような才能のみで決まるように見える世界ですら同じなのだ、と。

“普通の星”に生まれた人たちが、特別なことを成し遂げるまでの進化の過程をつぶさに見ていけば、同じく“普通の星”に生まれた何者でもない自分にも、何か特別なことを成し遂げられる道筋を示してくれる気がしました。それは絶望の後に差し込んだ、一筋の希望の光でもありました。そこにこそ、人生を変えるヒントが詰まっているはずだ、と。

■“才能”とは、死ぬ気で身につけるものである

岡本健一さんに「努力できる?」と問われてから約15年、ジャニーズがどんな努力や工夫をこらして、自分の人生を歩んできたのかを見つめ、調べてまとめたのが本書です。

共通していたのは、もともと特別な星のもとに生まれた人なんていないんだ、ということ。普通の人が特別なことを成し遂げるための道は、確実に存在するということ。そして、その道は1本ではなく、無数に存在しているということ。活躍の仕方が十人十色なら、そこまでの努力の仕方も十人十色です。

どこにでもいる少年だった彼らが、努力の結果、東京ドームを5万人の歓声でわかせたり、帝国劇場の単独主演記録を塗り替えたり、ひとりでNHKからテレビ東京までの全局にレギュラー番組を持ったり――。

ジャニーズの人たちは、教えてくれました。才能とは、天から授かるものではなく、死ぬ気で身につけるものである、と。

岡本さんと話したあの日から、軽はずみに「ジャニーズになりたい!」とは言えなくなってしまいました。本書を書き上げた今は、尚更です。でも、何者にもなれないと諦めたわけではありません。むしろ、その逆です。

■“ジャニーズの生き様”には再現性がある

本書(『ジャニーズは努力が9割』)は「ジャニーズを目指せ!」と鼓舞する本ではありません。「ジャニーズの努力」に目を向けると、人生がちょっと変わる。「現在の自分が思い描いていた自分と違う」とか「もう少し頑張りたい」といった人たちに、自分の人生を変えるヒントを、ジャニーズの生き様の中に見つけてほしいと思ってまとめました。

霜田明寛『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)

“天才ではない人の努力の話”には、再現性があります。第1部で厳選した16人のエピソードの中には、仕事や人生において「未完成な自分がどう成長していくのか」という悩みに対する答えが見つけられるはずです。そしてジャニー喜多川と人を育てる仕組みとしてのジャニーズ事務所に注目した第2部は、誰かを「育てる」立場にある人にもお役に立てるはずです。

「努力は人を裏切らない」とか「人は何にでもなれる」とか「あきらめなければ夢は叶う」という言葉は、一笑に付してしまいたくなる手垢のついた言葉かもしれません。しかし、本書で紹介する彼らの努力を知ってもらった後に、それらの言葉が心の奥底に深く説得力を持つようになれば幸いです。

あなたがそこからどんな夢を持とうとも、それを体現してきたジャニーズの彼らなら、きっと笑わないはずです。

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霜田 明寛(しもだ・あきひろ)
作家/チェリー編集長
1985(昭和60)年東京都生まれ。東京学芸大学附属高等学校を経て、早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。現在は「永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー」の編集長として、著名人にインタビューを行い、成功の秘訣や人生哲学などを引き出している。『マスコミ就活革命~普通の僕らの負けない就活術~』ほか3冊の就活・キャリア関連の著書を持ち、『ジャニーズは努力が9割』が4作目の著書となる。

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(作家/チェリー編集長 霜田 明寛)

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