田舎のシェア空間でビジネスが生まれる理由
プレジデントオンライン / 2019年9月21日 11時15分
【都心編】異業種の人と交流して共に働くことで、新しいアイデアやビジネスが生まれる
■古い工場を改装した、アットホームな雰囲気
パリに最初のシェアオフィスが現れた2012年から、草分け的存在として人気を誇る「ラップトップ」。創業者は、世界を旅し、諸外国でウェブサイトなどの、フリーランスのUXデザイナー(ユーザーが使いやすいデザインを構築する人)として働いていたポーリーヌ・トマさん。
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1つの空間で異業種の人々が机を並べて仕事をし、キッチンやテラスで一緒に休息をとる――。異なる視点や専門分野の人と触れ合うことで、新しいアイデアが生まれることも。
「1人きりでは体験できない交流の場を、ビジネスのスタートアップに役立ててほしい」とポーリーヌさんは語る。アメリカ・西海岸などのコワーキング(共働)先進エリアで働き、人と人がつながることの重要性を実感したことが起業の原点だ。
パリ19区の庶民的な地区にあり、レンガ造りの元印刷工場を改装した建物は、レトロな雰囲気でスタイリッシュ。メインの部屋に20余りの仕事机が並び、イヤホンで音楽を聴きながら各人が資料やPCに向かう。ここでは電話や声高なおしゃべりは禁止だが、併設のキッチンや中庭に面したテラスならOK。打ち合わせ用の個室や、小さな展示会を開催できるサロンも利用できるので、多彩な起業家やフリーランサーが集う。
アイデアに行き詰まったら、ラップトップの常駐スタッフに自分のプロジェクトの相談にのってもらったり、デザイナーやクリエーターを紹介してもらうことも可能だ。毎月ラップトップが主催する流通やUXデザインなどの勉強会への参加も無料。
こうした人との結び付きやノウハウの提供も含めた環境が、ポーリーヌさんが理想とする“コワーキング”スペースなのだ。
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【田舎編】牧草地が広がるのどかな農村で、田舎暮らしを楽しみながら。ストレスフリーで働く
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■余暇も同時に楽しむ“ウォーケーション”
田舎暮らしを満喫しながら仕事ができたら……。家賃が高くてストレスの多い都市を離れ、地方で働きたいと望む人が増えているのは世界的な傾向といえる。とはいえ移住はハードルが高いので、シェアオフィスならば利用してみたい。そんな願いを持つ人々を引きつけているのが、パリから片道約2時間、ペルシュ地方の広大な農園を改装した「ミュティヌリー・ヴィラージュ」(以降ヴィラージュ)だ。
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パリのシェアオフィスを運営していたオーナーきょうだいが、実家の農園で滞在型のヴィラージュを始めたのは4年前。単なるオフィス空間の提供なら、街に急増するネットカフェでも事足りる。ならば利用者にとって、また主宰する側にとっても心地よく有意義な時間が過ごせる環境に特化したいと、18年にパリの事業をたたみ、この地に根を下ろした。
そこは牧草地が広がり、りんご栽培や養蜂も行われる、典型的なフランスの田舎だ。食堂やリビングを備える大農家の母屋が、利用者を温かく迎えてくれる。オフィスの設備が整うメインのシェアオフィスや、木工製品などのものづくりができるアトリエは、納屋を改装した別棟にある。Wi-Fi環境のおかげで、敷地内の好きな場所で仕事ができる。
仕事に疲れたら、周囲にはひと息入れる楽しみがある。近隣で乗馬をしてもいいし、菜園ですくすく育つ有機野菜や、新鮮な卵を産む放し飼いの鶏を見ながら散歩するのもいい。こうした田園のバカンスを兼ねての利用も多く、work(仕事)とvacation(休暇)を掛け合わせた「ウォーケーション」という新語も登場した。
ヴィラージュのエコな環境づくりは常駐するスタッフが担い、利用者の滞在をきめ細かくサポートしてくれる。スタッフと利用者全員で大テーブルを囲み、有機野菜を使った料理とワインをたしなみながら、時には夜中まで語らうこともある。個人主義を重んじるフランス人だが、彼らは深く語り合うのが好きなのだ。
■意見交換を楽しみに、リピートする利用者も多い
「世代の異なる多分野の人との意見交換を楽しみに、リピートする利用者も多いですよ」
こう語るのは、責任者のクレモンス・ベルリンゲムさん。
フリーランサーや起業した個人が集うこともあれば、企業の一部署が借り切り、親睦や企画の立案のために訪れることも。他者との直接的な関わりが生む思考やエネルギーは、現代のコミュニケーションツールだけでは得られない。そんな原点回帰の場としても人気を博している。
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(プレジデント ウーマン編集部 監修=寒河江千代 撮影=村松史郎)
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