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本当に賢い人は急がば回れで"すべて書き出す"

プレジデントオンライン / 2019年9月8日 9時15分

■急がば回れ「確率」の問題は樹形図で確実に解く

「樹形図」を使った問題を取り上げたい。ご存じのように樹形図とは、物事を順番に書き出していくテクニックだ。

ある刑務所にABC3人の死刑囚がいて、恩赦が実施され、1人だけが釈放されることになった。このとき釈放される確率はみな同じ3分の1だ。そして囚人Aが「BとCのうちどちらが死刑になるか教えてもらえませんか?」と看守に尋ねた。すると看守は「そのくらい正直に教えても問題ないだろう」と考え、「Bは死刑だよ」とAに耳打ちした。

これを聞いてAは喜んだ。Bの死刑が確実になったので、釈放されるのは自分かCのどちらかだからだ。つまり「自分が釈放される確率が3分の1から2分の1にアップした」と思ったのである。では「このAの解釈は正しいか?」というのが今回の問いである。

もしも、あなたが「その通り」と考えたのなら間違いだ。正解は「Aが釈放される確率は3分の1のまま」である。不思議に感じるかもしれないので、どういうことかを見ていこう。これは「ベイズの定理」という確率論を使って証明できるのだが、難解なので樹形図を活用する。大事なポイントは、すべてのパターンを書き出す「場合分け」をきっちり行うことだ。

さて、図のようにABCのうち恩赦を受けるのは1人だけである。そうすると最初に3パターンの場合分けができる。A、B、Cの3人のうちの誰かが恩赦で、恩赦の確率はそれぞれ3分の1だ。

次に、おのおの場合について看守がどういうかを考えていく。実際にAが恩赦される場合、死刑になるのはBとC。そうすると看守は「Bは死刑だよ」か、「Cは死刑だよ」というしかなく、それぞれの確率は2分の1となる。次にBが恩赦される場合、「Bは死刑だよ」と看守がいう確率はゼロ。「Cは死刑だよ」といわなければ、看守はウソをつくことになるからだ。結果、Cが死刑の確率は1になる。Cが恩赦される場合もそれと同じ論理で、看守が「Bは死刑だよ」という確率が1、「Cは死刑だよ」という確率はゼロとなる。

この6パターンの確率をそれぞれ求めると、Aが恩赦される場合にBが死刑の確率は「1/3×1/2=1/6」で、Cが死刑の確率も同様に6分の1。Bが恩赦される場合にBが死刑の確率は「1/3×0=0」で、Cが死刑の確率は「1/3×1=1/3」。同じように計算すると、Cが恩赦される場合、Bが死刑の確率は3分の1、Cが死刑の確率は0となる。

■釈放される確率は最初と変わらない

前述したように、看守は「Bは死刑だよ」といっており、6パターンのうち考慮するのは、「Aが恩赦でBは死刑」(■)、「Bが恩赦でBは死刑」(★)、「Cが恩赦でBは死刑」(☆)の3つのケースだ。そして、知りたい答えはAが恩赦される確率なので、「■÷(■+★+☆)」で求められる。つまり、「1/6÷(1/6+0+1/3)=1/3」となり、囚人Aが釈放される確率は最初と変わらないことが証明された。

「確率」は中学・高校で習うが、苦手な生徒が多い。「確率で困ったら樹形図を書け」と私は教えている。全部のパターンを書き出し、それぞれの確率を求めていけば、時間はかかるが確実に解ける。

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タカタ先生 日本お笑い数学協会会長
現役で高校の数学教師を務めながら、お笑い芸人として多くの人に数学の面白さを伝える数学教師芸人としても活躍。日本お笑い数学協会としての著書『笑う数学』がある。

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(日本お笑い数学協会会長 タカタ先生 構成=田之上 信)

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