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スタンフォード底辺留学生がほぼオールAの訳

プレジデントオンライン / 2019年8月28日 6時15分

オーマイグラス代表取締役社長 清川忠康氏

■使えるものは、何でも使う

大学時代の語学留学、大学卒業後に行ったインディアナ大学大学院、そして社会人になってから行ったスタンフォードのMBA。アメリカには留学を3回しましたが、なかでも印象深いのは、やはりスタンフォードです。

何より驚いたのは、優秀な人がごろごろしていたことです。私は最初の語学留学のときからスタンフォードに憧れていて、7年かけて英語を仕上げてなんとか入学できました。一方、ルームメートは「スタンフォードしか受けていない」と、自分が落ちることをまったく想定していなかった。私の感覚でいうと、1学年約400人中、半分はナチュラルに優秀な人たち。私はボトム(底辺)のほうで、最初は授業についていくのが大変でした。

ただ、苦労した分、勉強法については私のほうがいろいろ工夫していたかもしれません。

まず意識していたのは、やらないことを決めることです。授業ごとに読まなければいけないものがありますが、量が多すぎて、すべてを正直に読んでいると、とても手が回りません。そこで、要点だけに絞って勉強するのです。

20%のコアなインプットが、全体の80%のアウトプットを決めるという「80対20の法則」をみなさんも聞いたことがあるでしょう。この法則は、勉強にも当てはまります。たとえば300ページを超える分厚い本でも、本当に重要なことが書いてあるのはA4で1枚分くらい。そこを読んで本のコンセプトさえ理解すれば、授業で十分発言ができます。それ以外のところは、無理して読まなくてかまいません。

問題は、読むべきところをどうやって見極めるかでしょう。重要なところを見極めるには、ページの最初からゆっくり精読をするのではなく、全体を流し読みしていき、何度も出てくるキーワードなど重要な箇所をマーキングしながら速読をするのです。読み終わったら、線を引いた箇所を中心にまとめて授業に臨みます。

また、英語の本を読むときは、日本語訳が出ているものは先にそちらを読んで、おおまかなところを把握していました。日本語訳の本を買うとお金がかかりますが、時間の投資効率を考えると高い買い物ではありません。時間は限られているので、使えるものは何でも使うべきです。

Getty lmages=写真

■凡人でも工夫次第で成績UP

やらないことを決める一方で、私が力を入れて勉強していたのは英語の発音でした。

じつはスタンフォードの授業では先生のほかにTA(ティーチング・アシスタント)がいて、学生の発言回数を記録しています。発言回数は成績を左右する大きな要素で、回数が少ないと呼び出しを受けます。

ならば積極的に手を挙げて発言すればいいじゃないかというのは、ネーティブに囲まれて話をしたことのない人の意見でしょう。授業で英語の非ネーティブが発言すると、「何と言ったの?」と聞き直されることが少なくありません。これが大きなストレスとなり、積極的に発言するマインド(精神)が保てなくなってしまうのです。

怯まず発言するには、英語の発音を自信の持てるレベルまで引き上げないといけません。そこで、私は毎週土曜日にトレーナーをつけて、翌週の授業で話す内容の発音をチェックしてもらっていました。同じ時間を使うなら、本をすべて読むより発音の向上に費やしたほうが、ずっと成績につながりました。

ただ、効率化にもいつかは限界が訪れます。ビジネススクールの授業はケーススタディが中心で、1つのケースを予習するのに、どうやっても2時間かかりました。一方、1日3つは課題を片付ける必要があり、予習は1日6時間。寝られるのは4~5時間で、さすがにそれ以上は睡眠時間を削ることもできませんでした。

効率化も勉強量も極限までいったら、残る工夫は体のパフォーマンスを上げること。同じ時間に同じ勉強をするなら、体が疲れておらず脳がよく働くときのほうがいいからです。

スタンフォード時代、私はあまりお酒を飲みませんでした。飲むと睡眠効率が悪くなり、疲れが残ってしまうからです。スタンフォードはパーティーが多く、私もよく参加しましたが、人が何を飲んでいようと気にしないカルチャーがあったおかげもあり、ほぼソフトドリンクでした。

ジムでバイクを漕ぐなど体力づくりにも精を出していました。運動中の時間ももったいないので、バイクを漕ぎながら勉強です。オーディオブックなどの音声教材を聞けば、健康管理もインプットもできて一石二鳥でした。

こうした工夫のおかげで、最初は下のほうだった成績も、2年目にはほぼオールAに近い結果となりました。凡人でも、やり方次第で成績は上げられるのです。

■グーグル元CEOに教わったこと

スタンフォードでもっとも印象に残っている授業の1つに、「アントレプレナーシップ&ベンチャーキャピタル」があります。講師を務めるのは、グーグルの元CEOであるエリック・シュミット。実際に起業や経営に携わった実務家が担当する授業が多いのは、まさにスタンフォードらしい。エリックは最初の授業でこう言いました。

「この授業は、起業したい人のためのもの。起業して3年後に100億円で売却を目指すことを目的にするから、合わない人は受けても意味がない」

■成功者たちのコミュニティに身を置く

最初はそのスピード感とスケールに驚きましたが、エリックは「市場のタイミングをとらえれば、まったく不可能なことではない」と言います。実際に成功した人物がそう言っているのを聞くと、いつのまにかその気になってきます。成功者たちのコミュニティに身を置くことで、私も彼らの価値観に自然に染まっていきました。

コミュニティの力は大きいと思います。スタンフォードを卒業してから8年が経ちました。当時の同級生の中には、ひげそりの会社を立ち上げて、シックに約1500億円で売却した起業家もいます。コミュニティの中からレジェンドが生まれるので、苦しいときがあっても、私は「あいつができるなら、同じことを学んだ自分もできるはず」と信じて動くことができる。卒業したいまも、コミュニティが勇気と自信につながっているのです。

大切なのは、何を学んだか以上に、どのようなコミュニティで学んだか。その意味でスタンフォードは最高の環境でした。

現実的に全員がスタンフォードで学べるわけではありません。しかし、いまはオンラインサロンなど、同じ志を持った人とつながれる場は多い。自分なりのコミュニティを見つけて、ぜひ飛び込んでもらいたいです。

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清川 忠康(きよかわ・ただやす)
オーマイグラス代表取締役社長
スタンフォード大学ビジネススクールMBA 取得。著書に『スタンフォードの未来を創造する授業』。Twitterアカウントは「@tadkiyokawa」

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(オーマイグラス代表取締役社長 清川 忠康 構成=村上 敬 撮影=的野弘路)

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